睡眠不足は心臓病につながる?生活習慣を見直して病気のリスクを減らそう!

公開日 2022年9月19日 最終更新日 2023年4月21日

仕事やプライベートに追われて睡眠不足になると、心臓がドキドキしたり血圧が高くなったりした経験はありませんか?じつは睡眠不足と心臓病には密接な関係性があるのはご存じでしょうか。

特に最近十分に眠れていない人は、今後なにかしらの対策を考える必要があります。この記事では睡眠と心臓病の関係性と、よく眠るためのポイントについてご紹介します。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

心臓病とは

心臓病

そもそも心臓病とはどのような病気なのでしょうか。ここでは心臓病のおもな種類や症状について説明します。

心臓病の種類

心臓病とは、心臓の機能や構造に異常が出現することで起こる病気の総称です。心臓病にはさまざまな種類があります。

【心臓病の例】

  • 心不全
  • 不整脈
  • 先天性心疾患
  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 弁膜症
  • 心筋症

これらの病気はそれぞれ原因が異なりますが、どれも共通して心臓のはたらきに悪影響を与える可能性があります。

心臓病の症状

心臓病の症状は以下の通りです。

  • 胸痛
  • 動悸
  • 倦怠感
  • 息切れ
  • むくみ

胸痛は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患で起こりやすい症状です。

特に血管が詰まって心臓のはたらきが停止してしまう心筋梗塞は、突然死する危険性があります。心臓がドキドキしたり脈が速くなったりする動悸が起こった場合、不整脈を疑いましょう。

不整脈にも治療の必要がないものから命に関わるものまで、さまざまな種類があります。倦怠感や息切れ、むくみなどの症状は心不全で起こるケースが多いです。

心臓病の症状は、種類や個人によって差があるので「なにかおかしい」と感じたら、すぐに医療機関で診断してもらうことをおすすめします。

睡眠と心臓病の関係性

睡眠不足によって身体にどのような影響が出るのでしょうか。ここでは睡眠と心臓病の関係性について詳しく説明します。

睡眠不足になると心臓病のリスクが高くなる

睡眠不足になると、心臓病のリスクが高くなるといわれています。睡眠不足は集中力や意欲の低下だけでなく、自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスに悪影響が現れます。通常眠るときは活動する交感神経ではなく、リラックスする副交感神経が優位になりますが、睡眠不足になるとその切り替えがうまくいきません。

交感神経が優位になると「アドレナリン」という血圧を高めるホルモンが分泌されるため、夜間でも心臓の負担が大きくなります。結果的に睡眠不足が続くと心臓に異常が生じ、心不全や虚血性心疾患などの心臓病のリスクが高まるのです。また睡眠不足は心臓病だけでなく、脳血管障害や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因でもあります。

睡眠時間は8時間前後が理想とされていますが、日本人の多くはその時間を確保できていないといわれています。

睡眠時無呼吸症候群に注意

睡眠不足の原因の1つに「睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)」という病気があります。この病気も心臓病のリスクとなるため、十分に注意が必要です。睡眠時無呼吸の症状と診断方法、治療方法に分けて説明します。

睡眠時無呼吸症候群の症状

SASは、その名前の通り睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると血液の酸素の濃度が低下するため、心臓が空気を取り込もうとして血圧を高めます。

さらに寝ている途中で目が覚めやすくなり、睡眠の質が低下します。血圧が上昇すると血管に負担がかかるので、動脈が硬くなる「動脈硬化」が進行し、やがて心臓病の発症につながるでしょう。

SASの原因には、以下の2種類があげられます。

  • 閉塞性
  • 中枢性

閉塞性は、酸素の通り道である気道が塞がることで発生します。脂肪で気道の周りが狭くなりやすい肥満体型の人にみられやすいです。

中枢性は軌道に関係なく、脳の指令ミスで呼吸がうまくいかないことで発生します。脳血管障害や、心臓病を抱えている人に起こりやすいといわれています。

睡眠時無呼吸症候群の診断方法

SASは睡眠中に起こる病気であるため、起床後の自覚症状を意識してみましょう。

日中に眠気がある、起床後に頭痛がする、心臓がドキドキしているなどの自覚症状があればSASの可能性があります。同居人がいる場合は、いびきをかいているかを確認するのもいいでしょう。

