公開日 2025年12月25日 最終更新日 2025年12月25日
はとらくは、心臓病への想いを持つ方にその想いを届ける場として活用いただくため、「はとらくで届けたい」と題して、寄稿文を募集しています。
今回は第8弾として、単心房単心室・無脾症 と生きながら心疾患のことを発信している近藤姫花さんに、20代女子の性に関するリアルなお話を、執筆いただきました。
(本記事では、リアルな性の話を執筆しいただいております。ご認識の上、お進みください。)
はとらくでは、心臓病に関する寄稿を募集しています。当事者や医療・福祉の現場にいる方の声を、編集部がサポートのうえ発信しています。

寄稿者:近藤姫花
単心房単心室・無脾症と生まれ、0歳から23歳までに計7回の手術を受ける。現在は通信制大学に通いながら、個人事業主で家庭教師として働き、先天性心疾患コミュニティ「ココの輪」を運営。3頭のダックスを養い中。2022年にエッセイ『キミがいるから私は』を出版。
【目次】
性について考えてみる
Q. 何故セックスについて投稿したの?
A. 大事なことなのに、なかなか話す機会がないので、まずは私から始めようかな、と思って投稿しました。
みなさんは、性について、とりわけセックスについて考えたことはありますか?
私は普段、SNSでの発信やコミュニティの運営をしているのですが、心疾患を発信する女性である私にとって、これは伝え続けたいテーマの1つであり、同時に、伝え続けなければならない大切なことだと考えています。
まず「 セックス 」というのはお笑いでもなければ 卑猥な言葉でもなく、自然界に生きる動物にとって当たり前のこと。なので私はこの投稿においてセッ○スとか ” そういう行為 ” ではなくそのままセックスと書いていきます ✎
多くの女の子は 10歳から中学生くらいで生理 (月経) が始まると保健の授業でも習っていると思います。そして高校生くらいになると「もうした?」「痛かった?」とか女子トークが始まって セックスが身近になり、恋愛の次には当たり前のようにセックスがあって、彼氏とはもちろん 付き合っていない人とも「ワンナイト」を経験する子もいるかもしれません。
時には 避妊をしないセックスに「愛」とか「本気」という言葉で誘われたりそれが「良い」という人もいるでしょう。当然、避妊をしなければ妊娠の可能性があって、それは誰もが分かっているかもしれないけれど。
【 心疾患にとっての予期せぬ妊娠は( 個人差はあれど ) 大きなリスクがあること 】
何よりも大切なのは、これを知っておくことだと思っています。
妊娠と出産、する?しない?
私自身は 高校生の時に生理不順で「 将来子どもを出産したいか 」ということをたくさん考える時期がありました。
小さい頃から何となくごっこ遊びの延長のような感覚で、私はお母さんになるんだと思っていたので「出産を望むか」という問いにもちろんYesだと思っていたけれど、母と話したり、女医の先生との相談外来を設けていただき妊娠や出産、セックスのことを聞いたりと、たくさん話して、たくさん考えて、「出産はしない」という答えを出しました。
子育てをしたい、という想いの強さは変わらなくて、その気持ちは今も持っていますが、私の中での優先順位は「産むこと」ではないと思ったのが、大きな理由です。
もちろん、これが正解というわけではなく、先天性心疾患に生まれて、妊娠や出産を経験されている方もいらっしゃいますし、”先天性心疾患の女性は子どもが産めない”という考え方は少しずつ変わってきているので、ひとりひとりが自分のことを知り、その先のことをしっかりと考えた上でそれぞれの選択があると思っています。
予期せぬ妊娠のリスク
私が高校生の頃、女医の先生の相談外来を設けていただいた時に、「予期せぬ妊娠のリスク」について話を聞きました。
- まず、そもそも出産は心臓に負担であること
- もし出産を望むなら万全の準備が必要なこと
- 準備不足の妊娠は、私自身 母体の危険はもちろん、生まれてくる赤ちゃんもリスクが大きいこと
「できちゃった」はNG。だけど万が一「できちゃった」ときは必ず早く伝えること を確認。大切なのは、万が一「できちゃった」時は報告する!隠さず言う!ということ。
……といってもこの時の私は「そんな不真面目なセックスをすることなんて私には絶対ない」と思っていました。
けれどその数年後私はアフターピル (緊急避妊薬)を飲む事態になりました。
つまり避妊をせずセックスをしてしまった。相手は仲の良かった人で、当時好きな人。お泊まり会をすることになって、セックスをする可能性を分かった上で行って、その結果、相手は避妊をしてくれませんでした。
「こんなはずじゃなかったのに」
それが、当時の私の気持ちで、もちろん、非があるのは全面的に相手です。
けれど、起きてしまったことは戻せず、リスクを背負ったのは私。そういう意味で私は、
きちんと考えることができていませんでした。
妊娠する確率は低いだろうと思いつつ、私はずっと不安で すぐには親に言えなくて。アフターピルの効果があるとされる3日、ギリギリで母に伝えて急いで病院へ。その後 産婦人科でアフターピルを飲みました。
担当医に相談の上、母と産婦人科に駆け込んだ私。
けれど、アフターピル飲んだ!解決!ではなくて、もともと生理不順だった私は
飲んで1週間体調不良で学校を休んで、その後生理は更に不順になりました。
1〜2週間後に妊娠検査薬をして、結果は無事に陰性。しかしそれから、かなりな生理不順が半年以上続きました。
性について「考える」とは
私は、高校生でお話を聞いた時、「私はそんなことしない」と思っていました。避妊はしなければいけないと思っていたし、「ちょっとなら大丈夫」なんて考えを持っていたわけではありません。
けれどそれ以上の、例えば、自分は望んでいなくても相手に押し切られてしまう可能性や、相手が約束を破る可能性を、私は考えられていなかませんでした。
- 「流されるのがいけない」その通り
- 「リスクに対する意識が低い」その通り
- 「男を見る目がない」これもまじでその通り
だけどその時の私は、好きな人に強く言えなかったし。親にもすぐに言えなかったしあると思っていた危機感は足りなかった。
でもこれはきっと、誰にでも起こりうること。
私も大人になってから、ホテルに誘われたこともあるし、不良品のような扱いを受けるくらいなら「別に1回」と思いそうになることもあります。
気軽なセックスに応じないことを「ノリが悪い」と言う人がいることも、残念ながら事実です。
けれど私の体は私にしか守れないし、あなたの体はあなた自身にしか守れない。
私たちの体と心を軽率に扱う人とは距離を置いていいし、「好き」とか「愛」とか言われても不安になるセックスは断っていい。
そして最も大事なこと。もし不安になるセックスをしてしまったら、きちんと大人に言って良い。否定されないか。恥ずかしい目で見られないか。私も不安でなかなか言えなかったけど、ちゃんと聞いてくれる大人はいます。
