カテーテルアブレーション手術後の生活で気を付けるべきポイントを紹介!

公開日 2023年10月5日 最終更新日 2024年9月12日

カテーテルアブレーション手術後の生活では、気をつけなくてはならないポイントがいくつかあります。

「手術後1ヶ月はどのように過ごしたらいいのだろう」「手術後はどれくらいで仕事復帰や運動できる?」

などお悩みの方に向けて、カテーテルアブレーション手術後の生活で気をつけるべきポイントについてご紹介します。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーションとは心筋焼灼術のことをいい、対象となる不整脈に対して行われる治療です。局所麻酔下で直径2mm程のカテーテルを心臓内に挿入し、不整脈の原因となる部位へ高周波電流を流し、焼灼する治療方法です。

大きな特徴としては、外科的な手術と比べて、体への負担は比較的少なく済むことといえます。

カテーテルアブレーション手術は全ての不整脈に対して適応となるものではありません。治療対象となる不整脈疾患や手術の流れについてご紹介します。

治療対象となる不整脈疾患

治療対象となる不整脈についてご紹介します。

発作性上室性頻拍症

発作性上室性頻拍症とは、突然脈拍が速くなった状態がしばらく続いたあと、突然止まる不整脈のことを指します。心臓の中の心房と呼ばれる場所が不整脈の原因となり起こります。

発作性上室性頻拍症とは、狭義ではWPW症候群(房室回帰性頻拍)、房室結節回帰性頻拍、心房頻拍の3つに分けられています。

心房粗動

心房粗動は、心房が1分間当たり250-350回/分の非常に速いペースで拍動してしまう状態を指します。拍動のペースが早すぎるため、電気刺激が正しく心室へ伝わる事ができません。

心房細動

心房が無秩序に振動する状態のことを指します。電気刺激を正しく心室へ伝えるための電気的活動が行えない状態のため、心臓から送り出される血液量が低下します。

心房細動については、こちらの記事「心房細動になったら仕事を制限すべき?引き起こされる症状や働くときのポイントを解説」で詳しく解説しています。

心室頻拍

心室頻拍とは、心室を発生源とする不整脈の一種です。心室頻拍の状態のときには、心拍数が120回/分以上となります。心室頻拍には以下の2つの種類に分けられます。

  • 特発性心室頻拍
  • 二次性心室頻拍

カテーテルアブレーションは、これらの不整脈の原因に対し、心臓が規則正しく電気活動を行う事が出来るよう根本的治療を目指す治療法となっています。

カテーテルアブレーション手術の流れ

一般的に標準治療計画という治療スケジュールに沿って治療が行われます。状態に応じて変動はありますが、入院期間はおおよそ3-7日程度で組まれています。以下が手術前後の流れや内容となります。

【術前】

  • 1. 治療前日に入院し、医師や看護師より治療方法の説明が行われます
  • 2. 心エコーなどの各種検査を行います

【術当日】

  • 1. 当日は、点滴や内服などの治療前処置を行い、手術室へ向かいます
  • 2. 術後は心電図モニターを装着し、不整脈の監視を行います
  • 3. 術後出血の予防のため、カテーテルを挿入する部位の安静指示があります
  • 4. 飲食については術後の状態によって指示があります

【術後】

  • 1. 状態に応じて安静指示が解除されます
  • 2. 退院日には心電図モニターでの監視が終了します

標準治療計画の一部をご紹介しましたが、入院先の病院によって内容は異なるので、気になることは医師や看護師へ相談・確認する必要があります。

カテーテルアブレーション手術後の生活

カテーテルアブレーション手術後は、一体どのようなことに気をつけたら良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか?術後の生活を安心して過ごすために知っておきたいポイントをまとめました。

術後の観察ポイント

カテーテル挿入部位の観察

術後、カテーテル挿入部位の皮膚より出血や血腫ができる可能性があります。多くの場合、おおよそ入院している間に傷は回復する事が多いですが、免疫力が低下していると回復するまでに時間を要する場合があります。

そのため、退院後しばらくの間は、カテーテル挿入部位の皮膚にトラブルがないか観察していくことが大切です。

抗凝固薬の内服管理

カテーテルアブレーション手術の対象となる不整脈の中で、心房細動は脳梗塞の合併リスクの高い不整脈です。

脳梗塞の原因となる血栓形成予防のため、血液をサラサラにする抗凝固薬の内服治療が行われることがあります。不整脈の原因や経過にもよるため、医師より指示のあった場合は飲み忘れのないよう、しっかりと管理を行っていくことが重要です。

