公開日 2024年2月6日 最終更新日 2024年2月18日
フリーランスという働き方は障害者にとって、仕事の選択肢を広げてくれます。体に負担をかけないよう在宅で働くこともできるため、大人の先天性心疾患者にも適した働き方でといえるでしょう。
しかし、その一方で、オンとオフの境界線が曖昧になりやすく、仕事が軌道に乗ると、心身を休ませることが難しくなる場合もあります。今回は現役フリーライターの私がしてしまった「休めない働き方」や、その結果、辿り着いた「心身を休ませる働き方のポイント」を紹介します。
執筆:古川 諭香
フリーライター。単心室・単心房のため3度の手術を経験。根治は難しいものの、フォンタン手術後、日常生活が普通に送れるように。愛猫の下僕で本の虫でもある。(Twitter:@yunc24291)執筆記事一覧
【目次】
- 先天性心疾患の現役ライターが陥った「休めない働き方」
- フリーランスが陥りやすい「心と体を壊すポイント」
- 心にも体にも無理をさせないために!フリーランスに勧めたい「休み方」とは?
- 心も身体も健康なままでいられる働き方を
先天性心疾患の現役ライターが陥った「休めない働き方」
私は、現在フリーライター歴8年目。仕事量が急激に増えたのは、3年目を過ぎた頃でした。ライター業は仕事を引き受ければ引き受けるほどお金が入る、歩合制。自分が少し無理をすればいいのだと思い、クライアントからの仕事を断ることなく、全て引き受けていたのです。
私はクラウドソーシングサイトで単価の安い仕事をたくさんこなして実績を積み、ライターになったことから、高クオリティな原稿を短納期で完成させることが自分の売りだと考えていました。実際、クライアントはそうした私のスキルを買ってくれ、依頼から1~2日後に納品しなければならない仕事は次第に増加。気づけば焦燥感に苦しみながら記事を執筆していました。
また、ライター歴がまだ浅かったことから、一度断ると、次の依頼が来なくなるのではないかという恐怖を感じ、仕事を断ることができなかったのです。気づけば、土日も仕事三昧。突発的に入る仕事も多くあったため、自分のスケジュールが読めず、オフの時間がなくなっていきました。
加えて、大手出版社からも原稿を依頼されることが増えたことも自分にとっては、大きなプレッシャーに。これまでよりも質の高い記事を書かなければならないという感じ、常に心が緊張しているような感覚でした。
さらに、当時の私は仕事をする傍ら、1日1回SNSを更新。寄せられたリプの全てに、できるだけ早く返信をしていました。私にとってSNSは仕事の依頼が寄せられ、自分のPRもできる大切な場。そのため、プライベートな時間を失くしてSNSへの対応をしていました。
フリーランスが陥りやすい「心と体を壊すポイント」
そうした働き方をした結果、私は心も体も壊しました。心身が壊れる前、「もうダメかもしれない」「このままの働き方をしていては倒れるだろう」と思うことは多々ありましたが、もともと休むことが苦手な性格であり、クライアントに喜んでもらうことで自分の価値を感じるところがあったため、「休む」という選択をすることができませんでした。
心と体がバラバラになった私は悩んだ挙句、メンタルクリニックを受診。カウンセリングを通して自分と向き合い始めました。通院から半年後。自分の心身がとっくに限界を迎え、壊れていたことを、ようやく心で理解できました。
その後は数ヶ月、休職をして心身をしっかり休めた後、仕事を再開。カウンセリングの効果もあり、「人間らしい暮らしをしたい」という気持ちを優先し、働き方を改められるようになりました。
あらためて、当時の働き方を振り返ると、心と体に無理をさせてしまうポイントがいくつもあります。
- 納期が短い仕事を受けるときでも、通常と同じ執筆料で請け負っていた
- そもそも提示していた記事単価が安価であり、スキルを安売りしていた
- 仕事中には数分の休憩時間も取り入れていなかった
- 食事や睡眠よりも原稿の執筆が最優先だった
- クライアントのスケジュールを優先し、自分のスケジュールを立てていた
- 原稿執筆に過集中してしまい、家事などを慌てて行い、焦燥感に疲れていた
- 稼ぎたい給料の目標金額が高額すぎた
- 単価がよければ自分が納得できない条件でも飲んでいた
- 通院よりも記事執筆を優先させていた
【関連コラム】
心にも体にも無理をさせないために!フリーランスに勧めたい「休み方」とは?
フリーランスはオンとオフが曖昧になりやすいため、現在、私と似た状況であったり同じ悩みを抱えていたりする方は多いと思います。そうしたときこそ一度、仕事の受け方や受ける仕事の内容を見直し、自分を守れる働き方を考えることが大切です。
実際、私も心身が再び潰れないよう、ライター業を続けていく上で守りたいことを明確にしました。
- 基本の原稿執筆料を、自分が「これなら頑張れる」と思う金額に設定し直した
- クライアントから提示される納期があまりにも短い場合は、単価の相談を行う
- 無報酬や物品提供だけのPR依頼は基本的に受けない
- パソコンの前にミニ置時計を用意し、時計を見ずに過集中してしまう状況を防ぐ
- 自分のスケジュールを最優先にして、仕事を引き受ける
- 12~13時の間にはキリのいいところで必ず一旦休み、食事を摂る
- 自分が納得できない条件の依頼は、思い切って断る
- 自分が綴る言葉を好きだと言ってくれるクライアントと仕事をする
- 苦手なジャンルの仕事は単価がよくても断る
- 「内容をざっと見てほしい」など、知り合いからの無報酬作業は断る
- SNSにおける、1日1回更新のマイルールを撤廃
- SNSのリプ返は長時間し続けず、キリのいいところで別日に持ち越す
- 支出を見直して最低限稼ぎたい1ヶ月の給料を明確にし、その月の作業量を決める
これまでの私はお金をたくさん稼ぐことや、どのクライアントからも褒められる記事を書くことを一番のゴールにしていました。しかし、心身の健康が守られていないと人生は何も面白くないと分かったため、いまは自分をケアしながら、持っているスキルを安売りしない働き方をしています。
心も身体も健康なままでいられる働き方を
大人の先天性心疾患者の中には体に負担をかけたくないという思いから、フリーランスを目指している人も少なくないと思います。だからこそ、体を守りたいと思って始めたその働き方が、逆に心身を壊すことに繋がってしまわないよう、私の体験をひとつの参考にしてフリーランスになった後の働き方をシミュレーションしていただけたら嬉しいです。
また、現在フリーランスとして活躍されている方は働く中で、食事や睡眠など、人間らしい行動ができているのかをあらためて確認し、自分を痛めつけない働き方をしてほしいと思います。
自分の心身を守れるのは、自分自身だけ。私たちには生き延びることができた大切な命があるからこそ、頑張り屋の心と体に鞭を打たなくてもいい暮らしをしていきましょう。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。