心臓障害 仕事

見えない疾患の職場での理解の必要性と難しさ~先天性心疾患者の私の体験から~

周囲から疾患持ちだとは全く気付かれない、元気そのものと思われるけど、実は生まれつき心疾患を持つ私。

自分自身も病気の事はあまり意識せず「一般事務」の仕事に就いたのですが、思いもしなかった体力勝負の仕事やときどき遭遇する「心臓に負担がかかる仕事」がありました。

そんな時、職場で疾患についてどう話したか?職場の反応は?どうやって仕事の調整をしたら良かったのか?自分の経験と失敗をもとにお伝えしたいと思います。

【目次】

先天性心疾患で生まれて

1歳半の時に先天性心室中隔欠損症と診断され、3歳半で根治術を受けました。その後は半年から1年ごとの定期検診を受けるだけで、投薬治療などはありませんでした。

マラソンや水泳などの激しい運動は禁止されていましたが、周囲と同じ様に学校生活や社会人生活を送っていました。そのため私自身、自分が心臓病であることをあまり気にせず過ごしていました。

しかし退職後出産し、専業主婦として生活しているときに弁膜症等の診断を受け、急遽2度目の開胸手術を受けました。2度目の手術を受けたことにより、今までの生活を「心臓病を持っている」というフィルターで見直し、改めて見えてきた不便さや配慮の必要性を伝えたいと思うようになりました。

「なりたい職業」と運動制限の壁

不採用 落ち込む

今から20年前、大学卒業を控え就職活動をしました。

教員になることを目指し教育学部で学び、小学校教員採用試験を受けようと思ったのですが、2次試験には水泳や体操の実技がありました。運動制限で水泳はできないし今までやったことがありません。

「どうしたらいいんだろう」と教授に相談しましたが、教授も私のような学生に遭遇したことが無かったのか「うーん。今までそんな相談された事ないからな・・・。1次試験に合格して2次試験を受けるときに、教育委員会に相談してみたら?」と言われました。

『もし1次試験に合格して相談して「実技試験受けられないなら受験不可能です」と言われたらショックだし、受けられても「特別配慮はありません」と言われたら、確実に不利になる』と思い、悩んだ挙句体育の実技試験のない中学校教員の採用試験を受験しましたが不合格となってしまいました。

数年前、小学校教員採用試験での実技(ピアノや体育)を廃止する流れが出てきている、という報道を目にしたときは「私の受験当時も廃止してくれてればよかったのに!」と、うらやましくも悔しい気持ちになりました。

地元の自治体の公務員試験も受けていましたが、ここでは体力測定がありました。反復横飛びや垂直とびや持久走などが行われました。実際受験し、持久走は参加できない旨を伝え体力測定に参加しましたが、代替案等は提示されず、「きっと不利になっただろうな」と思いました。その理由だけでは無いでしょうが、こちらも不採用となりました。

学校生活では、持病による運動制限について相談をするとたいていは「代わりにレポート提出」など代替案が提示され配慮を受けられたのですが(残念ながら、運動制限なしの人たちよりは低い評価になりましたが)社会に出ると配慮すら受けられないのか、と厳しさを感じました。

その後、非常勤公務員として働いている時に、自治体と協力して業務を行う団体で正規職員の募集を見つけました。職種は「一般事務」とあったので、心臓のことなど全く心配せずにすぐに応募し、ありがたいことに採用されました。

実際に働いてみたら、体力も使う!

ライター

仕事内容

社会人になり「運動制限」を意識する機会もなくなりました。通院も年に1度の定期検診だけだったので、他の人と全く同じ生活を送っていました。当時は障害者手帳の対象外でしたので、職場に心疾患について話す必要なんて無いと思っていました。

普段は総務部員として経理や労務管理など、想像通りの「一般事務」の仕事をしていて、業務はほぼデスクワークなので身体の辛さは感じませんでした。

他にも当事者団体の支援や学校の福祉養育や、ボランティアの支援などの業務も担当していました。こちらは行事のお手伝いや外での活動も多かったです。当時は「結構体力勝負だな」と思いながらも業務をこなしていましたが、2度目の手術を受け、療養中の今となっては心臓に負担のかかることは多かったと思います。

想定外の業務を担当!

毎年夏休み期間に1週間、小学生から高校生までが参加する屋外活動も引率をするという業務がありました。当時一番若手であった私も担当することに!自分の体力や心臓への不安はうっすらありましたが、自分自身が運動をするわけではないし、どうにか大丈夫だろうと思い、このタイミングでも職場の人に心疾患については話しませんでした。

しかし、準備を進めていくとプログラムの中に水泳があると知りました。これはまずい、と一緒に担当をしている先輩に、心疾患があることと水泳はできないという事を相談しました。普段、病気があるようには全く見えないため、先輩は半信半疑で戸惑っているようでした。

結局私は、業務担当はそのまま、水泳の際は水に入らず陸上でできることをする、という事になりました。実際に始まってみると、猛暑の中での活動はとても辛い!しかし、自分のことより参加している子供たちの体調に気を配らなければいけないので、休んでいる暇はありません。

子供たちに「暑いから少し休んで」と適宜声掛けをしますが、大人であり健康そうに見える私に同じ声をかける人はいません。自分で体調に気を付けながら仕事をするしかありません。しかし、一番年下で元気そうな私から言い出すことはできず、どうにかそのまま業務をやり遂げました。

これを機に、自分の心疾患について職場でオープンに話すようになりました。もともとあけっぴろげな性格なので、疾患の事を聞かれれば気軽に答えました。するとそんな性格が災いしてしまったのか「元気そうに見えるから他の人と一緒だろう」というイメージが強くなってしまいました。重いものを運ぶなど負担がかかる業務をする時に「心臓悪いんできついです」と言っても「またまた!冗談言って」と笑って流されることも。

変に心配されたり腫物に触るような扱いをされたくなかったのと、疾患を自覚するような症状がでていなかった時期だったということもあり、私自身も笑いながら冗談交じりで話しており疾患に対する理解を得る努力をしていなかったことが原因だと思います。自分から真剣に伝えなければ、配慮が必要だということに気づいてもらえない。これは当たり前のことなのかもしれません。

見えない疾患への理解は難しいけれど、伝える努力は必要!

外から見たら分からない「内部疾患」。本人も「言わなくても業務に支障が出ることはない」と思う事もあるでしょう。しかし、実際に働いてみると些細な業務で身体に思わぬ負担がかかる事もあります。そして「理解を得られない」「さぼっていると思われてしまう」「自分がちょっと無理して頑張ればいい」と誰にも相談せず1人で頑張ってしまうと、疾患の悪化を招くことも。そうならないように職場に理解してもらうことは大切です。

また私は当時1年に1度の定期検診だけだったこともあり、仕事について主治医に相談するという発想がありませんでしたが、主治医に相談し協力を仰ぐことも必要だったと思います。現在はその反省から、主治医に子育てについての体力的な相談もしています。(子供がわんぱく盛りの幼稚園男児なのですが、外遊びに付き合い過ぎると疲れて心不全になりやすいので長期休みは自宅保育ではなく預かり保育を使った方がいい、など客観的に判断してもらっています。)

自分から伝える努力をするのはもちろん、時には上司に相談する、主治医に協力を仰ぐなど、色々な協力も使って働きやすい環境を作っていきたいですね。

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先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。