いざ病気になったときどうするべきか。不安との向き合い方

予期せず病気になってしまい、この先どうなるのだろうかと不安を抱えている患者の皆さん。その気持ちを家族にぶつけることもできず、医師や看護師に打ち明けることもできず、一人で抱えていませんか? 同病の人と話をしても、本音は言えないものです。私も一人で悶々とした思いを抱えていました。今でもそうです。

病気になって不安を感じるのは当然です。しかし、不安に押しつぶされては元も子もありません。この先も生きていくために、自分の考え方や生き方を改めて見つめ直し、必要であれば変えていくことで、再スタートを切るしかないと考えます。

私の場合、白血病、心筋障害、脳梗塞を経て、今は心臓移植を希望しており、30年来の病気との付き合いです。その経験から得た、元来ネガティブで小心者の私なりの「不安との向き合い方」というより「不安な気持ちをどうにか逸らす方法」を紹介します。

【目次】

原因を探さない

「なぜ私が、こんな目に合うのだろうか? 私の何が悪かったのだろうか?」。そうやって原因を探しても、自分を責めても、病気になった事実は変わりません。理由を見つけたからといって、病気が治ることはありません。病気になったばかりの頃の私はいつまでも納得できず、理由を探し出すことに熱心でした。

そんな時、ヴィクトール・フランクルの講演録集「それでも人生にイエスと言う」(春秋社発行)を読み、感銘を受けました。「そもそも我々が人生の意味を問うてはいけません。我々は人生に問われている立場であり、我々が人生の答えを出さなければならないのです。」

病気になった意味や理由を問うのではなく、病気になってそれでもどのような人生を生きるのかを問われているのだと解釈しました。この言葉は常に私の心にあります。

今できることにフォーカスする

今の自分にできることに目を向けましょう。

入院中の私の場合、病院の食事に感謝して、毎日残さず食べることから始めました。完食することが、早く退院できることに直結するのか、といった確かさは関係ありません。それを決めた自分を信じて、実行し続けることです。

もう1つは、機嫌よくいられることをする、ということです。病気になると社会に置いていかれるような焦りを感じますが、焦っても病気は治りません。自分の気持ちと体が離れていくだけです。

特に入院中は制限が多いもの。可能な範囲で好きなことをして、気分よく過ごしましょう。テレビを見る、ゲームをする、好きな本やマンガを読むなど、なんでもいいのです。少しぐらい自分を甘やかしてあげるのもよいでしょう。

絶対はないことを知る

数十年前、白血病の再発率を尋ねると、医師は50%と教えてくれました。(実際は、白血病の完全寛解率は65歳未満で80%、5年生存率は50%前後となっています。)

「確立は1/2。生き残る方の一人になればいい。私は絶対再発しない」と勝手に心に決めました。発病から3年後、まんまと再発。「ああ、絶対はないんだな」と現実を知りました。「絶対治る」と心に決めたとしても、そうならないかもしれないという、現実を冷静に見る目を持つ必要があります。だからこそ、医療を信頼し良い関係を築き、最前の治療を最高のコンディションで受けたいと願うのです。

絶望したとしても、まだ生きている

白血病の再発の治療には、造血幹細胞移植を行います。しかし、私の場合、骨髄バンクに登録しても適合者は現れませんでした。「このまま死ぬのかもしれないな」。無菌室のベッドの上で、初めて死を意識しました。再発直後で「絶望」というには早すぎるのですが、「死ぬのかな」と思った瞬間、そこで「まだ生きている自分」を発見しました。

心不全が酷く(BMP1800 。これは寝たきりレベルです)、「死んだほうが楽になるのかな」と思ったこともあります。呼吸すること自体が苦しいのに、生きるためにまた息を吸います。この矛盾が可笑しくて、「ああ、私はただ生きたいだけなんだ」と気づかされました。この時から、無理にがんばる生き方をやめて、楽に生きられる方へ舵を切りました。

