心臓移植と言われたら?登録の適応条件を解説。少しでも体調が良いうちに検査しよう!

公開日 2022年11月27日 最終更新日 2023年11月11日

重症心疾患の最終的治療法である心臓移植。

心臓移植を希望する場合、臓器移植ネットワークへの登録が必要です。登録申請に向けた検査が必要になり、検査結果により登録できない場合もあります。治療方法によっては生活が変わる場合もあるため、少しでも体調がよいうちに検査をしておくことをおすすめします。

ここでは、心臓移植登録が適応となる疾患や条件、登録の方法、日本の心臓移植の現状について実際に心臓移植希望で登録している筆者がお伝えします。

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執筆:tomo-yoshi

白血病からの薬剤性心筋症。2019年に植込み型補助人工心臓(VAD)HeartMate3を装着し、心臓移植待機中。VAD装着を機に転居した東海地方で近辺の観光を楽しむ。執筆記事一覧

【目次】

心臓移植適応の疾患と登録の条件

対象となる疾患、心身の状態、また対象から外れるのはどのような場合でしょうか。ここでは心臓移植の適応疾患と登録の条件を解説します。

心臓移植が必要となりうる疾患

心臓移植の対象となる主な疾患は以下の通りです。

  • 特発性心筋症(拡張型心筋症、拡張相の肥大型心筋症、拘束型心筋症)
  • 虚血性心筋症(心筋梗塞や虚血性心筋症)
  • 心筋炎後心筋症、サルコイドーシス、薬剤性心筋症、心臓弁膜症
  • 先天性心疾患(外科的に修復不可能な場合)
  • その他(日本循環器学会および日本小児循環器学会の心臓移植適応検討会で承認する心臓疾患)

心臓移植の適応条件

心臓移植の対象となる適応条件は以下の通りです。

  • 1. 不治の末期的状態にあり、以下のいずれかを満たすもの
    ・薬物療法やペースメーカー、機械的補助循環等、従来の治療法で改善しない
    ・長期間、又は繰り返しの入退院が必要
    ・いかなる治療法でも無効な致死的不整脈がある
  • 2. 年齢65歳未満(60歳未満推奨)
  • 3. 本人と家族の十分理解と協力が得られること

心臓移植を受けられない条件

心臓移植登録の申請に向けた全身の検査の結果、心臓移植を受けられない場合もあります。

登録を除外されるのは以下のような場合です。

  • 回復の見込みのない腎臓・肝臓の機能障害
  • 活動性感染症(結核・肺炎、感染性心内膜炎、敗血症等)
  • 肺高血圧症(条件あり)
  • 薬物依存症(アルコール性心筋疾患を含む)
  • 性腫瘍(完全寛解から5年を経過していること
  • HIV抗体陽性

参考:心臓移植レシピエントの適応基準 | 一般社団法人 日本循環器学会 /移植について|心臓|臓器移植Q&A|一般の方|一般社団法人 日本移植学会

心臓移植適応が認められなかったら

心不全治療を継続するか、緩和ケアに移行するかを決定します。

心不全治療を継続する場合、紹介元病院への転院を検討するのが一般的です。移植除外条件の疾患に対する治療を継続し、回復した場合、再度心臓移植の申請を検討する場合があります。

緩和ケアに移行する場合、自宅療養か、緩和病院での入院を検討します。

心臓移植希望登録の手続きと費用

心臓移植を希望する際の登録の手続きは、以下の流れで行います。

  • 1. 普段通院している病院から、移植施設(病院)へ紹介。移植施設一覧:日本臓器移植ネットワーク
  • 2. 移植施設で適応の検査。検査は、期間にして1〜2ヵ月かかる場合がある。
  • 3. 検査の結果から、各施設内検討会、および日本循環器学会心臓移植委員会適応検討小委員会の2段階審査を経て公式に適応を決定する。
  • 4. 本人および家族のインフォームドコンセントを経て、移植施設より日本臓器移植ネットワークへ登録。
  • 5. 登録料払い込みをもって登録完了。新規登録料3万円、年1回の更新料は5千円。住民税非課税世帯は手続きにより免除される。
  • 6. 登録が完了すると、1か月程度で、「臓器移植希望手続き完了のお知らせ」、「臓器移植希望登録証」、「臓器移植患者登録証明書 兼 患者負担金領収書」が送付される。

心臓移植の申請~待機期間の治療

窓口

心臓移植申請の間、また、心臓移植登録後の待機の間にも、治療の必要があります。

機械による循環補助治療として、大動脈バルーンパンピング法や経皮的人工心肺補助装置、インペラ、体外設置型補助人工心臓などがあります。これらは入院してベッド上安静が必須です。

また植込み型補助人工心臓と呼ばれる体内にポンプを植込む治療法もあります。この治療法をうけると心臓移植を待つ間に退院することができ、自宅で療養することも可能です。

植込み型補助人工心臓は、心臓移植までの橋渡し的治療(BTT:Bridge to transplantation)の場合のみ保険適用されていましたが、2021年には、長期在宅補助人工心臓治療(DT:Destination Therapy)として保険適用されることになりました。

これにより、65歳以上で心臓移植適応とならなかった場合も、植込み型補助人工心臓を装着して退院、自宅で過ごせるようになっています。

参考:植込型補助人工心臓DT実施基準 : 補助人工心臓治療関連学会協議会のウェブサイト

日本の心臓移植希望登録の現状

入院 手術

心臓移植の希望登録者数は、2022年9月現在で、910 件です。

対して、脳死下の臓器提供の夜移植数は、2022年1月から9月で59件です。

移植希望登録者のうち、5年以上の待機(心臓移植を待っている)が、234件と全体の1/4を占めています。

心臓移植の登録は、心身に余裕があるうちに

医師から「心臓移植」と言われたら、心身や体力に余裕があるうちに検査に行くことをおすすめします。検査のなかには胃カメラや肺の検査など身体に負担のかかる検査もあるためです。また、植込み型補助人工心臓には、さまざまな条件や制限があり、今までの生活や就労を続けられない場合があります。

心臓移植希望の登録後は、長い待機期間になる可能性が高いでしょう。そのため家族のサポートを受けながら、移植後の目的や希望を持ちながら、待機期間を乗り越えなければなりません。

患者会に入ったり、患者仲間を見つけたりすることも有益です。VADの生活に関する情報が得られたり、先に移植を迎えた人の姿から励まされたり、勇気を与えてもらったりすることができます。

移植の日や移植後の生活に備えて体調を整えておくのはもちろん、運動をして筋肉をつけておきましょう。手術による筋力の衰えをカバーするとともに、頂いた臓器を大切にし、その後の充実した人生を生きていくためにも大切です。

私は心臓移植希望で登録している身ですが、改めて「臓器提供」の意思表示をしました。成人以降、病気入院が多かった私の臓器が使い物になるわけがないと思い、特に意思表示をしていませんでした。意思表示は、運転免許証、被保険者証、マイナンバーカードに記載する箇所があります。まずはご家族で話し合ってみてください。

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白血病からの薬剤性心筋症。2019年に植込み型補助人工心臓(VAD)HeartMate3を装着し、心臓移植待機中。VAD装着を機に転居した東海地方で近辺の観光を楽しむ。