サウナは心臓病に影響がある?サウナと心臓の関係性や正しい入浴法を解説

空前のサウナブームにより、多くの方が「ととのう」体験に魅了されるようになりました。サウナには「ととのう」ための効果がいくつもありますが、実は正しい入浴方法を知らないと心臓や血管に負担をかけてしまうことをご存知でしょうか。

本記事では、

「サウナに入ると心臓がバクバクする」
「心臓の病気があってもサウナに入って大丈夫?」

とお悩みの方に向け、心臓や血管との関係性や正しい入浴方法について解説していきます。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

サウナとは

サウナとは、蒸気浴や熱気浴の一つでフィンランドが発祥の地といわれています。約50-120℃ほどの高温になった室内で入浴し、発汗したあとに水風呂へ入浴するといった、温冷交代の入浴法が広く知られています。

サウナによって期待できる身体効果について以下にまとめました。

  • 免疫力向上:温熱効果・ヒートショックプロテイン増加による免疫力向上*1。
  • 疲労回復・リラックス:サウナ浴の温熱効果により交感神経優位になった後、サウナ浴後の水風呂入浴で身体を冷やすことにより副交感神経優位に。自律神経のはたらきが活発となり、疲労回復やリラックス効果が期待できる。
  • 冷え性改善:温熱効果による血行促進作用から、全身の細胞へ酸素や栄養が行き渡りやすくなり冷え性改善など体温調整機能の向上にも期待できる。
  • 肩こりや腰痛などの緩和:血行不良による慢性的な肩こりや腰痛の改善が期待できる。

これらの身体効果を求め、サウナ浴を楽しむ人が増えています。

出典:日本リハビリテーション医学会

サウナと心臓・血管の関係性

サウナによって得られる身体効果についてご紹介しましたが、一方で、サウナには注意点もあります。特に、サウナと心臓・血管の関係について正しい知識を持たなければ、身体へ悪影響を及ぼす可能性があります。

サウナの温熱効果による血管拡張作用の影響で、一時的な血流量の増加や血圧の低下が期待されるなど、温熱療法による心・血管系疾患への有効性が認められてきています*2。しかし、心不全や心筋梗塞などの持病により、いちじるしく心臓機能が低下している方は、かえって心臓や血管に負担をかけてしまうといわれています。

また、高温のサウナから水風呂へ入るという入浴方法は、血管が急激に収縮し心臓や血管への負担が懸念されます。そのため、サウナ浴における温冷交代の入浴方法は、心臓病をお持ちの方にはおすすめできない入浴方法といえるでしょう。

サウナ浴中に起こる心臓の違和感とは

サウナ浴中に起こる心臓の違和感で聞かれるのが、

  • 動悸
  • めまい
  • 立ちくらみ

などの症状です。これらの症状は、大量発汗による血管内脱水や温冷交代によるヒートショックなどによるものです。

ヒートショックとは

みなさんはヒートショックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。ヒートショックと聞くと、寒い時期の浴室と脱衣室の寒暖差による発症を思い浮かべる方も多いでしょう。このヒートショックの現象は、サウナ室から水風呂へ入ることでも起こると考えられています。

高温のサウナで拡張していた血管が水風呂で急激に収縮し、徐脈や致死性不整脈のほか、心筋梗塞や脳卒中などの心・脳血管疾患を誘発するリスクが高まります。そのため、持病に心・脳血管疾患をお持ちの人は、主治医へ相談のうえ利用することが大切です。

サウナ浴を避けた方がいい人

サウナ浴を控えた方が良い人の特徴についてご紹介します。

サウナは高温の環境で大量の発汗を促します。そのため、飲酒したあとや利尿剤を内服している方は脱水を誘発するリスクが高くなるため、サウナ浴は控えた方が良いでしょう。

サウナ入浴中による脱水は、血管内の水分が失われることで起こるため、めまいや立ちくらみ、ひどい時には意識消失を誘発します。浴室内でふらついたり意識消失したりすると、転倒により重大な怪我につながるリスクもあり大変危険です。

また、心筋梗塞や心不全を起こしたばかりの人や、高血圧もしくは低血圧で医師より注意を受けている人も、医師の相談なく利用することは控えた方が安心です。ヒートショックや脱水による影響を受けやすく、重大な症状につながる恐れがあります。

症状が出現したときは

心疾患などの持病をお持ちの方が入浴中に異変を感じた場合、適切に対処しなければ最悪の場合命に関わる危険性があります。それでは、サウナ入浴中にめまいや動悸、立ちくらみなどの症状が出現したときの対応方法についてご紹介します。

休息を取り安静にする

サウナ入浴中に、めまいや立ちくらみ、動悸や不整脈などの症状を自覚した場合は、すぐにサウナ室から退室し休息をとりましょう。浴室内での転倒は頭部外傷などのリスクが高まるため、あらかじめ入浴する際は、すぐに退室できるよう出入り口の近くを確保したり休息が取れる場所を確認したりしておくと安心です。

また、安静にしても動悸や不整脈などの症状が改善しない場合は、すぐに受診することが大切です。心疾患などの持病が悪化する恐れがあるため、少し安静にしたからといって、すぐに入浴を再開してはいけません。

かかりつけ医へ相談する

サウナ入浴中に身体の違和感を感じたら、すぐに安静になり様子を見て受診しましょう。

心疾患の場合、自覚症状は目で見て分かるものではありません。安静になり回復した後も繰り返し症状が出現する場合、医師へ相談することをおすすめします。症状の自己判断は避けるようにしましょう。

サウナの利用は主治医に相談してから

サウナ浴の身体効果や心臓や血管との関係性についてご紹介しました。サウナの浴による効果の一つである温熱効果には、身体をリラックスさせたり諸機能の改善が期待できる効果があるといわれています。

一方で、正しいサウナ浴方法やサウナ浴がもたらす身体への影響を理解しなければ、心臓や血管に負担をかけてしまうことがおわかりいただけたのではないでしょうか。ササウナ浴中に気になる症状がある人や、心臓に持病を抱える人が入浴される際は、ぜひ一度かかりつけ医に相談されることをおすすめします。

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看護師兼複業ライター。救命救急センター、集中治療室、心臓血管外科・循環器内科、訪問看護の経験をもとに、「医療を身近に感じる」記事を執筆しています。2歳男児の育児に奮闘中!