公開日 2023年8月22日 最終更新日 2024年2月18日
不整脈は自覚症状なく発症し、なかなか症状に気づかないケースがあることをご存知ですか?
自覚症状がない分、不整脈を治す運動はないのか、そもそも運動をしていいのだろうかと悩まれる方もいらっしゃるのではないかと思います。
本記事は不整脈と診断された方へ向け、
- 不整脈と運動の関係性
- 不整脈は運動で治せるのか
- 運動制限や注意点
- 運動中に症状が現れたときの対応
上記の内容を解説していく記事となります。
不整脈でも正しく運動する方法や注意点について理解を深めてください。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
不整脈と運動の関係性は?
不整脈と運動の関係性について、具体的に解説します。
不整脈とは
不整脈とは、脈のリズムが一定でなく不規則になる状態をいいます。不整脈といっても種類はたくさんあり、心不全や弁膜症などの心臓病が原因となり不整脈を誘発するものや、とくに明確な心臓病の指摘がなくても、ストレスや加齢によって誘発されるものがあります。
なかでも心房期外収縮(PAC)は、健常者のうち9割の方に認められる不整脈です。
【不整脈の種類】
- 頻脈:心房頻拍・心房細動・心房粗動・発作性上室性頻拍・心室頻拍・心室細動・WPW症候群
- 徐脈:洞不全症候群・房室ブロック
- 期外収縮:心房性期外収縮・心室性期外収縮
不整脈については、こちらの記事「不整脈になっても仕事は続けられる?無理なく働くためのポイントやを紹介」でも詳しく解説しています。
不整脈でも運動できる?
不整脈と診断されていても運動を行うことは可能です。もちろん不整脈の種類や症状の程度によって、どこまで負荷をかけていいかはさまざまです。
たとえば、不整脈に限らず心疾患のある方に対し、ウォーキングや水泳などの有酸素運動は、心肺機能を向上させる働きがあると言われています。反対に無酸素運動は、強い力を必要とするため心臓に負荷がかかるため、心疾患のある方にはお勧めできません。
そのため、会話をしても息切れしない程度のスピードで行う程度の有酸素運動を行うようにしましょう。そのとき、一回あたりの時間は30〜60分程度が良いとされています。しかし、一回でやりきろうとせずに、朝夕に分けて実施するなどご自身の生活に取り入れやすく工夫することが大切です。
いずれにしても、不整脈の種類や症状の程度により内容は異なりますので、自己判断はせず主治医に相談してから運動を取り入れてみてください。
不整脈は運動すると治る?
運動習慣が健康維持に大切であることは多くの人々に知られているかと思います。しかし、残念ながら不整脈が運動で治るということはありません。ですが反対に、運動不足がもたらす影響は大きく、不整脈や生活習慣病のリスクが高まると考えられています。
不整脈をはじめとした心臓病の患者さんへの運動療法は、心肺機能の向上に働きかけるといわれています。
また、不整脈の種類や症状の程度によっては、有酸素運動を1〜3ヶ月間継続することで、発作を抑制する効果があることがわかっています。運動により不整脈が治るということはありませんが、心肺機能を高める目的で取り組むことは大切と言えます。
不整脈の人が運動するときの注意点
不整脈の種類にもよりますが、健常者でも多く見られる期外収縮や徐脈となるタイプの不整脈は、一般的に運動制限は設けられていないことがほとんどです。反対に、頻脈となるタイプの不整脈については、病態からも症状が重症化するリスクがあり運動制限が設けられることがあります。
いずれにしても、めまいや動悸・意識が遠のくなどの症状が出現した場合には、血液が全身へ巡りにくくなっているリスクがあります。気になる症状が出現した場合には、すぐに運動を中止し安静にして様子を見ましょう。
症状の有無に関わらず、無理のない運動プログラムを組み、その時々の状態に合わせて体調優先に行うようにするようにしましょう。
運動中に症状が現れたらどうする?
運動中に症状が現れた際、すぐに適切な対応を取らなければ命に関わることがあります。こうした事態にならないために、気をつけるべきポイントをまとめました。
こんな症状がでたら運動を中止しましょう
不整脈が重症化すると、全身へ血液を巡らせるポンプ機能を持つ心臓が正常に働かなくなり、最悪の場合数分で命を落とすこともあります。気をつけなければならない症状についてご紹介します。
めまい
不整脈の種類にもよりますが、徐脈を誘発する不整脈の場合、運動に必要な酸素を全身へ送ることができなくなってしまいます。そのため、不整脈を指摘された方は、運動中にめまいが起きた場合すぐに安静にするようにしましょう。
動悸、息切れ
不整脈をはじめとした心疾患により心機能が低下している場合、全身へ十分な血液を送り届けることができないため、心拍数で補おうとし動悸が起こります。
しかし、心拍数を増加させても血液量が増える訳ではないので、血液中に含まれる酸素も全身へ十分に行き渡らず、息切れを起こしてしまいます。息切れが起きたまま運動を続けると、意識消失に繋がる恐れがあるので、必ず安静にするようにしましょう。
意識消失
めまいや動悸、息切れなどの症状が出現したときに症状を放置すると、最悪の場合意識消失に繋がる恐れがあります。意識消失を起こすと、転倒してしまい頭部打撲や骨折などの怪我に繋がるほか、命に関わることもあります。そのため、意識消失に繋がってしまう前に、運動中に違和感を感じた際はすぐに中止し休息を取るようにしましょう。
以上が運動中に特に注意しなければならない症状でした。違和感を感じ休息をとっても症状がよくならない場合や、症状出現の回数が増えるなど様子に変化が見られた際は、自己判断せずに主治医へ相談することが非常に大切です。
受診の目安
・運動を中止し安静にしていても、不快感が持続する場合
・動悸や意識が遠のく感覚がある場合
上記のような場合には、不整脈に対する詳細な検査や治療を検討する必要性があります。
また、気になる自覚症状がない場合でも、気づかないだけで何らかの疾患が隠れているかもしれません。健康診断で不整脈を指摘されたら、必ず受診し主治医の意見を確認すると良いでしょう。
運動についてわからないときは医師に相談
ここまで不整脈と運動の関係性についてご説明してきましたが、イメージを膨らますことはできたでしょうか?
適している運動内容や運動量は、年齢や症状の重さによって異なります。困ったときは、必ず主治医に相談しましょう。
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