不整脈になっても仕事は続けられる?無理なく働くためのポイントやを紹介

公開日 2022年10月31日 最終更新日 2024年2月18日

「不整脈でも仕事は続けられるのだろうか…?」

最近仕事をしているときに心臓のドキドキが気になり、病院で受診したら「不整脈」と診断された。もしこうなったとき健康面だけでなく、仕事を続けられるのか不安になる人は多いと思います。

不整脈は症状によっては治療を必要としますが、仕事との両立は十分に可能です。しかしそのためには身体を労わる以外にも、職場のサポートが必要不可欠です。この記事では、不整脈になった人が仕事をするためのポイントについてご紹介します。不整脈で仕事に不安を感じている人に、ぜひ読んでもらいたいです。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

不整脈とは

実際に不整脈とはどのような病気なのでしょうか。ここでは不整脈の種類や症状、原因などを説明します。

不整脈には3つの種類がある

不整脈とは、心臓の鼓動のリズムが乱れて脈が不規則になる病気です。心臓は一定の順序で電気信号を送ることで「ドクン、ドクン…」と規則正しいリズムで血液を送ります。しかし、なんらかの原因で電気信号が乱れると、鼓動のリズムが不規則になって不整脈が生じるのです。不整脈にはおもに以下の3種類に分類します。

  • 期外収縮
  • 頻脈
  • 徐脈

それぞれの種類について詳しくみていきましょう。

期外収縮

期外収縮とは脈が一瞬飛んだり、急にドキドキしたりする不整脈です。心臓に間違った電気信号が送られることで、鼓動のリズムが乱れて期外収縮が生じます。脈のリズムが不安定なので、1分間の脈拍数にバラつきがみられやすいです。期外収縮が起きても問題ないケースが多いですが、頻度が多い、あるいは症状が強い場合は治療が必要になることもあります。

頻脈

頻脈は脈が速く、1分間に100回以上になる不整脈で、心臓に強い電気信号が送られることによって起こります。心拍数が増えるので、ドキドキとした動悸が出現しやすいです。頻脈によっては心臓がスムーズに血液を送れなくなり、酸素が脳に十分に供給されず意識が低下することもあります。

徐脈

徐脈は脈のスピードが遅く、1分間に50回以下になる不整脈です。心臓に電気信号が送れない、十分に伝わらないことなどが原因で脈が遅くなります。脈が遅くなると血液の循環スピードも低下するので、運動時に疲れや息切れが起きやすいです。徐脈は加齢によって引き起こされることもあり、場合によっては心臓の鼓動を一定に整える「ペースメーカー」が必要となります。

注意すべき不整脈の症状

不整脈は目立つ症状がなければ問題がないケースも多いとされていますが、中には注意が必要な症状も隠れています。たとえば、脈が速くなって動悸が長時間続くと、めまいや吐き気だけでなく失神につながることもあります。このとき、脳卒中の原因にもなる「心房細動」を発症している可能性があるでしょう。

徐脈による疲れやすさ、息切れなどが治らない場合は「心不全」の疑いがあります。

また胸痛や胸の不快感が続いていると「狭心症」や「心筋梗塞」の危険性もあります。このように不整脈は他の病気のサインの可能性があるので、身体の違和感があるときは早期に医療機関で受診することが大切です。

不整脈が起こる原因

不整脈が起こる原因には、心筋梗塞や心不全などの心臓病があげられますが、その他にも加齢やストレス、疲れで起こることもあります。ストレスや疲れで生じる不整脈は、一過性であれば特に悪影響はないとされています。不整脈は原因が多数あるため、誰にでも起こりやすい症状といえるでしょう。

その一方、さまざまな原因があることで、どの不整脈が問題なのかがわかりにくいのも特徴の1つです。「不整脈をほっといたら、他の病気になっていた」なんてこともあり得るので、少しでもおかしいと思ったら早めの受診がおすすめです。

心臓病とストレスの関係については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは?影響を受ける病気や適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。

不整脈の治療方法

不整脈の治療法はさまざまで、以下のような方法を用いることが多いです。

  • 抗不整脈薬
  • カテーテルアブレーション
  • ペースメーカー など

抗不整脈薬は症状によって使用する種類が異なり、症状が強く現れたり、異常な不整脈が生じたりしたときに使用されます。カテーテルアブレーションは電流を流して、不整脈の原因となる部位を焼く治療法です。

原因部位を焼くことで電気信号の乱れを整え、正常なリズムを取り戻します。ペースメーカーは徐脈に対応した機械であり、体内に埋め込むことで電気信号をサポートし、心臓を一定のリズムに動かします。

不整脈がある人の働き方

自分が不整脈だと発覚した場合、このまま働き続けられるのか心配になる人は多いと思います。ここでは不整脈がある人の「仕事」のとらえ方について説明します。

不整脈がある状態で仕事はできる?

