「就労移行支援」と聞いてもイメージが湧かない…。障害者となり、仕事をすることに不安を持っている人も少なくないでしょう。
この記事では、就労移行支援とはどういう制度なのか、利用できる対象者や利用するメリット・デメリットをお伝えします。間違えやすい就労継続支援との違いも解説していきます。

監修:ami
精神保健福祉士/社会福祉士/介護支援専門員/男子高校生と、肺動脈閉鎖症/右心低形成の女子小学生の母。地域密着型の精神科診療所に17年間ソーシャルワーカーとして勤務。相談支援、デイケア運営、訪問等幅広い支援をチーム医療の一員として行う。病児出産後退職。現在は患者家族会活動と娘の推し活を一緒になって楽しむ毎日。Twitter:@ami7color
【目次】
就労移行支援とは?
就労移行支援は障害を持った人の社会進出をサポートする国の支援制度、障害者総合支援法に定められた「障害福祉サービス」のひとつです。
働きたい人へ必要な知識やスキルを習得したり、就労に向けたトレーニングを行ったりしています。具体的には以下の支援を行います。
就労移行支援では、利用者の状況に合わせて、段階的に様々な支援を受けられます。
上記の図にあるように、まずは一般就労に必要な実践的なスキルや、ビジネスマナーなどをカリキュラムに合わせて学習します。就職する準備が整ってきたら、企業での実習を行い、企業で働くイメージをつかみます。そして、一般就労が可能と判断されたら転職活動を行い、就職という流れです。
また就労移行支援では、入社後半年間は定着支援を利用できます。短期間での離職を防ぐためにも、職場や仕事で困ったことや悩み事ができた場合は支援員に相談しましょう。
※またはとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。
どんな人が利用できるの?
就労移行支援を利用できる対象者は、以下の通りです。
- 18歳以上65歳未満の方
- 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
- 一般企業へ就職したいと考えている人
障害者手帳をお持ちでない場合でも、医師の診断書または意見書があれば利用できます。就労経験のない人だけでなく、「体調を崩していたが、フルタイムで仕事に復帰するには自信がない」という人なども利用できるので安心です。
そのほかにも以下のような人が利用しています。
- 人とコミュニケーションをとるのが苦手
- 体調管理と仕事を両立したい
- ミスに対して不安が強く、新しいことに挑戦するのが怖い
- 誰かの役に立ちたい
- 働きたいが、何から始めたらいいかわからない
利用できる期間は?
利用できる期間は原則2年間です。この期間のうちに就職するためのスキルを身につけるだけでなく、自分に合った職種や職場を見つけます。
2年を超えて利用するには各市区町村に申請し、必要性が認められた場合に限り1年間の延長が可能です。
利用料金
就労移行支援事業所は、ご本人または配偶者の前年度の所得に応じて自己負担が発生する場合があります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※注1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(※注2)未満) ※ 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(※注3) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※注1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以上の世帯が対象
※注2:収入が概ね600万円以下の世帯が対象
※注3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」が適用
就労移行支援事業所のスタッフ
就労移行支援事業所では、以下の人たちがかかわっています。一般企業への就職を希望する場合には、職業訓練や就職支援などのサポートも行っているので、相談してみてください。
配置スタッフ | 担当業務 |
管理者 | スタッフ管理・事業運営 |
サービス管理責任者 | 個別支援計画作成、他スタッフの指導 |
就労支援員 | 就活の支援、職場定着支援 |
生活支援員 | 日常生活の支援 |
職業支援員 | 就労機会提供、自習先開拓 |
※ 就労移行支援事業所の利用期間は、賃金(工賃)は支給されない
就労移行支援を利用するにはどうすればいいの?
