「私でも働ける職場ってあるの」「これからのことが不安」
障害を持つことで、上記のように生活や働くことに不安を感じている人は多いのではないでしょうか。
そんな方に利用してほしいのが、障害者就業・生活支援センターです。この記事は、看護師の私が障害を持つ方に向けて「障害者就業・生活支援センター」とはどういったサービスなのかを解説していきます。
就職や、生活について不安がある方はこの記事を参考にしてください。
【目次】
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)とは
障害者就業・生活支援センターは、障害者雇用促進法改正により創設された仕組みで、障害者の「働くこと」「生活すること」を一体的に支えるサービスで、「なかぽつ」という通称で呼ばれることもあります。
「障害がありひとりで就活するのに不安がある」「障害があり生活に困難を感じている」
上記のように、就業や、生活に不安がある方を対象に、障害者福祉について熟知している専門職が「伴走者」として寄り添いサポートしてくれます。
参考:厚生労働省/全国地域生活支援機構
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)の対象者
障害者就業・生活支援センターの対象者は下記の通りです。
- 障害者
- 障害者を雇用する企業
障害者を雇用する側と、障害者として雇用される側、両方を支援します。
就業を目的としており、雇用される障害者は原則として15歳〜65歳を対象としていますが、それ以外の年齢の場合でもまずは相談してみましょう。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)の役割
障害者に対する障害者就業・生活支援センターの役割は大きく分けて2つです。
- 就業の支援
- 生活の支援
引用:厚生労働省
「生活」「はたらく」この2つをサポートして、障害者の自立した生活を促します。
就業の支援
「就業の支援」と言っても、ハローワークのように求人を紹介するわけではありません。
障害者就業・生活支援センターが行うのは、障害者が自立して働いて行くための支援です。
具体的には以下の通りです。
- 就業についての相談やアドバイスを行う
- ハローワークで仕事を探すサポートを行う
- 「障害者職業センター」「就労移行支援事業所」などの就業に関する福祉サービスの紹介
- 面接同行や書類作成などのアドバイス
- 長期的に働けるように就業後のフォロー
地域障害者職業センターは、就業のためのコミュニケーション能力、労働習慣、作業スキルを獲得する場です。
そして就労移行支援は、障害がある方が、「一般企業」への就業(一般就労)を目指してコミュニケーションスキル、マナー習慣、職業スキルの獲得、実習、職場探しのサポートを行うサービスです。
障害者就業・生活支援センターのサポートで就業を目指す場合は、職場の見学、実習、面接同行、書類の書き方を指導、就業後の悩みの相談などの支援を受けることができます。
障害を持った直後は「これから働けるか自信がない」「障害者雇用ってよく分からない」という不安があると思います。そういった人に寄り添いながらサポートするのが障害者就業・生活支援センターです。
生活の支援
地域には、障害者が利用できる福祉サービスが多数あります。しかし「どこに行けば良いか分からない」「どんなサービスがあるのか分からない」というのが利用者の本音でしょう。
障害者就業・生活支援センターは、そんな方に対して福祉サービスや医療機関などを仲介する役割があります。
具体的には以下の通りです。
- 適切な医療機関の紹介
- 保健所、福祉事務所など福祉事業者の紹介
- 生活設計、生活習慣に対するアドバイス
福祉事務所は、障害者や高齢者など、生活困窮者に対して、生活保護の事務に当たったり、サービスの支給の決定を行う機関です。
継続して働くには、生活習慣が大切です。就業後も家庭訪問や、生活状況の聞き取りを行いながら、健康管理や、生活設計に関してのアドバイスを行ってくれます。
生活が困窮しているようなら、生活保護や、障害者関連の施設の紹介など、生活の基盤を整えるように調整するのも障害者就業・生活支援センターの役割となっています。
障害者就業・生活支援センターでの相談例
具体的に障害者就業・生活支援センターには、どんな相談があるのでしょうか。相談例をみていきましょう。
- 障害者雇用で、正社員の仕事を探したい
- 就職のために就労準備訓練を受けたい
- 働くために生活リズムを整えたい
- 通院しやすい病院を教えてほしい
- 職場の人に自分の障害を理解するのを手伝ってほしい
「不安や悩みを話すだけでもスッキリした」という声もあります。障害を受容するには誰かに話をして状況を整理するというのも大切です。
生活については「こんなこと話していいのか」と思うかもしれませんが、多くの利用者が同じ思いを抱えています。まずは相談だけでもしてみましょう。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)利用のながれ
ではどのように利用すれば良いのでしょうか。利用の流れは以下の通りです。
なお、障害者就業・生活支援センターの利用は全て無料となっています。
1.電話、メールで問い合わせ
地域の障害者就業・生活支援生活センターに利用予約します。
2.利用前の事前説明
担当者と面談を行います。生活、就職についての状況を話しましょう。
【ヒアリング内容】
- 疾患の発症の経緯
- どこの病院にかかっているか
- 今の障害や生活の状況
- 前職は何をしていたか
- これからどんな仕事をしたいか
3.利用登録
継続利用する場合は登録します。
センターによっては登録時に「お薬手帳」「障害者手帳」「主治医の意見書」などの提示を求められます。
4.支援開始
ニーズによってプログラムが作成されます。すぐに働ける場合は職場見学や、インターンのサポートを行います。
5.就職活動
書類の準備、面接のアドバイス、面接の同行をサポートします。
6.就職
雇用条件の調整をして相談者が働きやすいようにフォローします。
7.就業後のフォロー
就業後も働き続けられるように、家庭訪問や、生活の相談、仕事の進捗状況などを把握してアドバイスを行います。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)に関するよくある質問
では、障害者就業・生活支援センターについてよくある質問を見ていきましょう。
- 障害者手帳は必要?
