病状を伝える難しさ~術後・復職・退職までの険しい道のり〜

公開日 2024年5月14日 最終更新日 2024年5月14日

「手術したから治ったんだよね」

復職後最初に言われた上司からの言葉です。

皆さんは心臓病に対してどんなイメージをお持ちですか??心臓病の症状は千差万別です。そしてイメージもきっと同じように皆違うと思います。

今回は、私が弁置換術・ICD植え込み後、復職し退職するまでの道のりをお伝えします。

正確に病状を伝える難しさを知り、悩んだ時期でもありました。病気の伝え方や伝える勇気が自信が無い・・・そう思ってる方にぜひ読んでいただき病気を抱えながら仕事をするヒントにして頂けると嬉しいです。

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執筆:はらぺこママ

ファロー四徴症・肺動脈弁閉鎖不全で2度の手術を経験。現在、弁置換とICDを挿入。Voicyにて「暮らしが好きになるラジオ」を配信中。フードデリバリーの配達員、フリーで在宅勤務をする小学生のママ。GLAYファン。(Voicy:voicy.jp/channel/3906) 執筆記事一覧

【目次】

復職までの道のり

致死性不整脈を起こし、弁置換術・ICD植え込みの為1か月半ほど入院。その後3か月の療養生活を経て復職しました。

復職1か月前に軽く人事と面接をしましたが、その時から復職への不安が大きかったのを覚えています。当時私の配属はコールセンターでした。1日お客様とお話ししてる状態でストレスも溜まりやすい仕事だったため、短時間勤務からはじめたいと相談をしました。

術後、体力も落ちており、フルタイムでその仕事へ突然戻ることに抵抗がありました。しかし会社の答えは「NO」でした。「8時間勤務ができる状態で復帰してください」と言われ目の前が真っ白になり、もともと抱えていた復職への不安が一気に高まりました。

中には理解を示してくれた上司もおり、その上司からも掛け合ってもらったんですがやはり短時間勤務は認めないとの返事。結局コールセンター業務ではなくバックヤード業務での復職となりました。

会社との認識のズレ

部署を移動し、上司に挨拶へ行った時「お久しぶり!手術したから治ったんだよね。うちの知り合いがペースメーカー入れてるけど元気に過ごしてるよ」と言われました。

私の心臓病の認識とはちょっと違い、ここでも不安を覚えましたが、自分の病状を伝えていけばうまくやっていけるだろうという気持ちはありました。しかし、そのちょっとの違和感が復職後徐々に増していったのです。

最初の数週間は、資料をまとめるなどの事務作業をしなんとかこなしていけました。しかし、以前コールセンターに配属していたこともあり、徐々に電話対応やお客様対応など少しずつ仕事量が増えていきました。

仕事量が多いと感じ、上司に相談はしたものの「治ったんじゃないの?」と言われてしまい…。それ以上、わたしの口からは伝えることができませんでした。

それは、自分でも今の自分の身体がどうなってしまってるかわからなかったからです。以前出来ていた業務量と同じはずなのにこなせない、私が休んでしまったら穴を空けてしまうというプレッシャーもありました。

同時期、障害者雇用の話をもらい無事合格、正社員として働かせてもらってることもあり責任感が一気に増していました。上司に病気の事を話してるのに、伝わらない。どうしたら伝わるだろう…。「伝える」と「伝わる」の違いに毎日悩んでました。

退職の決断

復職をし約1年経った頃、朝起き上がれない、すぐ疲れるなどの症状が続き救急で病院にかかりました。そこで担当医に「ちょっと働き過ぎじゃない?がんばりすぎよ」と言われたのです。

わたしは手術をしたら前と同じように生活ができると思ってました。今考えると「治ったんだよね」と言われた上司と同じように、わたし自身も心臓病を正しく理解できていなかったんだと思います。

しかし、一般的な暮らしは出来ても前と同じ仕事量をこなしたり、無理がたたると同じように心臓は疲弊してしまうのだと知りました。”がんばりたいけどがんばれない”今までの自分を一度ゼロに戻して出来るところから始める必要があったのです。

術後の体調不良も続いており、今一度自分の体調と仕事について考えるきっかけになりました。障害者雇用とはいえ、正社員になれた喜びもありこれからのキャリアを考えるとワクワクもしましたが、自分の体のことを考えて一度手放すことにしました。

社内を駆け回り、健常者と混じって仕事をするのは、今のわたしにとっては無理があったのです。異動の話もありましたが、通勤時間が1時間増えてしまうので身体のことを考えお断わりしました。

わたしに足りなかったもの

「なんでわかってもらえないのだろう…」

上司やまわりの同僚へのとまどいが日に日に増していく中、自分の身体の症状についてしっかり向き合えてなかったのも事実です。

手術前は健常者の方と変わらず仕事をしていました。だからこそ、術後はまるで自分の身体ではないくらい変わってしまったことに頭と身体が追い付いてなかったのです。

むしろ前と同じ体力に戻すことができる!とすら思っていました。しかし現実としては、頑張ってまわりに追い付こうとしても、ついていけないもどかしさがありその結果、仕事に対して自信を失っていました。

「今出ている病気の症状と向き合う事」

自分ができることできないことの線引きがわたしには足りなかったのです。
自分の現状を把握することで、伝えることが明確になってきます。また、職場でも近しい同僚に悩みを打ち明けることも大切だと感じました。

心配をかけたくない、今までの自分とかわらないんだという意地もあり
素直になれず、「大丈夫なの?」と心配してくれた同僚に対しても「うん平気だよ」と言っていました。

そういった経験から、全てをわかってもらえなくても、共感してもらうことで安心することも学びました。

自分の現状と向き合うことが大切

最終的に仕事を手放すことになりましたが、伝えることの大切さ、それには今の自分の現状をしっかり把握し向き合うことの大切さを学びました。自分の身体と向き合うことはとても怖いことです。

術後、体力が戻らず以前と暮らしが変わってしまった場合は尚更かと思います。しかし向き合うことで一度ゼロ地点に戻り、また一歩踏み出せるスタートがきれます。

4月から新しい職場や環境で病気を抱えながらも頑張ってる方、もし自分の病気に対しての伝え方に悩んでいらっしゃいましたら、ぜひ今一度自分の症状そして、どこまでできてどこからできないのかという線引きを考えてみてください。主治医に相談するのもいいと思います。

そして、悩みを相談できる人や場所をそばに見つけてください。同僚や友達、またSNSなどでもいいと思います。私は、現在企業に属さずフリーランスとして仕事をしています。

働き方の多様性を活かし、身体と向き合いながら働く場所を決めました。皆さまが自分を大切にしながら仕事を続けられるよう切に願っております。

ファロー四徴症・肺動脈弁閉鎖不全で2度の手術を経験。現在、弁置換とICDを挿入。Voicyにて「暮らしが好きになるラジオ」を配信中。フードデリバリーの配達員、フリーで在宅勤務をする小学生のママ。GLAYファン。Voicy:voicy.jp/channel/3906