公開日 2022年12月13日 最終更新日 2023年11月11日
「(生まれてくる)お子さんの心臓に重大な病気がある可能性があります 」「お子さんの病気は予断を許さない深刻な状況です。」
喜びの妊娠・出産・子育てのはずが、医師から告げられた言葉。
誰しもが、頭の中が真っ白になり、何をどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。
この記事は、お子さんとそのご両親がよりよい人生を過ごせるように、病院内での経験を踏まえ、臨床検査技師の立場から、子どもが心臓病を抱えるときに親が意識したい対応を紹介します。
執筆:齊川 祐子
臨床検査技師 国立大学病院,市民病院,先天性心疾患を多く手術するこども病院などに勤務。心臓関連検査(心電図,心エコーなど)や,神経関連検査(脳波など)に従事した。趣味はバードウォッチング。モットーは心穏やかに日々暮らすこと。執筆記事一覧
【目次】
- 1.子どもの病気と向き合うために―専門医 の説明をよく聞こう
- 2.小児循環器医の説明をよく聞いて、現状を理解する
- 3.治療を乗り切るためのさまざまな支援を探す
- 4.親自身のことも大切に
- 5.病気の治療の目途が立ったら
- 6.兄弟・姉妹がいたら配慮が必要
- まとめ
1.子どもの病気と向き合うために―専門医 の説明をよく聞こう
お子さんの病気について説明してくれるのは、小児循環器医ですか?
先天性心疾患の診断や治療については、病状に個人差が大きく、小児循環器医でないと判断が難しいケースが少なくありません。また、手術ができる病院も限られています。小児循環器医の診断を受けるのがよりよい治療につながると考えられます。
産科医や一般の小児科医だったら、まず専門医を紹介してもらいましょう。またセカンドオピニオンを受けることも可能ですので、担当医とよく相談することが大切です。
2.小児循環器医の説明をよく聞いて、現状を理解する
病気や治療方法について理解を深めましょう。医師の説明に出てくる病名や手術方法についてなど、わからないことが多いと思います。わからないことは、遠慮せずに担当医に説明してもらいましょう。
小児期の心臓の病気は複雑で、同じ病名でも個人差が大きいので、お子さんの状態を理解してください。
医師の説明には、リスクの説明も行われるためにマイナーな気持になりがちですが、どんな場合でも医師はお子さんの最善を考えて治療法を提示してくれます。
それぞれの病気や治療などについては、小児循環器学会の公式サイトでわかりやすく説明されています。
3.治療を乗り切るためのさまざまな支援を探す
治療を乗り切るためには、適切な支援を受けることも大切です。ここでは治療を乗り切るために確保しておきたい2つのことを紹介します。
入院・治療の際の手助けを頼める人を確保する
病院内では、治療に関することは医療従事者からの十分な支援を受けられます。しかし、病気が分かってから治療が終わるまで入退院を繰り返すことや、通院の頻度が高いため、ご両親の負担は多くなるでしょう。
そのため、両親の親やサポート団体などに相談して物理的、精神的に手助けをしてくれる人を確保しましょう。
社会保障制度や支援について調べる
心臓に病気のあるお子さんや家族に関係する制度や支援は、複雑で非常にわかりにくいことがたくさんあります。
どの制度も、申請をしないと支援を受けることができないため、まずは病院のケースワーカーなどの支援員に相談しましょう。またご自身でも判断ができるように調べることが大切です。
自宅から離れた病院での入院治療を受けるための家族が使える宿泊施設が用意されている場所もあります。
患者会やSNSなどから情報を得る
心臓病の治療を受けた子どもを持つ親の患者会、当サイト『はとらく』にある患者さん自身の体験に基づく情報も活用してみましょう。
個々の病状は異なるものの、手術や治療の経過が見通すことができ、“今だけ”ではないことが分かります。
4.親自身のことも大切に
子どもの治療を続けるためには、親も自分自身を大切にすることが大切です。周囲の理解を得ながら自分の時間を確保しましょう。
