分かってほしいけれど差別は嫌!目に見えない病気や障害はオープンorクローズのどちらにする?

公開日 2022年11月29日 最終更新日 2023年11月8日

目に見えない内部疾患を持っていると、周囲に公表すべきか、隠しておくべきか悩んでしまうもの

持病をオープンにするか、クローズにするかは個人の自由であるからこそ、それぞれのメリットやデメリット、当事者である筆者の経験などを参考に、心が楽になれる選択を選んでほしいです。

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執筆:古川 諭香

フリーライター。単心室・単心房のため3度の手術を経験。根治は難しいものの、フォンタン手術後、日常生活が普通に送れるように。愛猫の下僕で本の虫でもある。(Twitter:@yunc24291)執筆記事一覧

【目次】

シチュエーションによってオープンorクローズを検討

目に見えない病気や障害は伝えないと理解がなされない反面、公表すると驚かれたり、自分を見る目が変わってしまったりするのではないかと怖くなったりしてしまうこともあります。

そのため、オープンかクローズ、どちらにすべきか悩んだときはシチュエーションごとに、どういったメリット、デメリットがあるのかを考え、決断を下すのも、ひとつの方法です。

職場でオープンにした場合のメリットとデメリット

オープンにした場合のメリットとデメリット

オープンにすると障害者雇用となり、周囲からの配慮が得られやすくなるのが大きなメリットです。たとえば、定期的に通院している場合は休みが取りやすくなり、体力的に厳しい業務がある場合に申し出やすくもなります。

その一方、給与が低い、当事者のスキルによっては選べる職種が限られるなどのデメリットがあります。また、オープンにしながら就職活動をすると、面接の段階で内部疾患を正しく理解されず、採用されにくいと感じることも少なくありません。

クローズにした場合のメリットとデメリット

面接の段階からクローズにすると、障害者雇用ではなく、一般雇用となるため、選べる職種が広がったり、採用されやすかったりといったメリットがあります。障害者雇用よりも一般雇用のほうがキャリアップしやすく、高い給与が見込めるのも大きなメリットです。

ただし、通院の日程調整が難しく、与えられた業務が体力的に厳しくてもこなさなければならないなどの不便が生じる可能性があります。

また、年末調整のときに障害者控除が受けられない、障害者であることが発覚した場合、会社と揉めてしまうなどの危険性もあることを知っておく必要があるでしょう。

私が実際に選んだのは「オープンにして働く」

筆者は障害者であることをオープンにしながら、就職活動を行っていました。しかし、日常生活が普通にできると言っても、面接官に信じてもらえず、なかなか採用されない日々が続きました。

そんなとき、バイト先のコンビニでスカウトされ、家族経営の会社に入社。働く前に障害があることを伝えましたが、障害者雇用ではなく、一般雇用で採用されたため、給与面で不満を感じることはありませんでした。

実際に働いてみると、オープンにしてよかったと感じることは多くありました。たとえば、心疾患を持っていることを周囲が理解してくれているので、重いものを持つなど、体力的に厳しそうに思えることは、初めから任されなかったことがありがたかったです。
また、面接の段階で月に1回、通院のために休みが必要なことを話せたため、休みが申告しやすかったです。

そして、仕事中だけでなく、飲み会時にアルコールを勧められたとき、心疾患があるからあまり飲めないと正直に言えたことも、個人的にはオープンにしてよかったと思えた大きな理由でした。

プライベートではオープンorクローズのどちらにすべき?

オープンにした場合のメリットとデメリット

オープンにすると、「障害者」という先入観を持たれるというデメリットがあります。また、どんな関係性の人にまで病気をオープンにしようかと考え、苦しさを感じる人もいるでしょう。

ただ、オープンにすると同じ病気の仲間と出会いやすいというメリットがあります。オープンにしたいけれど、周囲の反応が怖いと思う方はSNSなど匿名でも楽しめる場から少しずつ慣らしていくのもよさそうです。

そうした場では心無いことを言われることもあるかもしれませんが、同じ病気で悩む仲間と出会いやすくなり、また病気の周知に貢献できます。最近では病気をオープンにして仕事に繋げている人も多いので、そうした働き方を目指すのも、ひとつの方法です。

また、恋人となる人にカミングアウトをしておけば、サポートを頼みやすくなります。個人的に、恋人に伝える場合は早めに伝えるのがおすすめ。関係性が深まる前であれば、相手も受け入れやすく、「障害者と結婚する」ということをじっくりと考えてもらえます。

クローズにした場合のメリットとデメリット

なんといっても、「障害者」という先入観を持たれないのが、クローズにした場合の大きなメリット。障害者に向けられやすい「かわいそう」という視線を浴びない、「障害者の○○さん」ではなく、単に「○○さん」として見てもらえるので、生きやすいと感じる人も多いでしょう。

しかし、急な体調不良や疲れやすい、体力がないなどの特性を理解されにくいため、無理をしながら人付き合いをしなければならないこともあります。

なお、恋人にクローズにし続けるのは、避けたほうが無難。結婚の話が出たタイミングで、カミングアウトせざるを得なくなります。付き合いが長くなればなるほど、カミングアウトのタイミングが遅いと、相手の中では「なぜ言ってくれなかったのか」という寂しさや戸惑いが大きくなることもあるので注意が必要です。

クローズ派だった私はオープンになった

筆者は親が障害を隠す方針であったため、20代半ばまでは持病を公表していませんでした。「かわいそう」という視線を向けられたくない、障害者というレッテルを張られたくないと思っていたため、昔からの友人や長い付き合いになりそうな恋人にだけカミングアウトをしていました。

けれど、同じ病名の人となかなか出会えず、情報交換ができない状況を歯がゆく思い、あまり人目につかないメディアプラットフォームにて持病を公開。そこで、名も知らない人から持病を受け入れてもらえたり、自身の心疾患である単心室・単心房症を理解してもらえたりしたことから、オープンにしたほうが自分は生きやすいと気づき、隠さなくなりました。

ちなみに、恋愛では最初は持病があることを告げず、付き合って1ヶ月くらいのタイミングでカミングアウトしています。それは、まず障害を除いて、人となりを見てもらいたいという思いがあるからです。

ただし、筆者は持病が理由で妊娠・出産はできないので、お互いが辛くならないよう、「子どもが欲しい」など自身が絶対に叶えられない未来を求める相手とは付き合わないようにしています。

自分の心が楽になる選択をすることが一番大切

内部疾患をオープンにするか、クローズにするかは当人次第。筆者は、当事者の心が楽になり、生きやすいと感じるのであれば、どちらの選択をしても正解だと思っています。

目に見えない病気を持つ人は、オンオフともに持病を公表するか否かの選択を迫られることが多いものですが、そうしたときはオープンとクローズ、両方に生じるメリット、デメリットを長い目で見て考え、どういった選択をしたら考え、自分が心から納得できる答えを下してほしいです。

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フリーライター。単心室・単心房のため3度の手術を経験。根治は難しいものの、フォンタン手術後、日常生活が普通に送れるように。愛猫の下僕で本の虫でもある。(Twitter:@yunc24291)