心臓カテーテル手術は身体障害者手帳交付の適応になる?交付条件やメリットについて解説

公開日 2023年11月14日 最終更新日 2024年2月18日

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対し、心臓カテーテル手術を受ける方の中には、「心臓カテーテル手術を受けたら、身体障害者手帳の交付対象にならないの?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、心疾患のある方に対する身体障害者手帳の仕組みや交付条件について解説します。交付を受けることでのメリットについてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】

障害者手帳とは

障害者手帳とは、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付される手帳です。

認定されるための基準は、身体障害者福祉法によって定められており、身体障害者手帳の交付条件を満たしている場合は、福祉サービスや税金面での優遇、公共交通機関の割引などのサービスを受けることが可能です。

障害者手帳の交付対象となる疾患と等級には、次のようなものがあります。

  • 視覚障害:1〜6級
  • 聴覚又は平衡機能の障害:1〜6級
  • 肢体不自由:1〜7級(体幹のみ〜5級)
  • 内臓または免疫機能の障害(心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう若しくは直腸、小腸、肝臓、免疫):1〜4級

このように、対象者の障害の種類や状態によって等級が判定されます。

障害者手帳の種類

障害者手帳にもいくつかの種類があることをご存知でしたか?障害者手帳の種類には、以下の3つの種類があります。

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

上記3つの分類において、心臓に疾患がある人は、内臓の機能障害のうち「心臓機能障害」に該当し、身体障害者手帳の交付対象となります。

心臓機能障害の考え方

心臓機能障害は、血液を全身へ循環させるポンプ機能に障害を持つ疾患です。内部障害ともいわれ、外見からは障害の有無や程度がわかりにくいといった特徴があります。

心臓機能障害として認定を受けるためには、心疾患の状態がある一定以上のものでなくてはなりません。心疾患とは心臓だけではなく、大動脈などの血管を含む循環器疾患全体を指します。(ただし、血圧については「高血圧症による障害」の分類があるため除外。)

心疾患による障害は、

など、さらに細かく区分されます。

心疾患の障害者等級の認定における考え方は、最終的な心臓機能が慢性的に障害された「慢性心不全」の状態を評価するものです。そのため、心臓カテーテル手術によりステントが留置されているだけでは、身体障害者手帳の交付条件を満たすことはできません。

しかし、心臓カテーテル手術を行ったあと、ゆくゆくは慢性心不全の状態につながり得る「心臓機能障害」の状態であれば、身体障害者手帳の交付を受けることができます。外見に表れにくい内部障害であるからこそ、正しく認定を受けることで、自分自身で生活を守ったり周囲の人々への理解を促したりすることができます。

心臓障害者に対する障害者手帳については、こちら記事「心臓疾患の人は障害者手帳を持つべき?メリットや申請方法について解説」で詳しく解説しています。

【関連コラム】

心疾患の障害者手帳認定基準

心疾患に対する障害者手帳には等級が設けられており、1.3.4級があります。

  • 1級:自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
  • 3級:家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
  • 4級:社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

出典:心臓機能障害 【障害程度等級表】 【認定基準】

心疾患で障害者手帳の認定を受けるには、いくつかの認定基準を満たすことが必要です。また、心臓機能障害の各等級により認定基準が異なります。ここでは、18歳以上の各等級の認定基準について解説します。

心臓機能障害1級

以下の1もしくは2に該当すると、心臓機能障害1級に該当します。

1.安静時又は自己身辺の日常生活活動でも心不全症状、狭心症症状又は繰り返しアダムスストークス発作が起こる。かつ、a〜hのうち、いずれか 2 つ以上の所見がある。

  • a. 胸部エックス線所見で心胸比 0.60 以上のもの
  • b. 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があるもの
  • c. 心電図で脚ブロック所見があるもの
  • d. 心電図で完全房室ブロック所見があるもの
  • e. 心電図で第 2 度以上の不完全房室ブロック所見があるもの
  • f. 心電図で心房細動又は粗動所見があり、心拍数に対する脈拍数の欠損が10以上のもの
  • g. 心電図でSTの低下が0.2mV以上の所見があるもの
  • h. 心電図で第Ⅰ誘導、第Ⅱ誘導及び胸部誘導(ただし V1 を除く。)のいずれかのTが逆転した所見があるもの

2.先天性心疾患などによりペースメーカやICD(除細動器)を植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されている。または人工弁移植、弁置換を行っている。

