公開日 2023年8月1日 最終更新日 2023年11月11日
前回、リハビリ勤務という復職の方法を紹介しました。
その中で、復職するときに、職場と相談するときの1つの目安として心肺運動負荷試験(以下、CPX)の結果を提示したことについて触れました。
今回は、当時の経験をもとに、私が復職に向けて職場からの理解を得るためにしたことについて、紹介していきたいと思います。
執筆:kazumi
先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。執筆記事一覧
【目次】
CPXでわかること
CPX検査は、運動負荷検査の1つです。
CPXの意義は、
- ①労作時呼吸困難や運動制限の原因の検索
- ②最も信頼できる運動耐容能の客観的指標として、手術適応の決定、予後予測、治療効果の判定
- ③心リハ・運動プログラムにおける運動処方の決定
となっています。
出典:2021年度改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
そして検査結果をもとにした運動指導報告書という用紙をもらいます。
その報告書には、検査結果と運動指導が書かれています。結果にはAT(嫌気性代謝値:無酸素運動の切り替わる値)での負荷量やMETs(運動の強度を示す指標)、心拍数その中の運動指導の欄から、<運動の目安>に負荷量、心拍数、収縮期血圧があり、<運動の頻度>という項目があります。
METsとは、身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当するとされています。
【METsの目安】
- 1.5:車の運転、軽度のオフィスワーク
- 2.0:更衣、セルフケア、シャワー
- 2.5:軽度の掃除、ストレッチ
- 3.0:室内の掃除、階段の降り、普通歩行(67m/分)
- 3.5:掃除機、軽い荷物を運ぶ
- 4.0:通勤、車椅子を押す
私の場合は<運動の目安>は負荷量32W、心拍数97bpm以下と記されてました。合わせて、METsは3でした。
この結果をどう活用したか
私の場合、仕事が医療職ということもあり、心拍数やMETsを伝えることである程度イメージしてもらえました。その上で改めて、具体的にどのようなことが難しいことが予想されるかを職場に提示しました。
上の表にあるように、METs3となると「屋内の掃除の掃除、階段を下りる、普通歩行(67m/分)」となっています。そのため、重いものを持つのは控えたいこと(息を止めて力を入れるようなことはしない)、走ることや階段を昇ると息切れがするため控えたいこと(夕方まで体力が持たない)を伝えました。このMETs表があると、日常生活で、どの活動がどのくらいの負荷になっているのかが、誰でも分かるようになっているので、医療知識がない人でも参考になります。
また、脈拍については、実際動いてみて、自分でも把握しやすい指標となります。今はスマートウォッチで直ぐに分かるため、管理しやすいと思います。私もリハビリ勤務時は自分の状態を把握するために装着しながら仕事をしていました。仕事柄、スマートウォッチをしながら業務にあたれないため、その意味でも患者さんに直接関われないリハビリ勤務時の時間を自分の身体を把握するため有効に時間を使えていました。
負荷量については、自分でトレーニングをする時に参考にしていました。客観的な数値を見ながら、実際に感じた部分と擦り合わせて、自分ならどこまでやれるかを把握しながら復職のためのトレーニングをしてきました。
総合的に、上司や同僚も納得して、私に仕事を任せてくれたりしていました。
私の場合、METs3は普通の歩行が可能で、掃除までは行かない運動強度となっていたので、職場では患者さんや利用者さんが一人で歩ける方や一人で車椅子へ乗降できたりする方に理学療法士として対応できるようにしてもらいました。
また、階段での移動は大変なため、ワンフロアで休憩場所のある職場配置になったりと、さまざまな配慮をしていただきました。
しかし、私だけに配慮される環境に、不満を言う同僚もいました。そのような方には自分がこういう状況でもこの仕事がしたい事や極力迷惑をかけないように努力する話を直接言いました。
まとめ
去年は仕事量が増え、身体がキツくなり、転職をしようか悩んでいた時がありました。
その時に、現在の自分の体力や心臓の頑張り具合を知ることで、今後の仕事や転職を考えるために、主治医と心臓リハビリテーション指導士に相談し、CPXの検査を受けることになりました。結局、前回測定時と心肺機能は大きく変わらず、自分の体力が落ちている事が分かり、筋トレを増やし、身体は楽になってきました。現在も同じ職場で勤務していますが、周囲の方々に自分の状況を知ってもらえてる事で、相談しやすい状況です。
心疾患を保有していると、身体に対してできるだけ負担の少ない仕事を検討しますが、まずは自分の体力や身体を動かすときの心臓の頑張り具合を知ることも、仕事をしていくための1つの指標になると思います。そして、自分も職場側も、どこまで仕事ができて、どこまで仕事を任せていいのか、職場側と相談する際の手段として効果的だと思います。
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