障害者手帳の種類や等級ごとの違いとは?取得の手順や受けられる支援について現役看護師が解説!

障害者手帳は障害の程度に応じいくつかの等級に区分されます。障害の種類や程度によって認定方法や等級が異なるため難しい印象を持つかもしれません。

今回は障害者手帳の種類や等級の違い、受けられるサービスについて現役看護師がわかりやすく解説します。

【目次】

障害者手帳とは?

障害者手帳は「身体障害者手帳」「療育(りょういく)手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つを指しています。障害者手帳を取得できる病気や基準はそれぞれ違いますが、どの障害者手帳を持っていても、障害総合支援法と県や市区町村独自の法令をもとにさまざまなサービスが受けられます。

障害者手帳の種類と特徴

3つの障害者手帳それぞれの法的根拠や障害分類、所持者数は以下です。身体障害者手帳所持者数が全体の6割以上を占めています。

障害者手帳の交付対象者と障害の種類

各身体障害者手帳は交付の対象となる人や障害の種類が決められています。順に紹介します。

身体障害者手帳

体の機能に障害があると認められた人に交付されます。

いずれの病気も身体障害者福祉法に定められた一定の基準を満たし、回復する可能性が極めて低い人が対象で原則更新はありません。対象となる障害の種類は以下の通りです。

  • 視覚障害
  • 聴覚又は平衡機能の障害
  • 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  • 肢体不自由・心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
  • ぼうこう又は直腸の機能の障害
  • 小腸の機能の障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
  • 肝臓の機能の障害

なお乳幼児の障害認定は成長過程で障害の程度が変わる可能性があるため、障害の程度が判断できるおおむね満3歳以降に行うと決められています。

療育手帳

児童相談所や知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に交付されます。再判定の頻度は年齢や障害の程度により異なります。

年齢 再判定の頻度
18歳未満 概ね2年ごと(児童相談所の判断で短縮・延長する)
40歳未満 10年ごと、ただし重度(A)の①判定を受けた場合は再判定はない
40歳以上 再判定なし

療育手帳の名称は地域によってさまざまで、東京都は「愛の手帳」埼玉県は「みどりの手帳」などと呼んでいます。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害やてんかん・発達障害などがあり、日常生活や学習・就労などの社会生活に制約がある人に交付されます。対象となる代表的な疾患は以下の通りです。

  • 統合失調症
  • うつ病・躁うつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物依存症
  • 高次機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害等)

更新の頻度はほかの障害者手帳よりも短く「2年に1回」です。

障害者手帳の等級を知ろう

障害の程度によって、認められる等級が異なっています。種類ごとに解説します。

身体障害者手帳

身体障害者の等級は身体障害者福祉法の「身体障害者障害程度等級表」に定められています。

身体障害者には1級〜7級の等級がありますが、等級は障害ごとに異なっています。

たとえば肢体不自由の等級は「1級〜7級」視覚機能の障害の等級は「2・3・4・6級」、音声機能・言語機能又はそしゃく機能の障害の等級は「3・4級」です。

また「7級」は肢体不自由のみの等級です。一般的に7級相当の障害だけでは身体障害者手帳は交付されません。特別に以下の場合のみ交付対象と決められています。

  • 7級の障害が2つ以上重複する
  • 7級の障害が6級以上の障害と重複する

ここからは内部障害のうち心臓機能障害についてくわしく解説します。

内部障害

内部障害には心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸の機能障害が該当します。1・3・4級に分類され、等級ごとに障害の程度が決められています。

たとえば心臓障害の場合は、以下の表のように分類されます。

等級 定義
1級 心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
3級 心臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 心臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

引用:心臓機能障害 障害程度等級表 認定基準 兵庫県

療育手帳

障害の程度は等級ではなく「重度(A)」と「それ以外(B)」に分けられます。判定基準は以下です。

  • 重度(A)の基準
    ①知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者
    ・食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする
    ・異食、興奮などの問題行動を有する
    ②知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
  • それ以外(B)の基準
    重度(A)のもの以外

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は1~3級の等級があります。また発達障害者も精神障害者保健福祉手帳を取得します。それぞれの等級の違いは以下の通りです。

等級 定義
1級 精神障害(発達障害)であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 精神障害(発達障害)であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 精神障害(発達障害)であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

引用:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス 厚生労働省

【手帳別】受けられるサービスを紹介

窓口

障害者手帳取得のメリットの1つでもある公的なサービス。受けられるサービスは手帳の種類によって異なります。それぞれに受けられるサービスをまとめました。

身体障害者手帳

身体障害者手帳を所持していると、以下のサービスが受けられます。今回は東京都杉並区在住の方が受けられるサービスの一部を例にを紹介します。ご自身のお住まいの地域で受けられるサービスの詳細は各自治体にご確認ください。