不整脈症状の有無

不整脈を治療するためのカテーテルアブレーション手術ですが、約20-40%の人に再発が認められたとの報告があります。以下に不整脈の症状をまとめました。

  • 動悸
  • 息切れ
  • めまい
  • 脈が飛ぶ感覚
  • 胸の苦しさ
  • 胸の痛み

これらの症状が出現した場合は不整脈が再発している可能性があります。不整脈の程度や心臓の状態によってさまざまのため、カテーテルアブレーション手術後も不整脈症状に気をつけて生活することが大切です。気になる症状が出た場合は必ず医師へ相談するようにしてください。

仕事や運動への影響はある?

カテーテルアブレーション手術は、治療の特性上心臓が部分的にやけどを負った状態となり、やけどによる炎症で不整脈が出現しやすいなどのリスクがあります。術後、仕事や運動の際に気を付けるべき点についてご紹介していきます。

仕事

主治医からの特別な指示がないか確認したうえで、デスクワークの場合は退院翌日から仕事復帰が可能です。肉体労働の場合は術後2週間程度で仕事が可能となります。

しかし、過労や睡眠不足など、不規則な生活は不整脈を誘発するといわれているため、仕事と生活のバランスについては考慮していく必要があります。術後の状態には個人差があるため、退院前には仕事内容についても医師へ確認すると良いでしょう。

また、退院後も定期的に外来通院が必要となるため、通院の必要性があることを職場へ報告しておく必要があります。

心臓病の人の仕事や働き方については、こちらの記事「心臓障害(心臓病)の人が転職すべき職場とは?体に負担をかけずに働く方法やおすすめの仕事を解説」で詳しく解説しています。

運動

術後2週間は運動などの体に負担にかかることは避ける必要があります。その後は、医師より特別な指示がない限り、これまでの生活と同じく運動を楽しむ事ができます。

しかし、不整脈の再発リスクもあるため、動悸やめまいなどの症状がある場合や体調がすぐれないときは、運動は控えた方が良いでしょう。運動中に気になる症状が出現した場合には、運動は中断し、必ず医師へ相談するようにしてください。

不整脈の原因や状態によって気を付けるべき点は異なります。仕事や運動中に違和感を感じたり、気になる事があったりした際は、仕事や運動は中断し主治医へ相談するようにしてください。

カテーテルアブレーション手術後の生活で困ったときは

体調の変化や困りごとは突然起こります。突然の出来事に適切に対処するためには、対処方法について正しく理解する事が大切です。以下に生活で困ったときの対処方法についてまとめました。

症状が出現したとき

カテーテルアブレーション手術後、まれに不整脈や血栓塞栓症、再発などの合併症リスクについての報告があります。そのため、カテーテルアブレーション手術後も不整脈の症状がないか気にしていく事が大切です。以下が主な不整脈の症状です。

  • 動悸
  • 息切れ
  • めまい
  • ふらつき
  • 胸の痛み
  • 失神

このような症状が出現した場合は、すぐに主治医へ相談するようにしましょう。また、「いつもと何か違う」といった違和感は、自分の体からのサインの可能性があります。その場合は、必ず安静にして様子を見てください。強い胸の痛みや息苦しさが出現した場合は、すぐに受診する事が望まれます。

主治医へ相談する

症状出現時に限らず、生活において気になることや困ったことがある時には、すぐに主治医へ相談することが大切です。ささいな話の中から重大な健康問題が発覚したり、必要な指示が出されたりすることもあります。

また、主治医へ相談する以外にも、不整脈にまつわるコミュニティーやSNSで情報交換することも一つの方法です。不整脈に対する正しい知識を持つことは、安心して日常生活を送る上で役立つでしょう。

カテーテルアブレーション手術を受けたあとも変わらない生活ができる

カテーテルアブレーション手術を受けた後の生活で、気をつけなければならないポイントについてご紹介しましたがいかがだったでしょうか。

カテーテルアブレーション手術を受けたあと、外来通院で主治医より特別な指示がなければ、これまで通りの生活を送る事が可能です。しかし、違和感や症状があった際には、すぐに主治医へ相談するようにしてください。

看護師兼複業ライター。救命救急センター、集中治療室、心臓血管外科・循環器内科、訪問看護の経験をもとに、「医療を身近に感じる」記事を執筆しています。2歳男児の育児に奮闘中!