結論からいうと、不整脈になっても仕事はできます。実際に通院をしながら仕事を続けている人は年々増えており、その状況を受け入れる職場も多くなっています。そのため不整脈だと診断され、入院や通院が必要だからといって仕事をすぐにやめる必要はありません。

病気であることを職場に共有して理解や協力を得られれば、治療と仕事の両立は十分に可能です。不整脈になってもあきらめず、まずは職場に相談することからはじめましょう。

不整脈がある人におすすめの仕事

不整脈の人が安心して行えるおすすめの仕事には、一般事務職やエンジニアのようなデスクワークがあります。デスクワークは座ったままの仕事がほとんどなので、身体への負担が少なく症状も悪化しにくいです。反対に肉体労働の仕事は身体への負担が高く、不整脈をさらに悪化させる危険性があるのでおすすめできません。

いま働いている作業内容が肉体労働の場合は、デスクワークのような負担の少ない仕事に変えられるか検討してみましょう。

心臓病の人におすすめの仕事については、こちらの記事「心臓病でも出来る仕事とできない仕事の違いとは?向いてる仕事に転職する方法も解説」で詳しく解説しています。

不整脈の人が仕事をするためのポイント

不整脈になった状態でも、工夫すれば働きやすい環境を整えられます。ここでは不整脈の人が仕事をするためのポイントを説明します。

不整脈であることを職場に伝える

まずは不整脈であることを職場の上司や同僚に伝えましょう。病気のことを伝えるのは怖いと思いますが、不整脈を隠しながら仕事をして体調を崩してしまっては意味がありません。決して1人で抱え込むのではなく、上司たちに相談して治療と仕事を両立するためのアドバイスをもらいましょう。

職場内のメンバーが不整脈について理解していれば、仕事のサポートや休日の調整などの配慮をしてくれるでしょう。もしものためにも、病気のことは職場に共有しておくことが大切です。

治療時の休暇について相談する

不整脈の治療で入院、通院をするときの休暇について、上司と相談をしてみましょう。入院期間が短ければ有給休暇を消化すれば問題ありません。しかし、治療が長期に渡る場合は職場とよく話し合う必要があります。職場によっては「休職」や「病気休暇」など、独自の休暇制度が設けられている可能性があるので、ぜひ活用しましょう。

また通院の場合は、勤務形態の種類を確認することも大切です。中にはフレックスタイム制度や短時間勤務などを行える職場もあるので、上司や人事部に確認してみましょう。

通院で仕事を休むときの大切なポイントについては、こちらの記事「通院のために仕事を休んでも大丈夫?休むためには職場からの理解が大切!」で詳しく解説しています。

身体に負担の少ない作業に変更する

肉体労働が多い仕事を行っているなら、身体的に負担の少ない作業に変更しましょう。部署を変えたり、作業量を減らしたりすれば、不整脈の症状を悪化させずに仕事を安定して続けられます。

またペースメーカーを埋め込んでいる場合、周囲に電気機器や電磁波があると正常に作動しなくなる可能性があります。そのため電気系統をあつかっている仕事は避けて、影響が少ない場所での作業に変更してください。

障害者雇用で働く

現在の職場でなかなか治療のサポートを受けられないときは、障害者雇用のある場所で働くのも1つの手段です。障害者雇用のある職場は病気に対しての理解があり、仕事をサポートする環境が整っています。

そのため治療と仕事の両立もしやすく、安心して働けるのが特徴です。しかし障害者雇用のある職場は一般雇用と比べると少ないので、求人をよく調べてみましょう。また障害者雇用で働くためには障害者手帳の取得が必須なので、まずは主治医に取得が可能かどうか確認しましょう。

障害者雇用については、こちらの記事「【2023年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。

不整脈になっても仕事と治療の両立はできる

不整脈はさまざまな種類があり、症状も一過性のものから治療が必要なものまで幅広いです。しかし不整脈と診断されて治療が必要になっても、決して仕事ができなくなるわけではありません。

病気のことを職場に共有しつつ、サポートを受けられる環境があれば治療と仕事の両立は可能です。また身体的な負担の少ない雇用形態や仕事内容を選択すれば、不整脈を持っていても安心して仕事を続けられるでしょう。病気に対しての不安を1人で抱え込まず、まずは家族や職場の人に相談してみましょう。

5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)