※BMPとは、心臓に負担がかかると分泌されるホルモンで、「心不全」を診断する上で有用な指標になっています。正常値は18.4pg/ml。500pg/mL以上になると重症な心不全の可能性がきわめて高くなります。

病気を忘れるくらいの何かを見つける

白血病再発後で治療もできずにいた頃、私は母と二人暮らし、短期のアルバイトをしていました。そんなとき、「母の死」を迎え、私は病人でいられなくなりました。正規の働き口を見つけ、一人で生計を立てていかなければなりません。

再発後の治療なしで寛解、再再発なしでほぼ完治まで至った理由は、「母が自分の死とともに私の病気を持っていってくれたのだな」と思っています。私のようなネガティブな状況は自分から望むべきことではありません。できればポジティブな「何か」を見つけてください。

私にとってポジティブな「何か」は、骨髄バンクの普及啓発活動でした。私には骨髄移植のチャンスはありませんでしたが、もっと社会に知ってもらう必要があると思い、ボランティア団体を立ち上げました。その活動をきっかけに就職が決まり、補助人工心臓(VAD)を入れた今もそのときのご縁で働くことができています。目の前にある、自分が無理せずできることを実行したことで道が開けていきました。

自分の力でどうにもならないことは目標にしない

不採用 落ち込む

心臓移植登録をした当初、1日も早く心臓移植を実現させて、自由になりたい、独立したいと焦っていました。移植は基本、血液型や体のサイズ等の条件が適合した上で、登録順と緊急度によって決まります。登録したばかりの私に順番が回ってくるはずがないのです。

分かっていながらも、早く早くと焦る気持ちに振り回されていました。

大切なことは、「目標は遠すぎず、近すぎず」です。

「心臓移植を一日も早く実現する」という自分ではどうすることもできない目標はやめて、目標をグッと自分に近づけて「移植をベストな状態で迎える」ことに変えました。そのために、どのように生活していくのが良いのかを考え、具体的に実行しています。

例えば、

  • 太らないための運動と食事の注意
  • 移植後の順調な回復を目指しての筋トレ
  • 補助人工心臓の刺入部の衛生管理
  • 他の病気にならない
  • 充分な水分摂取
  • 移植とその後の生活に備えてお金を貯める

等です。

それでも、いつになるかわからない移植を待つという現実に、「いつまで待つのだろうか? 気持ちを保っていられるだろうか」ともやもやして、落ち込むときもあります。

そんなときには、紙に書いた目標を見て、決意を再認識しています。一目で分かるように絵にして、よく目にする場所に貼っておくのがポイントです。絵は下手ですが、自分が分かればいいので気にしません。

この時私にヒントをくれたのは、ロバート・フリッツ氏のメソッド「創造プロセス」です。参考図書として、「自意識と創り出す思考」「Your Life as Art 自分の人生を創り出すレッスン」(Evolving社発行)等を紹介します。

番外編~患者から家族へのお願い

付き添いや面会時、患者には元気な顔を、笑顔を見せて、エネルギーを分けてください。患者本人が辛いだろうから、自分だけ楽しそうにしてはいけないなどと思わないでください。

私にも、「お母さん、溌剌としてきれいな人ね」と看護師さんに言われて嬉しかった思い出があります。患者にとって、自分の病気のせいで家族が暗い顔をしているのを見るのは辛いものです。家族には明るい気持ちでいてほしいと願っています。

最後に

私なりの「不安な気持ちを少しでも逸らす方法」をお伝えしましたが、これは、今、補助人工心臓(VAD)を装着しているために全身の状態は改善しつつあり、自宅療養している者の視点です。

私がお伝えしたことが何か一つでもプラスの情報になればとも思いますが、一方、同じ病気でも症状や状態は人それぞれ違うように、皆さんそれぞれに信念や大事にしているものがあるはずです。ご自身なりの「不安への向き合い方」を見つけて頂ければと思います。

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白血病からの薬剤性心筋症。2019年に植込み型補助人工心臓(VAD)HeartMate3を装着し、心臓移植待機中。VAD装着を機に転居した東海地方で近辺の観光を楽しむ。