公開日 2022年8月26日 最終更新日 2023年9月28日
ストレスがかかったときに胸のあたりに違和感を持ったことはありませんか?
とくに心臓病の既往歴があると、症状の悪化や再発が不安になってしまうかもしれません。
この記事では、心臓病とストレスの関係、ストレスの上手なコントロールの仕方について御説明していきます。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
心臓病とストレスの関係は?
内臓の機能や体温などは、交感神経と副交感神経の2つの自律神経が管理しています。自律神経が優位になると血圧の上昇、血管の収縮、腸の動きが弱くなるなどの症状が現れます。一方、副交感神経が優位になると血圧の低下、腸の動きが活発になる、心拍数がゆっくりになるなどの状態になります。
ストレスを感じると交感神経が優位になるため、血圧上昇、血管収縮、心拍数増加の状態が続きます。心拍数が増加するということは、心臓のポンプ機能が活発になった状態です。しかし血管は収縮しているので血液を送り出す場所がない状態となり、心臓に大きな負担がかかります。
このように心臓病とストレスは大きく関係しています。
ストレスが影響する心臓病の種類
心臓病には様々な種類がありますので、今回はストレスが影響する心疾患を2つ紹介します。
狭心症
心臓は心筋という筋肉でできており、心筋を動かすことで全身に血液を送り込むポンプ機能を担っています。心筋に酸素や栄養を送っている血管を冠動脈と呼び、何らかの原因で血流が滞り酸素や栄養が不足すると狭心症を発症する場合があります。
胸の痛みや圧迫感が狭心症の前兆です。安静にしていると症状が落ち着くこともありますが、自己判断は控え受診しましょう。
先ほどストレスを感じると、自律神経が優位になり血管が収縮し血圧が上がるという話をしました。血管に過度な収縮が起きると動脈硬化を起こし、血管の壁が硬く厚くなっていくため血液の通り道が狭くなります。
また自律神経が優位になることで、神経伝達物質であるセロトニンが過剰に分泌され、血栓ができやすくなることが分かっています。
心筋梗塞
狭心症が悪化し、冠動脈が完全に詰まってしまうと心筋梗塞を起こします。ストレスによりセロトニンが過剰に分泌されることで血栓ができやすくなり、心筋梗塞を起こしやすくなります。
心筋梗塞は狭心症とは比べものにならないほどの胸の痛み、圧迫感、胸が焼けるような痛み(灼熱感)があり、早急に治療が必要になります。
心臓病が発症・悪化する主な要因
心臓病を発症、悪化させる主な要因を4つ紹介します。
環境的要因
環境的要因とは、あなたを取り囲む外側の環境すべてをいいます。気候・生活環境・労働環境などあらゆる環境が、心臓病を起こす要因となる場合があります。
たとえば気候なら、真夏の時期、暑いところからクーラーの効いた涼しい部屋にいきなり入ると、急激な温度差によって心臓が収縮し、狭心症のような症状を引き起こすことがあります。
また、職場でいえば、緊張などの特定のシチュエーション、たとえばプレッシャーがかかる大きなプレゼンの前には必ず条件反射的に心臓のあたりがギュッと苦しくなったり、苦手意識のある上司と話すだけで発作にも似た息苦しさを覚えたりするパターンもあります。
遺伝的要因
遺伝的要因による心臓病の代表疾患は遺伝性不整脈です。両親どちらかから遺伝すると言われています。
また心臓病そのものの遺伝だけでなく、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症なども遺伝性が大きく関わっています。そしてそれらの病気が遺伝することで心臓病の発症につながる場合もあります。。
心理的要因
悩みや不安など心理的に負担がかかるような出来事が起こると、ストレスを感じ心臓病を発症する要因になります。
ストレスを感じたら気分転換を図って溜めこまないようにしましょう。
心臓病の既往歴は関係ある?
元々心臓病を患っている、または心臓にまつわる血管や弁に奇形がある場合は、新たに別の心臓病を発症したり悪化することがあります。
ストレスが関係する心臓病の特徴
ストレスが原因で心臓病を発症したときの特徴的な症状を5つ紹介します。またストレスによって感じる以下の症状は「心臓神経症」が大きく関わっていますので、合わせて説明していきます。
動悸や息切れ・めまいなどを伴うことがある
ストレスにより交感神経が優位になることで心拍数が上昇します。心拍数が増加すると動悸や息切れ、めまいを起こすため、このような症状が起きたときは、ストレスを溜めていないか自身を振り返ってみてください。
安静時に痛みが出る
心拍数が上昇すると、動悸や息切れが起こると同時に胸に痛みを感じることがあります。「心臓神経症」と呼ばれ、機能上に異常はないにもかかわらず安静時に痛みを感じるのが特徴です。
交感神経の影響のほかに血行不良によるもの、パニック障害により引き起こされるものがあります。
ズキズキ・チクチク
狭心症で起こる胸の痛みは「心臓が鷲づかみされたような痛み」と表現されることが多いです。痛い部分を強く押すと痛みが強くなるという特徴もあります。
より具体的には、心臓をするどいナイフやクギで直接突かれているかのような痛みと言われており、繰り返すと心筋梗塞などを誘発する可能性があります。
長い時間持続する痛み
狭心症の痛みは続いても15分ほどなのが一般的です。長い時間(数分〜数時間、または一日中)続く痛みは、心臓神経症の可能性があります。
不安感や不眠の症状を伴う
強い不安感や眠れないなど精神的な症状が出ている場合は、身体が強いストレスを感じている症状といえます。
心臓に違和感を覚えた時の対処法
上記のような心臓に違和感を覚えたときに、どのように対処すれば良いのか。具体的な対処法を5つ紹介します。
禁煙
近年の研究で喫煙者は非喫煙者よりも、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患にかかる確率が高いといわれています。タバコに含まれるニコチンが交感神経を刺激して血管が収縮し、心臓へ負担をかけるためです。
禁煙することで心臓病(特に虚血性心疾患)にかかる危険性、悪化する危険性を回避することができます。
休養
心臓に違和感を覚えているときはストレスを感じているときや、疲労が蓄積しているときといえます。しっかり睡眠をとる、気分転換を図りリラックスすることが重要です。
適度な運動
適度な運動は身体がリラックスでき、副交感神経優位に働きかけてくれます。週2〜3回30分程度のウォーキングがおすすめです。デスクワークの方は、1時間に1回はイスから立ちあがってストレッチをするなど、意識して身体を動かしてみましょう。
環境を変えることも必要
ストレスは心臓病には大敵となるため、原因となる環境があれば思い切って変えてみるのも一つの手段です。職場でのストレスがあれば転職を検討するなど、ストレスを軽減するための環境を整備しましょう。
転職するべき職場については、こちらの記事「心臓障害の方が転職すべき職場とは?体に負担をかけずに働く方法」で解説しています。
症状が長引くようなら専門医に相談
様子を見ていても症状が続く、症状があることでストレスを感じることもありますよね。自己判断せずに専門医に相談すると安心できることもあるため、受診をおすすめします。
まとめ
ストレスにより心臓病が発症したり、悪化したりすることは、珍しくありません。時には狭心症や心筋梗塞にもつながる可能性があるため、適切な対処が必要です。必ず専門医と相談したうえで、無理なくストレスをコントロールしていきましょう。
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