治療を受けながら仕事を続ける場合、定期的な通院や突然の体調の変化に対応できる「融通が利く仕事」が理想です。また、病気になった後、支援と配慮を受けながら仕事復帰できる制度も重要です。そういった環境を選べば、病気になっても働くことを諦める必要はありません。
融通が利く職場で働くためのポイントについて解説します。
【目次】
融通が利く仕事とは
「融通が利く仕事」とはどのような仕事なのでしょうか。具体的に解説します。
融通が利く働き方の条件
「融通が利く働き方」ができる仕事を探すとき、どのような条件に注目すれば良いのでしょうか。
【融通が利く仕事の条件】
- 必要に応じて働く時間や場所を調整できる
- 前日でも有給休暇が取れる
- 業務を担当する人の代替が利く仕事
働く時間や場所を自由に選べる仕事であれば、自分の裁量で通院日を決められます。また前日でも有給休暇が取れる仕事や、自分の業務を別の人に依頼できるような代替が効く仕事であれば、突然体調を崩した場合でも、体調を優先して行動できます。
仕事を休むときのポイントや注意点について、こちらの記事「休みが取りやすい仕事の4つの条件!働くならパート?正社員?」で解説していますので、参考にしてみてください。
融通が利く働き方
融通が利く仕事を4つ、紹介します。
パートで働く
1つ目はパート勤務です。
【パート勤務のメリット】
- 勤務時間が短く、始業と終業の時間が明確
- シフト制
- 扶養の範囲で働く場合、年収が調整しやすい
パート勤務は、シフト制のため勤務時間を自分で調整できるうえに、残業を求められることも基本的にありません。また業務内容も代替が利くものが大半です。
しかし、パート勤務と言っても、病欠が多いと「解雇」という事態を招きかねません。病気はあらかじめ伝えておく、休みは可能な限り早めに申し出る、普段の仕事は率先してきっちりやるなど、できる範囲で信頼を得られるよう努力しましょう。
【パート勤務がしやすい職種】
- 事務職
- コールセンター
- 接客業
- ライン作業・軽作業
フリーランスで働く
2つ目はフリーランスです。
【フリーランスのメリット】
- 働く時間や場所を自分で選べる
- 自分の得意・強みを生かして仕事を選べる
- 能力次第で、会社員より多額の収入を得ることも可能
フリーランスが融通が利く働き方である一番の理由は、自分で働く時間や場所を選べる点です。
そのため、通院するためにわざわざ休みをもらったり、体調が悪いときに我慢して仕事をしたりする必要がありません。
また自分の興味関心に合わせて仕事を選んだり、実績が収入に直結する点もフリーランスのメリットです。
【フリーランスの職種例】
- プログラマー・各種エンジニア
- Webデザイナー・イラストレーター
- Webライター
- 動画編集者
- セミナー講師・インストラクター
実際に先天性心疾患を抱えながらフリーランスとして活躍されている方に、こちらの記事「フリーランスもひとつの働き方~先天性心疾患の私が見つけたライターという職~」で詳しくお話しいただいています。
障害者雇用で働く
3つ目は障害者雇用です。障害者雇用での就労は、一般企業と特例子会社の2種類があり、どちらも障害者手帳を所有している人のみが選択できる働き方です。
【障害者雇用のメリット】
- ハローワークや支援機関から必要に応じた支援が受けられる
- 会社から「合理的配慮」を受けながら働ける
- 税制上の優遇措置(障害者控除等)を年末調整の中で申請できる
障害者雇用で就職した場合、企業から障害に対する配慮を受けられます。そのため通院のための有給休暇を自由に取得できたり、体に負担がかかる業務を避けたりしながら働けます。
また就職するための支援を受けられる機関が多数あるため、一般雇用と比較して就職、転職活動の効率も良くなります。
障害者雇用の現状については、こちらの記事「【2022年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。
就労継続支援で働く
最後の1つは就労継続支援での就労です。
就労継続支援とは、障害者に対して、就労と生産活動の機会の提供、就労に必要な知識や能力の向上のための訓練等の支援を行う就労系障害福祉サービスです。
就労継続支援には、A型とB型の2種類があります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象 |
|
・年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難 ・雇用契約に基づき、継続的に就労できない |
雇用契約 | あり | なし |
賃金・工賃 | 賃金/月額平均79,625円 | 工賃/月額平均15,776円 |
【就労継続支援のメリット】
- 障害に対する手厚い配慮を受けながら就労できる
- 自由に通院できる
- 一般就労(企業での就労)へのキャリアアップも可能
就労継続支援は、A型、B型ともに、障害者雇用以上に障害に対する配慮を受けながら就労できます。
また利用者の大半が定期通院が必要なため、通院頻度が多い方でも安心して利用できます。
『治療と仕事の両立支援』で仕事を続ける
病気や障害を持っていると「仕事を続けていけるのか」「会社や同僚に迷惑をかけてしまうのではないか」「今までのような働き方でいいのか?」などの悩みや不安を持つことは当然です。しかし「病気と付き合う人生」は始まったばかりです。活用できる制度を活用し、仕事を続けることを考えましょう。
治療と仕事の両立支援とは、治療が必要な病気を抱える労働者に対して、会社が適切な就業上の措置や、治療に対する配慮等の支援を行うことで、治療と仕事の両立を実現するための取り組みです。
また治療と仕事の両立については、こちらの記事「【心臓病】向いてる仕事や治療と両立させるポイントを解説」でも解説しています。
『治療と仕事の両立支援』には本人の申し出が必要
『治療と仕事の両立支援』は、労働者本人が、支援に必要な情報を収集したうえで会社に申し出ることからスタートします。主治医の就業に関する意見書をもとに、労働者本人、会社関係者、地域の支援機関等が連携し、方針を決めていきます。
両立支援の相談ができる機関は、都道府県の産業保健総合支援センターや、お住まいの地域のハローワーク、労災病院等になります。まずはこれらの機関に相談してみましょう。
『治療と仕事の両立支援』を受けるメリット
仕事を辞めることなく、治療と仕事の両立に必要な支援が受けられます。
【両立支援の具体例】
- 入院や通院、療養のための時間の確保のための時間的配慮
- 症状や治療方法など個別事例に応じた配慮
- 休暇制度や勤務制度(時差出勤、短時間勤務、在宅勤務等)、両立に関する制度の活用
この支援制度によって、仕事上の理由で適切な治療を受けることができなくなり治療を中断してしまい、病気が悪化したり、治療と仕事の両立が困難で離職したりすることを防げます。
また、会社・主治医(医療関係者)・地域の支援機関等の連携による支援を受けることで、様々な情報を得られます。そしてそれは「一人で抱え込まなくていい」という安心感につながります。体調管理や生活習慣、病気の改善に前向きな意識で取り組めるという、効果を生み出すことにもなるでしょう。
まとめ
「日本の労働人口の約3人に1人が、何らかの疾患を抱えながら働いている」と言われています。病気や障害を持っても働く場がある、その人が望む働き方や個人の事情に合わせた働き方ができる、仕事を辞めなくてもいい、そういったことが個人の生きる力になり、そして社会の力にもなります。
「疾病や障害の有無や、個別の制約に関わらず、誰もがその能力と適性に応じて働く場があり、自立した生活を送ることができる」そのような社会の実現が待たれます。
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