心不全療養指導士とはどんな資格?役割や資格取得までの手順を詳しく解説!

公開日 2023年2月9日 最終更新日 2023年4月21日

2021年に新しく「心不全療養指導士」の制度が作られましたが、どのような資格なのかよく分からない方もいるのではないでしょうか。

心不全療養指導士は心不全の発症や重症化を予防するため、基本的な知識・技術の向上を目的とした資格です。

この記事では、心不全療養指導士の役割や取得方法などをご紹介します。循環器系の仕事に従事している方や、心不全に関心のある方におすすめです。

【目次】

心不全療養指導士とは?

心不全療養指導士とは、どのような資格なのでしょうか。ここでは心不全療養指導士の制度が作られた成り立ちや、その役割について解説します。

心不全の増悪防止・QOLの改善を目的とした資格

心不全療養指導士とは、心不全の発症、症状の悪化を予防するために必要な基本的な知識の習得や、技術の向上を目的として設けられた資格です。心不全療養指導士は、2021年に日本循環器学会で開始したため、比較的新しい制度といえるでしょう。

この資格は多くの専門職が取得できるのが特徴です。高齢化社会の影響で心不全患者が増えているいま、あらゆる職種が循環器の知識を持っておく必要があります。循環器に精通したスタッフを含めたチーム医療を展開することで、症状悪化による入院の予防やQOL(生活の質)の改善が期待できます。

出典:日本循環器学会

心不全療養指導士の役割

心不全療養指導士の役割は、具体的に説明すると以下の5つがあげられます。

  • 心不全の予防の重要性を理解し、その考えを啓発する活動に参画できる
  • 心不全の病態や治療を理解し、病状について把握できる
  • 心不全の進行状況に応じた予防・治療を理解し、基本的・包括的な療養指導ができる
  • 心不全の診療で、多職種と連携してチーム医療の推進に貢献できる
  • 心不全患者の意思決定支援と緩和ケアの基本的知識を持っている

このように、心不全療養指導士はチーム医療の重要な役割となることが期待されています。

心不全療養指導士の受験資格

心不全療養指導士の取得には認定試験を受ける必要があり、以下の条件を満たすと受験資格を得られます。

  • 看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、公認心理士、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士の国家資格を保有している
  • 日本循環器学会の会員であり、年会費を納めている
  • 現在、心不全療養指導を行っている
  • 受験者用のeラーニング講習を受講して、修了証を取得している
  • 症例報告書を5例提出している
  • 申請書類を記載・提出し、受験料を納めている

該当する職種以外にも、学会専門医の推薦状を提出して承認を受ければ、医師以外の国家資格のある医療職も認定試験を受けられます。

心不全療養指導士の認定試験について

ここでは心不全療養指導士の認定試験の詳細や、資格の取得後について解説します。

認定試験の詳細

認定試験の受験日程は毎年12月に行われています。試験時間は約1時間程度で、マークシート形式の筆記試験です。2020年と2021年の認定試験の受験者数、合格率は以下の表にまとめました。

2020年 2021年
受験者 1,979人 1,914人
合格者 1,771人 1,649人
合格率 89,49% 86,15%

試験日や出題形式などは今後変更する可能性もあるので、あらかじめ日本循環器学会のホームページで確認しておきましょう。

出典:日本循環器学会

試験合格のためのポイント

心不全療養指導士の合格率は高いですが、十分に勉強していないと試験に落ちる可能性は高いでしょう。試験に合格するには、以下のポイントをおさえておくことが大切です。

  • 認定試験ガイドブックをチェックしておく
  • eラーニングの内容を復習しておく

心不全療養指導士 認定試験ガイドブック」は、日本循環器学会の公式テキストです。ガイドブックの内容は心不全療養指導士のカリキュラムに準拠しており、心不全の症状や治療、療養指導などの内容が紹介されています。

またeラーニングでは各講師が循環器について分かりやすく説明してくれているので、復習をしておきましょう。一つひとつの講義は短いため、通勤時間や家事の合間など、スキマ時間を利用すると効率的に勉強できます。

資格取得後は5年おきに更新が必要

心不全療養指導士の資格は永続ではなく、5年間の有効期限があります。有効期限が切れる、あるいは日本循環器学会の年会費未納によって退会となった場合は、資格が失効されます。資格の更新には以下の条件が必要です。

  • 日本循環器学会の会員を継続し、年会費を納めている
  • 日本循環器学会の学術集会に5年間で1回以上参加している
  • 5年間で学術集会やセミナーに参加して、50単位以上取得している
  • 症例報告を5例提出している
  • 更新審査料の10,000円を支払う

上記の条件を満たせば、更新が可能です。取得できる単位は、参加する学術集会やセミナーの種類によって異なります。

出典:日本循環器学会

心不全療養指導士を取得するメリット

心不全療養指導士の取得で得られるメリットは以下の2つです。

  • 心不全パンデミックの抑止につながる
  • チーム医療の推進につながる

ここではそれぞれのメリットを詳しく解説します。

1.心不全パンデミックの抑止が期待できる

1つ目のメリットは「心不全パンデミック」の抑止が期待できる点です。現在、社会の高齢化の影響により国内の心不全患者が増加傾向にあります。さらに日本だけでなく、世界中でも心不全の発症数が増加しているのです。世界的に心不全が拡大しているこの状況を「心不全パンデミック」と呼びます。

心不全療養指導士として心不全に関する知識や対処法を実践に移すことで、病気の悪化を防ぎ、症状の改善につなげられます。

2.チーム医療の推進につながる

2つ目のメリットは、チーム医療の推進につながる点です。医療職はそれぞれ独立して仕事をしているわけではなく、チームとして連携をしながら患者の支援を行っています。

そのため、心不全療養指導士がチーム内にいれば、心不全患者に対しての知識や適切な処置について共有が可能です。結果的に他職種との連携がスムーズとなり、万全の体制で心不全患者の支援を行えるでしょう。

心不全療養指導士を取得するときの注意点

心不全療養指導士を取得するときの注意点は、以下の2点です。

  • 認定試験が1年に1回のみ
  • 事前にeラーニングと症例報告を済ませる必要がある

認定試験は1年に1回しか開催されないので、タイミングを逃すとチャンスがまた来年となってしまいます。また、その前にeラーニングの受講と症例報告を済ませておく必要があります。「課題を少しずつあと回しにしていたら、間に合わなかった」なんてことがないように、計画性を持って進めていきましょう。

心不全療養指導士の取得を目指してみよう

心不全療養指導士の取得は、今後も増加傾向にある心不全の発症の抑止につながります。またチーム医療の連携がスムーズとなり、心不全に対して適切なアプローチが可能となります。

幅広い医療職が取得できる資格でもあり、将来的に認知度が高まれば、医療職全体の心不全の関心がさらに高まるでしょう。心不全療養指導士の内容や取得するメリットをおさえたうえで、ぜひ資格の取得を目指してみましょう。

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5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)