ひとりひとりが性について考えることが、大切だと感じています。
Q&A
大切なこと
Q. 性について誰に相談したらいい?
A. 私は女医の先生と話す機会がありました。主治医の先生でもいいと思いますし、男性の先生に話すことに抵抗があれば、看護師さんや女性の先生との機会を作ってもらうのもいいと思います。
Q. 心疾患は妊娠できない?
A. 個人差があるので、主治医の先生への相談が必要です。体調や、生活スタイル、何を優先したいのかを考えることも大切。先天性心疾患と生まれて、妊娠・出産を経験した方もいらっしゃいます。
Q. 不安なセックスをしてしまったら?
A. まずは、誰かに伝える。家族、友達、先生、信頼できる人に。そこから主治医の先生、婦人科の先生に伝わることが大切だと思っています。
Q. 不安なセックスをしてしまって どうした ?
A. 私は1日悩み、友達と相手に相談して、また1日経ち。3日目、友達に引っ張られて学校の先生に話し、先生から母に電話してもらい、母と循環器の病院へ向かい、担当医の先生に婦人科へ繋いでいただき、アフターピルを飲みました。
(相手の「大丈夫」は信頼しない。大丈夫じゃなかった時、相手は責任をとってはくれません。)
私自身の生理のこと
Q. 初めての生理はいつ ?
A. 中学3年生。小柄だったので、それもあったかな。遅いなと思っていて、看護師さんに話していましたが、自然に始まりました ✿
Q. 1日の量はどのくらい?
A. 日によるけれど、基本はナプキンを2〜3枚使うくらいの量。少ない日はおりものに色がついている程度で、多い日は大きめのナプキンを数回変えないと血が漏れてしまう量です。
Q. 周期は?
A. 私はかなりの生理不順です。1年間ほぼ全く来ていなかったり、と思えば、数ヶ月休みなくずっと生理だったこともあります。
Q. 生理痛はある?
A. 私は生理痛を殆ど感じないタイプです。腰が重い感覚は時々あるかも。
Q. 生理不順ってどんな感じ?
A. 1年全く来なかった時は、心配はあれど気持ち的にはかなり楽でした。半年間常に生理な時は、ナプキンを変えたり、漏れを気にしたりする大変さがありました。
Q. 生理不順だと何が問題?
A. 婦人科的なことが多いかと思いますが、私が困ったのは貧血。血が減り続けている状態なので、一度数値が大きく下がりました。血液検査で時々確認して、必要に応じて病院で鉄を点滴していただいていました。
ピルについて
Q. ピルは飲んでもいいの?
A. 個人差があると思うので、主治医の先生に確認してみてください。私は、中用量ピルとアフターピルを服用したことがあります。
Q. 中用量ピルを飲んでどうなった?
A. 生理を止めたくて飲んで、生理は止まりました。が、 食べられない・動けない・気持ち悪いという悪阻のような症状が続きました。( 生理不順は飲み終えてしばらくで戻ってしまいました )
Q. アフターピルを飲んでどうだった?
A. 急に大量の生理 (不正出血?)になりました。体調的にもメンタル的にも動ける状態ではなくて、学校を1週間休みました。
セックスのこと
Q. いつからセックスについて考えたらいい?
A. 中高生になると周りの話題でも身近になってくると思うので、その頃にはぜひ ✿
Q. セックスをすると体調に変化はある?
A. 初めての時は出血することがあります。私は出血量が多かったかも。それからセックスは体力を使うので、様子を見ながら。私は、不正脈を感じたこともありました。
Q. 初めてはいつ?
A. 中学生や高校生で初めてする子もいます。中高生になったら機会があるかもしれないと思っていいかも。私は高校生の時でした。
Q. どう誘われるの?
A. 2人きりの空間 (家とかホテル )でいつの間にかという感じが多いかな。「今からセックスしよう!」と誘われることはほとんどないです。したくないのに始まってしまっても、断って大丈夫。
Q. 相手のことが好きでも断っていいの?
A. 私はストレートに「あなたのことは好きだけどセックスはしたくない」って言います。そういう相手ができたら、先に事情を話しておくのが吉。
Q. セックスを断ったら嫌われる?
A. それならこちらから願い下げ。私たちの体と心を軽率に扱う人とは距離を置いていい。
親と子ども、相手と自分、
循環器や婦人科の先生と「話す」こと 。
“分からないことは聞いて良い”
そういう空気を、作っていきたいです。