心臓機能障害3級

以下の1,2いずれかに該当すると、心臓機能障害3級に該当します。

1. 1級のa〜hまでのうちいずれかの所見があり、かつ、家庭内での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動では心不全症状若しくは狭心症症状が起こる。または、頻回に頻脈発作を起こし救急医療を繰り返し必要としている。

2.ペースメーカを植え込み、家庭内での日常生活活動が著しく制限されている。

心臓機能障害4級

以下の1,2,3いずれかに該当すると、心臓機能障害4級に該当します。

1.次のa〜hのうちいずれかの所見があり、かつ、家庭内での普通の日常生活活動または社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動では心不全症状または狭心症症状が起こるもの。

  • a. 心電図で心房細動又は粗動所見があるもの
  • b. 心電図で期外収縮の所見が存続するもの
  • c. 心電図でSTの低下が0.2mV未満の所見があるもの
  • d. 運動負荷心電図で STの低下が0.1mV以上の所見があるもの

2.臨床所見で部分的心臓浮腫があり、かつ、家庭内での普通の日常生活活動もしくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動は著しく制限されている。または、頻回に頻脈発作を繰り返し、日常生活もしくは社会生活の妨げとなっている。

3.ペースメーカを植え込み、社会での日常生活活動がいちじるしく制限されている。

このように、障害者手帳の交付には細かな基準が設けられています。等級を判定する際には、医師による「身体障害者診断書・意見書」の記載が必要です。

ご自身の状態がどの等級に該当するかわからない、以前認定を受けたときよりも状態が変わっているなどのことがあれば、主治医や福祉事務所、市役所窓口へ相談するようにしましょう。

心疾患の人が障害者手帳を持つメリット

心疾患などの内部障害は、外見に表れづらいという特徴があります。外見からは障害や疾患があるように見えない人も、障害者手帳を持つことで周囲の人に障害があることを理解してもらいやすくなるでしょう。

心臓機能障害の評価において重要な指標となる「慢性心不全」の状態は、心臓のポンプ機能の低下により、動悸・息切れや呼吸困難などの症状を引き起こします。いずれの症状も、仕事や日常生活を送る上で、身体精神的なストレスとなってしまうでしょう。そのため、障害者手帳を交付してもらうことは、ご自身の身を守り、すこやかな生活を送るための手助けになるというメリットがあります。

また、障害者手帳を持つことのメリットは、周囲の人への理解を促すだけではありません。

障害者手帳の交付を受けることにより、福祉サービスや税金面での優遇、公共交通機関の割引などのサービスを受けることができるようになります。次に、具体的に受けられるサービスについて詳しく解説していきます。

障害者手帳で利用できるサービス

以下に、障害者手帳の交付を受けた方が利用できる主なサービスをまとめました。

  • 各種手当、年金
  • 公共料金の減免・料金の割引等(上下水道、放送受信料、携帯電話料金等)
  • 交通機関の割引(バス、電車、タクシー、有料道路等)
  • 税金の控除等(住民税、所得税、自動車税等)
  • 移動支援、ガソリン代の助成(福祉タクシー利用券、自動車の燃料費助成等)
  • 介護サービス(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、短期入所等)
  • 生活支給(おむつ支給、訪問入浴サービス、理美容サービス、緊急通報システム設置)
  • 医療費助成
  • 住環境(公営住宅申し込み等)

このように、障害者手帳の交付を受け申請することで、すこやかな日常生活を送るための一助となるサービスがたくさんあります。

もし、生活する上で困っていることや気になることがあれば、一度福祉事務所や市町村窓口へ相談してみると良いでしょう。また、上記のサービスは自治体により異なるため、福祉事務所もしくはお住まいの市町村窓口へお問い合わせください。

心臓カテーテル手術を受けるだけでは障害者手帳は取得できない

今回の記事では、心臓に疾患を持つ人の障害者手帳の交付条件や交付を受けることでのメリットについて解説しました。心臓カテーテル手術を受けるのみでは、障害者手帳の交付条件を満たすことができません。

しかし、心臓カテーテル手術を受けた後の状態によっては、心臓機能障害として障害者手帳の交付を受けることができる可能性があります。

障害者手帳の取得を希望する場合は、まず主治医に相談することから始めてみましょう。

※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。

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看護師兼複業ライター。救命救急センター、集中治療室、心臓血管外科・循環器内科、訪問看護の経験をもとに、「医療を身近に感じる」記事を執筆しています。2歳男児の育児に奮闘中!