公開日 2022年8月31日 最終更新日 2023年11月11日
先天性の病気にはさまざまな種類がありますが、そのなかの1つに「心臓病」が含まれています。
とくに「心房中隔欠損症」は、先天性の心臓病のなかでも割合が多いのはご存じでしょうか。
私自身も、先天性の心房中隔欠損症を経験しています。今回は心房中隔欠損症の特徴と、わたしが子ども時代に治療をしたときの体験談をご紹介します。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
執筆:内藤かいせい
5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)執筆記事一覧
【目次】
心臓病とは?
心臓の機能に異常が現れることで起こる病気をまとめて「心臓病」といいます。ここでは、心臓病の1つである心房中隔欠損症について詳しく説明します。
心房中隔欠損症とは心臓に穴があくこと
心臓は4つの部屋に分かれており、それぞれ右心房・右心室・左心房・左心室と呼びます。心房中隔欠損症とは、右心房と左心房のあいだにある「心房中隔」という壁に穴が開いている病気です。
通常「血液が戻る部屋」と「血液を送る部屋」を壁で分けることで、正しい方向に血流が流れます。しかしその壁に穴が開くと正しい方向に血液が流れず、心臓に負担がかかってしまうのです。心房中隔欠損症は先天性心疾患のなかでも頻度が高いといわれており、決して珍しい病気ではありません。
子どもの時期は無症状の場合が多い
心房中隔欠損症は、子どもの時期は無症状のまま経過するケースが多いです。
心臓に穴が開いている状態でも、それぞれの部屋を大きくしたり、壁を厚くしたりすることで負担を軽減しているからです。症状としては以下のようなものが現れることもあります。
- 体重がなかなか増えない
- ほかの子供と比べて小柄
- 走ると息切れを起こしやすい
- 風邪をひきやすい
このように症状が現れたとしても、普通の子どもと比べても変化がわかりにくいです。
しかし心臓の穴が大きい場合、子どもの時期から心不全が現れることもあります。また心臓の穴が自然に塞がる可能性もあるため、重篤な症状が現れていなければしばらく様子をみることもあるでしょう。
成人になると症状が出現する
子どもの時期では無症状だった人も、治療をしないまま成人になると症状が現れはじめます。
- 息切れ
- 動悸
- 疲れやすさ
このような自覚症状がはっきりと出現するようになり、病気がさらに進行すると不整脈や心臓弁膜症なども合併する危険性があります。
女性の場合、妊娠・出産をきっかけに息切れや疲れやすさが出てくることも多いです。
子どもの時期に症状がなかったと油断して治療を行わずにいると、大人になったときの生活に大きな支障をきたす可能性も。そのため将来のことを考慮して、なるべく早めに対処することが大切です。
心房中隔欠損症の治療方法
心房中隔欠損症は自然に穴が塞がる可能性もあるので、それまでは様子をみます。
穴が自然に塞がらない、あるいは他の症状が現れはじめてきたら「心房中隔欠損症閉鎖術」を行います。心房中隔欠損症閉鎖術とは、心臓の穴を塞ぐための治療法です。この治療法には、以下の2種類の方法があります。
- 開胸手術
- カテーテルを使用した手術
カテーテルを使用して行う手術は小さな傷だけで済むのがメリットですが、すべての心房中隔欠損症の人に行える方法ではありません。
穴の小ささや壁の厚さなど、さまざまな状態を考慮して、どちらの方法がいいのかを検討します。子どもの時期に実施する閉鎖術の予後は良好といわれており、その後は普通の人たちと同じような発育が期待できます。
先天性の心房中隔欠損症だったわたし
ここでは、先天性の心房中隔欠損症だったわたしの経験についてご紹介します。
子どもの頃の記憶
わたしは2372gの低体重児で、予定より5日遅れで次男として誕生しました。長男より体重が少なかったこともあり、その原因を探すためにICUにしばらく入院していたそうです。その結果、診断で先天性の心房中隔欠損症であることが判明。生まれてすぐなので、しばらく様子をみながら成長していきました。
子ども時代のわたしは、自分の心臓に穴が開いていることを聞かされてもピンとくることはなく、病気の自覚なく生活していました。しかし無症状というわけではなく、動き回っているとチアノーゼになることがあったそうです。そして時間が経っても自然に穴が塞がらず、4〜5歳のころに治療で入院することになりました。
手術をして入院したときの記憶
病院に入院しているときも、相変わらずわたしはなんの治療をしているのかよくわかっていませんでした。もちろん医師や親からも説明は聞いていましたが、すべてを理解できたわけではありません。そのためか入院生活は辛い記憶がなく、注射はもちろん手術も一切怖くありませんでした。
開胸手術による心房中隔欠損閉鎖術は無事成功。その後は手術創がある影響でお風呂が大変だったり、病院の屋上で花火を見てキレイだと思ったり、同じ病室のおじちゃんがいい人だったり…。
いろいろな経験をして、わたしは入院後1か月で問題なく退院できました。わたしにとって病院生活は怖いものではなく、普段では味わえない体験ができたいい思い出です。
現在は問題なく生活ができている
子どものころに治療をしたおかげで、その後の定期受診で心房中隔欠損は完治したといわれました。現在わたしは27歳で、これまでなんの症状も現れることなく普通に生活ができています。他の人と同じように学校に行ったり、運動したりできています。
理学療法士の仕事に就き、患者さんにリハビリを提供してきました。そして新しいチャレンジをしようと思い、フリーランスとして活動しています。このような生活を普通に送れるのは、親が子どものときに治療をしてくれたおかげです。
早期の手術をしたから、健康なわたしがいる
先天性の心房中隔欠損症は、子ども時代では症状がはっきりしないケースが多いです。
だからといって治療を先延ばしにしてしまうと、症状が少しずつ悪化する危険性があります。わたしは子どものときに治療していたため、その後も症状は現れませんでした。
素早い対応をしてくれたからこそ今の健康なわたしがいるので、親に感謝しています。先天性の心房中隔欠損は早めの治療が大切であることを、あらためて実感しました。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。