実際に医療機関で診断する場合「アプノモニター」という、呼吸状態を測定する検査を行います。さらに精密な検査が必要なときは、脳波や心電図などの生体信号を測定する「ポリソムノグラフィー」という検査を行います。アプノモニターは外来で行えるのに対して、ポリソムノグラフィーは入院が必要です。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

SASのおもな治療方法には「経鼻的気道持続陽圧療法(以下CPAP療法)」があります。CPAP療法は特別なマスクをつけた状態で眠り、機械で空気を送り込む治療法です。睡眠中でも酸素を取り込みやすくなるため、無呼吸やいびきの減少が期待できます。

また気道が脂肪や扁桃体の肥大が原因で狭くなっている場合、手術で周辺を切除するケースもあります。その他にも生活習慣の指導や減量などを行い、SASを改善することも大切です。

睡眠の質を高めるための方法

生活習慣 ウォーキング

睡眠不足を改善するためには、日々の生活習慣を見直す必要があります。ここでは睡眠の質を高める方法についてご紹介します。

生活リズムを整える

毎日の生活リズムを整えると、睡眠の質は高まります。起床時間や就寝時間、食事時間を整えることで、体内時計が正常になります。体内時計が正常だと日中は活気が高まり、夜になると睡眠モードに切り替わります。

仕事の日は朝7時に起きているにも関わらず休みの日は昼まで寝ている、そんな生活をしていると、体内時計が乱れて夜に眠れなくなる危険性があるので注意が必要です。毎日の起床時間や就寝時間がバラバラな人は、まず生活リズムを整えることからはじめましょう。

就寝直前に食事をしない

就寝直前の食事は控えるようにしましょう。食後は消化のために、内臓のはたらきが活発となります。就寝前に食事をすると内臓は活発に動いているので、睡眠の質が低下します。

睡眠の質を高めるためには、就寝時の2〜3時間前には食事を終わらせて、内臓が休める状態にしておきましょう。

入浴後1〜2時間後に就寝する

入浴してから1〜2時間後に就寝すると、寝つきがよくなります。入浴直後の身体は深部体温が高い状態ですが、そのあと少しずつ熱を逃がして体温を下げます。体温が下がると副交感神経が優位となり自然に眠気が出てくるので、そのタイミングで眠りにつきましょう。

また42℃以上の熱いお風呂に入ると交感神経が高まりやすいので、40℃程度のぬるま湯に浸かることをおすすめします。

寝室の環境を整える

睡眠の質を高めるためには、寝室の環境を整えることも大切です。寝室に街灯の光が差し込んでいると、思うように眠れないですよね。

その場合は遮光カーテンを活用して、なるべく寝室を暗くするよう心がけましょう。。それでも光が差し込んできて眠れない場合は、アイマスクを使用するのもおすすめです。

ストレスを溜め込まない

ストレスを溜め込まないことも重要です。ストレスが溜まると自律神経のバランスが乱れやすく、夜でも交感神経が優位になります。その状態では良質な睡眠は期待できません。

またストレスは心臓病自体にも関係しています。心臓病とストレスの関係についてはこちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは 適切な対処法も解説!」で解説しています。

ストレスを解消する方法として、生活バランスを整える、趣味を行う、悩み相談をするなどがあげられます。夜ぐっすり眠るためにも、ストレスを溜め込まない工夫をしましょう。

睡眠の質を高めて心臓病のリスクを下げよう

睡眠不足になると心臓病のリスクが高まるだけでなく、他の生活習慣病につながる可能性があります。また睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、必ず医療機関に受診するようにしてください。

睡眠はわたしたちの健康を保つためには欠かせないものです。睡眠と心臓病の関係性を理解したうえで、生活習慣を見直して睡眠の質を高めましょう。

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5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)