先天性心疾患 出産

感じた「不安」を信じて向き合った~先天性心疾患を抱えての妊娠・出産~

公開日 2022年10月4日 最終更新日 2023年11月11日

先天性心室中隔欠損症で幼少期に手術をし、その後は普通の人と同じだと思って生活をしていました。しかし、妊娠出産を考えるときには「私の心臓は大丈夫なのだろうか」という不安がついて回りました。

「普通の人と同じ」と産科で言われたこと、でもどうしても不安が消せず転院したこと、その選択が自分の命を救ったこと…。

先天性心疾患は同じ病名でも症状や状態は人それぞれなので、あくまで私個人の経験ですが、心疾患を抱えての妊娠・出産についての体験談をお伝えします。

ライターの画像

執筆:たらこ

先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。執筆記事一覧

【目次】

妊娠・出産について、心臓の主治医にいつ相談した?

初めて主治医に相談したのはいつ?

先天性心室中隔欠損症と診断され、幼少期から定期検診で通い続けていた総合病院の小児科を18歳で卒業し、心臓血管外科に転科しました。主治医は40代後半位の男性でした。それまでは診察には母が付き添っていましたが、転科後は1人での受診です。小児科とは違った雰囲気に緊張しあまり主治医と話せませんでした。しかも、当時はなんの症状も無かったこともあり、主治医に日常生活の相談をすることはなく、妊娠や出産についての相談もしたことがありませんでした。

25歳のとき、病院の方針で「先天性心疾患は小児科で診察」という事になり、小児科に戻りました。主治医はやはり40代位の男性でしたが、小児科医だからかとても話しやすくなんでも丁寧に説明してくれました。ちょうど年齢的に将来の結婚について考え始めた頃だったので、診察時に「将来妊娠出産は可能ですか?」と聞けました。そして主治医からは、「妊娠出産は可能」と言われました。

パートナーとの結婚を考え、改めて主治医に相談

30歳のとき、結婚の話が出てくるようになりました。パートナーには先天性心疾患のことを伝えてあったので、「改めて主治医に妊娠出産について相談してくる」と伝え、主治医に相談に行きました。数年前に「妊娠出産は可能」と言われていていたのに、どこかでうっすら「心臓が持ちません」と言われたらどうしよう、という不安がありました。

そして相談の結果「心臓の状態としては妊娠出産は可能ですがフォローが必要になるかもしれないので、妊娠が分かったら必ず報告してください」と言われました。

個人産院で妊娠を確認。総合病院へ転院を希望するも…

妊娠が分かったのは個人の産院でした。

診察してくれた医師に、先天性心疾患があり総合病院を定期受診していることを伝え、そのうえで心臓への負担に不安があり総合病院で出産したいので、紹介状を書いてほしいとお願いしました。すると「心室中隔欠損はよくある心疾患。根治術が終わってるなら普通の人と変わりません。うちの病院で出産できます。」と言われました。

そうは言われても私の不安は全く消えません。なんとか医師を説得して、かかりつけの総合病院への紹介状を書いてもらいました。

紹介状をもらい、心臓の定期受診をしている総合病院の産科を受診しました。ここでも「心室中隔欠損の術後なら特に問題なく、普通に経腟分娩ができるでしょう」と言われました。しかし、30年以上「心臓に負担をかけないように」「無理をしないように」と言われ続けてきたのです。そうそう不安をぬぐいさることはできません。

翌月の小児科での定期検診で、主治医に妊娠の報告と「産科主治医からは他の人と変わらず普通に出産できると言われたけど、自分としては心臓に影響はないのかが不安だ」と伝えました。主治医からは「産科の先生とよく話し合っておくね」と言われました。

そのおかげからか、妊婦健診でさっそく産科の主治医から、「妊娠後期の血液循環量の増加に、心臓が耐えられない可能性があるため、生産期前の36週で予定帝王切開をします」と告げられました。

私は出産時に心臓に負担がかかるんだろうと思っていたのですが、妊娠中から大変な負担がかかることがわかり驚きました。そして、その負担に心臓が耐えられない、という事は…。「しつこいまでに心臓への不安を訴えて慎重になっておいてよかった。普通に妊娠期間を経ていたら」と思うとゾッとしました。

産科の主治医と心臓の主治医の間で認識が違ったのには、私自身がその時の自分の病状を詳しく理解していなかったことも原因でした。何の自覚症状も無く定期検診でも「問題無し」と言われていたので、「心臓が悪かったけど手術して治った」と思っていました。

しかし私の心臓は、弁からの漏れや弁付近の狭窄が進んでいたんだそうです。日常生活に問題が無くても、妊娠出産となったら心臓への負担は大変なものです。産科主治医からも「狭窄があるなら言ってよ~!」と言われました。
その後、妊婦健診は通常の妊婦と変わらず行われました。つわりは出産まで続き辛かったですが、大きなトラブルはなくすごしました。

心臓の検診は、妊娠前は年1~2回でしたが、2ヶごと位に増えました。妊娠中期~後期には2回ほど心エコーを受け、そのとき同時に胎児心エコーも行ってくれました。出産前に「子供も心疾患を持つ確率が、普通の人より少し高くなる」と聞いていたので、「胎児に心疾患の傾向は見られません」と言われとてもほっとしました。

ついに出産、そして産後

帝王切開手術前日に入院しました。胎児は2500グラム以下で小さいが問題なく出産できるとのことでした。当日、夫立ち合いのもと無事出産しました。出産翌日からは歩行や夜中の授乳など、他の妊婦と全く同じように過ごしました。そして予定通り産後6日で母子ともに退院しました。

子供は生まれて2日で私の主治医から心エコーを受けました。やはり心臓に問題はないとのことで、子供が心エコーを受けるのはこれで最後になりました。

産後も心臓の定期検診が2〜3ヶ月に1度と、頻度が増えたままでした。それについては「産後だから慎重に診てくれているんだろう」程度にしか思っていませんでした。しかし実際には産後2年で再度開胸手術をうけることになってしまいました…。

まとめ

自分の妊娠・出産を通して、先天性心疾患者は妊娠出産について早めに主治医に相談してほしい、と強く思うようになりました。特に10代や20代で、妊娠出産についての相談をするのは話しづらいと思うこともあるでしょう。しかし、今なんの症状もなく元気だったとしても、妊娠出産は想像以上に心臓への負担がかかります。

一見健康そうに見えると、私のように一般の産院で問題視されず「術後なら大丈夫」「よくある心疾患」と言われることがあります。これは産科に限らず他科を受診するときに経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

心臓の主治医とよく相談して産院を選んだり連携してもらう事が大事です。そして、自分の心臓の状態を理解して、それを他科(産科)の医師にも伝えられるようにしておくことも大切だと思います。

※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。

▶︎「はとらく」にキャリア相談をする

先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。