種類 詳細
手当・年金
  • 身体障害者福祉手当(区の制度)
  • 障害手当(児童育成手当・区の制度)
  • 特別児童扶養手当(国の制度)
  • 重度心身障害者手当(都の制度)
  • 障害厚生年金・障害手当金(厚生年金)
  • 障害基礎年金(国民年金)
公共料金の減免・料金の割引等
  • 放送受信料の減免
  • 水道料金・下水道料金の減免制度
  • 郵便料金等の障害者向けサービス
  • 携帯電話料金の割引
  • 都立公園等の入場料免除
交通機関の割引
  • JR等旅客運賃の割引
  • 民営バス料金の割引
  • 都営交通の無料乗車券
  • タクシー運賃の割引
  • 有料道路通行料金の割引
税金の控除等
  • 個人住民税の非課税
  • 個人住民税の障害者控除
  • 所得税の障害者控除
  • 軽自動車税車種別割及び環境性能割・自動車税種別割及び環境性能割の減免

引用:身体障害者手帳で受けられる主なサービス 杉並区

療育手帳

療育手帳制度はその他の障害者手帳とは異なり「療育手帳制度について」というガイドラインに基づいた制度です。法律に基づいた制度でないため、受けられるサービスは全国一律ではなく都道府県や政令指定都市ごとに異なっています。

受けられるサービスの詳細については、お住まいの地域の福祉課窓口に問い合わせる必要があります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者福祉手帳を所持していると、以下のサービスが受けられます。

【全国で行われているサービス】

公共料金等の割引
  • NHK受信料の減免
税金の控除・減免
  • 所得税・住民税の控除
  • 相続税の控除
  • (1級のみ)自動車税・自動車取得税の減免
そのほか
  • 生活福祉資金の貸付
  • 手帳所持者を事業者が雇用した際の障害者雇用率へのカウント
  • 障害者職場適応訓練の実施

【地域・事業者によって行われているサービス】

公共料金等の割引
  • 鉄道、バス、タクシー等の運賃割引
  • 携帯電話料金の割引
  • 上下水道料金の割引
  • 心身障害者医療費助成
  • 公共施設の入場料の割引
税金の控除・減免
  • 福祉手帳
  • 通所交通費の助成
  • 軽自動車税の減免
そのほか
  • 公営住宅の優先入居

障害者手帳を取得するためには

最後に、障害者手帳を取得する予定の人や取得するかどうか迷っている人へ、障害者手帳のメリットデメリットと、取得の手順を解説します。

障害者手帳取得のメリット

障害者手帳取得のメリットは大きくわけて2つあります。

公的な支援が受けられる公的なサービスや支援・援助が受けられ、障害を抱えながらも生活しやすい環境を整えやすくなります。具体的には補助具購入費の助成やヘルパーなどの派遣、税金の減免や控除、医療費の助成が受けられ、経済的なメリットも大きいです。

障害者雇用で働ける

障害を抱えながらも自分らしく働けるように障害者枠での雇用も推進されています。

障害者雇用では、会社側から障害に対する適切な配慮を受けながら働けます。それにより働くことによる心身への負担を軽減できます。

また就労移行支援や就労継続支援のように、障害者を対象とした就労に関する支援サービスも利用できます。

障害者雇用については、これらの記事「障害者雇用はデメリットしかないって本当?企業で働くメリットとデメリットを解説!」「【2023年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」でそれぞれ詳しく解説しています。

障害者手帳取得のデメリット

障害者手帳取得のデメリットはありません。

手付きが煩雑であったり、書類取得にかかる費用などを負担に感じるかもしれません。しかし、受けられるサービスや支援も多くデメリットを上回っています。

また、障害者手帳を取得したからといって「障害者雇用」で働かなければならないわけではありません。障害者手帳を使うかどうかは本人の意思に委ねられています。障害者手帳を取得できる程度の障害であれば取得をおすすめします。

障害者手帳の取得を迷っている人は、ぜひこちらのコラム「障害者手帳は持つべき…?心理的な抵抗があるときに知っておきたい取得のメリット」を読んでみてください。

障害者手帳を取得する手順

【障害者手帳取得の手順】

  • 主治医による診断書の作成
  • 在住地域の役所に書類の提出
  • 審査の実施
  • 手帳の交付

障害者手帳申請の際には、主治医の診断書や意見書・申請書などの書類が必要です。申請する障害者手帳の種類や病気によって必要な申請書類や申請窓口は異なるため、お住まいの地域の福祉課窓口に確認してください。

それらの書類をもとに審査が行われ、障害者手帳の取得対象と認められた場合、手帳が交付されます。

また精神障害者保険福祉手帳の取得申請は、初診日から6ヶ月以上立っていることが条件になっています。そのため診断されてすぐに手帳を取得することはできないため、注意が必要です。

病状により本人の申請が困難な場合は、家族や医療者が代行することも可能です。

もしも、障害者手帳が交付されるか判らない場合には、主治医やお住まいの地域の福祉課窓口に確認しましょう。

障害者手帳の等級や特徴を理解し障害者手帳を活用しよう

障害者手帳には「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つの種類があります。それぞれに対象となる病気や病状が異なりますが、自立や社会参加のサポートを目的としたさまざまな支援策が受けられます。

障害者手帳を持っているからといって、不当な差別を受けることはありません。メリットの多い障害者手帳を取得し、サービスを活用しながら病気と共に生きていきましょう。

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大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし医療ライター・監修者として活躍中。https://odaakari.com/