自分の心を健やかに保つ
ご両親、あるいは母親一人で抱えずに、ご家族、医療スタッフ、心を許せる友人などに積極的に協力をお願いしましょう。
治療は長く続きます。山あり谷ありの経過をたどることも稀ではありません。体と心を健やかに保つために、我慢せずに援助を受けましょう。
近しい人に気持ちを話して聴いてもらったり、病院や家庭から離れて1人になる時間を作ったりすることができれば、ずいぶんと気持ちが休まるでしょう。また、病院の周りを散歩したり、外の景色を眺めることで、気持ちが切り替わることもありますよね。
病室を離れることができないときは、お気に入りの雑誌や本をながめたり、音楽を楽しんだり、病院の許可があればアロマを楽しんだりすることもできます。最近は院内Wi-Fiが整備されている病院も増えてきています。インターネットの使用などについて、遠慮せず病院スタッフに確認するとよいでしょう。
自分の仕事・人生を考える
お子さんの治療は長くかかることも多く、親には入院・通院などさまざまな負担がかかります。仕事をしている方は仕事の継続について悩むこともあるでしょう。
どちらか一方が仕事を辞めて子どもの治療に専念することで、気持ちや時間に余裕ができて落ち着いた事例や、さまざまな社会的、さまざまな支援を受けて仕事を継続している事例もあります。
両親自身にとってもかけがえのない人生、後悔しないように選択していきたいですね。
5.病気の治療の目途が立ったら
病気の治療の目途が立ったとき、今後の治療に備えてどのようなことを意識すれば良いのでしょうか?準備すべきことはいくつかありますが、まずは、次の3つのことを行いましょう。
医師からの説明文、治療の経過などの資料は全て保管する
お子さんは自分が受けた治療のことを記憶していません。同じ病名でも個人差が大きいことや、治療を受けた年代、病院などにより治療法が異なることもあります。成長に従って受けた手術や治療による影響が出てくることも多く、後々の診断に手術記録など正確な資料や記録が必要です。
例えば、「心臓に穴が開いていて手術した」「心臓の弁の調子が悪くて手術した」程度の記憶では、診断の時に情報不足になりがちです。
子ども自身が、病気を理解し、体調管理ができるように促す
子どもの成長に合わせて、将来を見据えて子ども自身が病気を理解し、体調管理ができるようにしていくことが必要です。病気に負けない気持ち、子どもが自分を肯定的に捉えられるようにしたいですね 。
長野県立こども病院では、外来受診の際にお子さんに宿題が出て、病名を言えるように練習します。さらに、年齢が進むと、医師のスケッチをまねて自分の心臓のスケッチが描けるように練習しています。 また、「ちるくまハートカード」が用意されていて,内服薬やAED使用、かかりつけ医の情報や、日常生活における制限などを記入するようになっています。
6.兄弟・姉妹がいたら配慮が必要
両親が病児にかかりきりになることが多く、兄弟姉妹は我慢を強いられています。その子たちの気持ちも大切に対応しましょう。
お子さんは病院での面会もできないことが多く、何が起きているのか実感できないままでいることがあります。年齢に合わせて今の状況を説明することで安心するでしょう。
また、短い時間でもいいので子どもと1対1で向き合う時間を確保することで、心が解放されるきっかけになるようです。
参考:きょうだいさんのための本
まとめ
子どもに深刻な心臓の病気が見つかった時のご両親の心痛は計り知れません。これから子どもはどうなってしまうのかという心配でいっぱいでしょう。
「手術や治療はうまくいくのだろうか」「きちんと育つのだろうか」さらに、原因について自責の念を持ち、悩んでご自身を責めたりすることも多くあるようです。
経済的なことも心配ですよね。自分の仕事はどうしたらいいのだろう等々心労はつきません。
それらのことを、自分たちだけで解決するのは困難です。周囲の助けを積極的におねがいして、さらに社会保障制度を有効に活用しましょう。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。