- 利用料金はかかる?
- 利用するメリットは?
- 利用するデメリットはありますか?
- 障害者就業・生活支援センターの場所は?
- ハローワークとの違いは?
- 転職エージェントの違いは?
- 障害者職業訓練センターとの違いは?
障害者手帳は必要?
基本的に、障害者就業・生活支援センターを利用するのに、障害者手帳は必要ありません。
しかし障害者雇用枠を使って就業する場合は、障害者手帳が必要です。
そのため、センターによっては登録時に「障害者手帳」「お薬手帳」「主治医の意見書」などの提示を求められることがあります。
利用料金はかかる?
全ての支援を無料で受けられます。
利用するメリットは?
- 地域の状況に詳しい
- 生活・就業の両方のサポートを得られる
障害者就業・生活支援センターは全国338箇所あります。
障害者雇用に関しては、転職エージェントや、ハローワークより地域の実情に詳しく、より利用者に適した支援を期待できます。
また、上記のふたつのサービスはあくまでも「就活の場」です。障害を持った場合、生活と就業はどちらも解決したい悩みでしょう。
障害者就業・生活支援センターは両方を一体的にサポートしてくれるので、より障害者のニーズに合っているといえます。
利用するデメリットはありますか?
利用することにデメリットはありません。しかし障害者の雇用に関するサービスは利用者が多いため、地域によって利用予約してから利用まで数ヶ月待つケースもあります。
障害者就業・生活支援センターの場所は?
令和4年4月の時点で全国に338センターが存在します。
【例】
- 障害者就業・生活支援センター アイ-キャリア(東京都世田谷区)
- 大阪市障害者就業・生活支援センター (大阪府大阪市)
- 障害者就業・生活支援センター 野の花 (福岡県福岡市)
詳しい場所については以下を参考にしてください。
厚生労働省:障害者就業・生活支援センター一覧
ハローワークとの違いは?
- ハローワーク:仕事を紹介しくれる
- 障害者就業・生活支援センター:一緒に仕事を探すサポートを行ってくれる
障害者就業・生活支援センターは、就業を支えるサービスなので、ハローワークのように「求人を保有して、利用者に紹介する」ということはしません。
たとえば、「障害がありひとりで仕事を探せない」という人と、一緒にハローワークに行って、仕事を探すサポートをする。というのが障害者就業・生活支援センターの役割になります。
転職エージェントの違いは?
- 転職エージェント:仕事を紹介してくれる
- 障害者就業・生活支援センター:生活の面までサポートをしてもらえる
転職エージェントは求人を保有して仕事を紹介するサービスです。
障害雇用専門の転職エージェントもあり、就業に対して障害者へさまざまなサポートを行いますが、本質は「就活の場」です。生活までサポートしてくれることはありません。
障害者職業訓練センターとの違いは?
- 障害者職業訓練センター:就業に特化してサポート。就業のためのコミュニーケーション能力、労働習慣、作業スキルを獲得する場
- 障害者就業・生活支援センター:就業と生活を一体的にサポート。職業訓練や、職場実習を行う機関を紹介、就業のサポートを行う場
障害者職業訓練センターは、就業に特化して、働くための習慣や、スキルを獲得する場です。事業所へジョブコーチを派遣して障害の特性に合わせて、障害者と事業主に直接的な援助を行うこともあります。
まとめ
今回は「障害者就業・生活支援センター」について下記のことを解説しました。
- 障害者就業・生活支援センター
- 障害者就業・生活支援センターの役割
- 障害者就業・生活支援センターで受けられるサービス
- 障害者就業・生活支援センター利用のながれ
障害者就業・生活支援センターは障害者の生活、就業を支える拠点です。
利用するのに障害の重症度は関係ありません。利用は全て無料なのでまずは気軽に相談してみましょう。
障害者が正社員雇用のために行うべきことは「これをやっとけばよかった…障害者が“正社員雇用”を掴むために就活で意識したい5つのこと」でまとめています。
循環器疾患を持つ当事者が執筆したコラム記事なのでぜひご覧ください。
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