心臓 心電図

心不全の分類ってなに?最新の心不全の分類を徹底解説

公開日 2023年1月26日 最終更新日 2023年4月21日

心不全は原因や症状、検査データなどによって重症度や程度が分類されています。本記事では、国内外の心不全の診断・治療に用いられる心不全の分類を現役看護師がわかりやすくまとめました。

心臓病患者さんとそのご家族の方や、心不全の分類について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

【目次】

心不全の分類方法

心不全の分類方法は、心臓カテーテル検査などのデータから分類するもの、患者さんの症状から分類するものまで多岐にわたります。そのうち、代表的な5つを紹介します。

Forrester 分類(フォレスター分類)

心臓のカテーテル検査で得られる血行動態指標(肺毛細血管楔入圧、心係数)をもとに、心不全の重症度を分類する指標です。心臓カテーテル検査をおこなわないと判断できない分類で、慢性心不全の分類には向いていません。

出典:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

Nohria-Stevenson分類(ノリア・スティーブンソン分類)

血液の流れが悪くなったときに現れる低還流(ていかんりゅう)所見と、うっ血所見から心不全の状態を4つに分類します。
今後心不全がどのように進行していくかという予後の予測や治療方針を決めるために用いられます。

Forrester分類とは異なり、患者さんの身体に負担になるような検査は不要で、慢性心不全の患者さんにも有効に活用できる分類です。

出典:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

Nohria-Stevenson分類のAは比較的軽症です。BもしくはCに分類された患者さんに短期間で亡くなる方が多いといわれています。Lに分類される患者さんは少なく、末期の拡張型心筋症が該当します。

ACCF/AHAの心不全ステージ分類

アメリカ心臓病学会(AHA:American Heart Association)が定めたもので心不全がどの程度進行しているかを分類するものです。ステージAは、軽症で心臓の病気はありませんが心不全になる危険性がある状態です。

ステージBでは左室肥大や心拡大、心機能の低下、弁膜症、心筋梗塞の既往などの心臓病の病気を抱えるようになります。しかし、心不全の症状はありません。

ステージCでは、心臓の病気が影響して拡張不全や収縮不全がみられるようになります。むくみや息苦しさなどの自覚症状があり、薬や心臓カテーテル・手術などで心不全の軽減を目指します。ステージDは安静にしていても心不全の症状が良くなりません。入院する回数も増え、緩和ケア・ホスピスについて考える時期になります。

出典:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

NYHA 心機能分類

NYHA心機能分類はアメリカのニューヨークにある心臓協会(New York Heart Association)が作成した分類です。日常生活などの身体活動でどのような自覚症状があるかによって、心不全の重症度を4段階に分類したものです。

Ⅱ度の患者の範囲が広いため、最近ではⅡ度をⅡS(slight limitation of physical activity)とⅡM(moderate limitation of physical activity)の2つに細分化しています。今回はⅡ度・ⅡS度・ⅡM度それぞれについて記載しました。

分類 定義 自覚症状
身体活動に制限のない疾患患者 日常生活における身体活動では、疲労・動悸・呼吸困難や狭心痛が起きない。
身体活動に軽度制限がある心疾患患者 安静時には症状がない。日常生活における身体活動で、疲労・動悸・呼吸困難や狭心痛が起きる。
Ⅱ S 身体活動に軽度制限のあるもの 同上
Ⅱ M 身体活動に中等度制限のあるもの 同上
身体活動に高度制限がある心疾患患者 安静時には症状がない。日常生活以下の身体活動で、疲労・動悸・呼吸困難や狭心痛が起きる。
いかなる身体活動をおこなうにも症状をともなう心疾患患者 安静時にも心不全や狭心症の症状が存在し、身体活動によって症状が増悪する。

出典:NYHA分類 循環器用語ハンドブックWEB版

クリニカルシナリオ(clinical scenario; CS)分類

収縮期血圧とそのほかの所見から急性心不全の程度を把握し、すぐに治療を開始できるように提唱された分類です。

その理由は、急性心不全は初期治療が患者の予後を左右するといわれており、病院に来てから90~120分以内に治療が開始できることが重要だからです。

出典:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

新しい心不全の分類

2021年にアップデートされた日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインでは、LVEF(左心駆出率)という心臓から全身に血液を送り出す力に着目した以下の分類が提示されています。

  • 検査施行時のLVEFによる心不全の分類
  • LVEFの経時的変化による心不全の分類

最近の研究ではLVEFの変化が、患者さんの予後と大きく関連していることがわかってきました。冠動脈疾患や虚血性心疾患だけでなく、拡張型心筋症などの心筋疾患の患者さんでも活用できるのもこの新しい分類の特徴です。

まとめ

心不全にはさまざまな分類があります。患者さんからすると心不全の分類は種類も多く、少し難しくて、わからないことも多いかもしれませんね。大切なことは分類を理解するのではなく自分の心臓は今どのような状態で、今後心不全が進行するとどのような症状が現れる可能性があるかということです。

心不全の治療のために日常生活や仕事、飲食の制限などが必要になるケースも少なくはないでしょう。しかし心不全は徐々に進行し、あなたの心臓にダメージを与えてしまう病気です。

はとらくのお役立ちコラムを参考に、心臓病や心不全について正しい知識を持ち病気と共に自分らしく生きていきましょう。

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大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし医療ライター・監修者として活躍中。https://odaakari.com/