いざ、就労移行支援を利用するには実際にどうすればいいのでしょうか?就労移行支援の利用手順について解説します。
- 1. 通いたい就労移行支援事業所を探す
- 2. 就労移行支援事業所の見学へ行く
- 3. 障害福祉サービス受給者証を取得する
- 4. 利用契約を結び、利用を開始する
事業所を探すときは、インターネットで「住んでる地域 就労移行支援」と検索したり、WAMNETを利用したりしましょう。
また就労移行支援を利用するためには、障害福祉サービス受給者証が必要です。受給者証を発行するには、お住まいの市区町村の障害福祉課などで就労移行支援事業所受給者証の申込手続きを行ってください。
【受給者証取得の注意点】
- 手続きの方法は、市区町村ごとに異なる
- 障害があることを証明する書類(障害者手帳、医師の診断書や意見書など)が必要
- 障害者手帳を持っていない人は、主治医の意見書を提出すれば利用可能
就労移行支援のメリット・デメリット
就労移行支援を活用するにはメリットもあれば、デメリットもあります。
メリット
主なメリットは以下の4つです。
- 自分の強み・弱みを知る
- 生活リズムが身につく
- 実績づくりができる
- 就職活動のサポートが受けられる
自分の強み・弱みを知る
就労移行支援ではさまざまな訓練を行い、自分の強み・弱みを把握できるので、就職先を選ぶ基準にも役立ちます。自分のことを理解し、説明できることは「どんな仕事がスムーズにできるか」と企業側もイメージがつきやすくなるので、採用されるポイントにもなるでしょう。
生活リズムが身につく
昼夜逆転や体調・生活リズムが整っていない人でも、事業所に通う習慣をつけることで、だんだん生活リズムが整います。
まずは、週2日くらいのペースで通い始めて、最終的に週5日で通うことができ、生活リズムが整うと体調が安定するので生活・仕事の質が上がるでしょう。
実績づくりができる
就職するにあたって、企業側はあなたがどんなことができるのか、どんな実績があるのかが知りたいのです。就労移行支援で行ったトレーニングや通所期間・頻度は立派な実績になるので自信にも繋がります。
就職活動のサポートが受けられる
障害の特性や病気を持っていると、配慮してくれる企業を1人で探すのは難しいでしょう。その点、就労移行支援のスタッフは障害者に配慮のある企業の情報もたくさんもっています。
その中から利用者に合った企業を選んだり、面接や書類の添削を行ってくれたりしてくれるので、1人で就職活動を行うよりもスムーズによい会社と出会えるかもしれません。
デメリット
就労移行支援を利用する上でデメリットとなる可能性があるのは「時間とお金」の問題です。「すぐに働かなければ!」「今すぐ収入を得たい!」と思っている人にはあまりおすすめできません。中長期的に自分のキャリアに向き合うトレーニングを行っていくので、じっくりと考えて利用するようにしましょう。
とはいえ、利用期間は原則2年間ですが、自分に合った期間での利用も可能です。利用者によって異なるので、早く就職したい場合は事業所のスタッフにその旨を伝え、相談して決めるとよいかもしれません。
就労継続支援との違いは?
就労継続支援とは一般の事業所に雇用されることが難しい障害者に向けた、職業訓練や生産活動を支援するサービスです。就労移行支援は訓練を受けながら一般企業への就職を目指します。
就労継続支援は事業所の中で働くという違いがあります。自分に合った方法を選ぶことはもちろんですが、迷ってしまう場合は医師やスタッフに相談してみてはいかがでしょうか。
就労継続支援については、こちらの記事「就労継続支援A型を利用できるのはどんな人?対象者や給料、メリットなどをわかりやすく解説!」
まとめ
今回は「就労移行支援」について下記のことを解説しました。
- 就労移行支援とは?
- 就労移行支援を利用するにはどうすればいいの?
- 就労移行支援のメリット・デメリット
- 就労継続支援との違いは?
就労移行支援は障害を持った人の社会進出をサポートする国の支援制度です。就職するにあたって不安に思うこともあるでしょう。就労移行支援を使って不安を解消し、長く働ける職場を見つけましょう。
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