公開日 2025年5月6日 最終更新日 2025年5月6日
生まれつきの心臓病を持つ人は国内旅行ならまだしも、海外旅行に出かけても良いのか…?と疑問に持つ親御さんも少なからずいるのではないでしょうか。
この質問に対しての答えは「海外に行くことは可能。ただし人によって条件はある」ということです。
私の場合フォンタン手術後の1年後、4歳の頃に家族で某有名なアミューズメント施設へ遊びに行く際、初めて飛行機を利用しましたが、幸いにも体調を崩すことがありませんでした。それ以来国内に限らず近隣の台湾から欧州まで旅行に出かけることができました。

執筆:Mariana
北海道生まれ。右室性単心室により3歳の時にフォンタン手術を受ける。障害者雇用枠で様々な企業を渡り歩きながら、ヘアパーツモデルを経験。旅行が大好きで、日々航空マイルを貯めるためポイ活に勤しむ。所有資格:オーガニック健康カウンセラー、オーガニック・コスメアドバイザー、ユニバーサルマナー検定3級 執筆記事一覧
【目次】
海外へ行く前にやっておくべきこと
まず大前提ですが、海外へ行く際には事前にパスポートを取得する必要があります。申請から取得まで約2週間かかるかと思いますので、時間に余裕を持って手続きを行ないましょう。
海外旅行保険の加入も忘れずに!
そして重要なのが体調面です。特に体調管理に懸念点がある方は、渡航前に主治医に相談したほうがベターです。
例えば、下記の悩みが出てくるかもしれません。
①現地の医療体制や緊急時の対応
- 現地の病院で(小児)循環器内科があり、且つ適切な治療を受けられるのか
- 言語の壁(症状や既往症をうまく伝えられない不安)
- 海外旅行保険が先天性の疾患に対応しているのか
②飛行機移動の負担
- 長時間フライトにより酸素濃度が低下することへの不安
- 血栓や浮腫み、疲労の蓄積による体調悪化
- 乗り継ぎや空港内の移動など、体力が必要
③気候・食事の影響
- 寒さと暑さが心臓に負担にかかりやすい
- 食事が塩分過多、糖質過多だったりと身体に合わない可能性
④服薬の管理
- 時差があることで服用するタイミングが難しい
- 国によって薬の持ち込みに制限されることもあり、事前に英文の診断書が必要
- 薬を紛失、もしくは盗難された場合の対処法(代わりに入手できるか)
特に在宅酸素を日常的に取り入れている人は、まずは主治医に相談のうえ、利用する航空会社やツアー会社に問い合わせするのが良いのではないかと思います。
海外旅行に行かれる際には、毎日服用している薬を多めに持参することをオススメします。
万が一、帰路に向かう飛行機が欠航した場合、1日以上現地で過ごす可能性があるかもしれません。その為に備えて常備薬を少し多めに、持ち歩くと安心しますよね。
また東南アジアのような暑い国では、外が暑くても建物や車内が冷房によってキンキンに冷えていることが多いので脱ぎ着しやすい服装で行くことを強くオススメします。
ペースメーカーやICDを埋め込んでいる人が注意すべきポイント
飛行機に搭乗前に必ず保安検査を受けることになりますが、その際にペースメーカーやICDを体内に埋め込んでいる人は、空港の保安検査場にあるX線を通せないため、ボディータッチによる検査が行われます。
そのため保安検査を受ける際には、必ず職員にペースメーカーを埋めていることを申告しなければなりません。
また海外の空港でも日本と同じ対応になりますが、英語で“ I have a pacemaker.”と職員に申告したり、デバイス手帳を提示することで、同様のボディータッチ検査が可能になります。
快適なフライトを過ごすために…
国際線で使われる飛行機は国内線よりも大きい機体が多く、航空会社によってサービスや機内の特徴は様々です。
路線によって機内の滞在時間が異なりますが、普通席に乗ると心疾患持ちに限らず、【エコノミー症候群】になりやすいので注意が必要です。
長時間(5~12時間ぐらい)座りっぱなしなので、血流が悪くなるうえに脚が浮腫みやすくなるのです。
そこで意識して欲しいのは水分補給・立つ・歩く・ストレッチ・マッサージ。この5点は意識して頂きたいです!
また機内では寒く感じることもあるので、キャビンクルーからブランケットを借りると良いでしょう。
機内では美味しい機内食や、日本未公開の映画が観れたり、音楽を聴いたりとエンターテイメントが豊富なので飽きずに過ごすことが可能かと思います。もちろん事前に観たい動画を搭乗前にダウンロードしておくとスムーズに楽しむことができます。※航空会社ごとにサービスは異なります。
現地で過ごすうえで気を付けるポイント
①公共のトイレが有料
日本では滅多にありませんが、特にヨーロッパ(一部のアジアの国も含む)では公共施設や公園など、トイレを使用するにはお金を支払わないと入れないところがあります。なので、ホテルから外出する際には必ずトイレを済ませてから行きましょう!
普段から利尿剤を服用されている方は、日本にいる時以上にトイレの場所を確認されたほうが良いですね。筆者の私も、この記事を執筆した半年前から利尿剤を服用しているので、今度海外へ行った際に体調の変化を含めてお伝えできたらなと思います。
②水質が日本と異なる
日本では普段使われているのが軟水ですが、アメリカやヨーロッパなどの国々では、ミネラルたっぷりの硬水になります。よって日本人の私たちが硬水を飲むと人によってはお腹を壊すことがあります。更にはホテルのシャワーで洗髪をすると髪がゴワゴワになることも。
また海外の国ではライフラインが日本よりもしっかりしていない所が多いため、水道水をそのまま飲むことが出来ません。日本人が海外の現地で過ごすためには、必ずミネラルウォーターを買って持ち歩きましょう!血栓ができやすい先天性心疾患者は現地にいても、適度な水分補給を心掛けるようにしましょう。
③常に常備薬と医療情報を持ち歩く
見慣れない土地で観光したり食事したりするのはとても楽しいのですが、万が一体調が悪化した時に備えて保険証(マイナンバーカード)、パスポート、英文診断書、薬のリストをコピーして持ち歩くのをオススメします。
準備があれば、海外旅行も楽しめる
先天性心疾患者にとって海外へ渡航するのに、健常者の方々と違って準備することが増えますが、それでも単心室症を患う私は海外旅行が大好きで、コロナ禍前の2017年頃までは
ハワイや台湾、韓国、マレーシア、イギリスなどへ旅行した経験があります。
今は物価高なうえに円安なため、気軽に海外へ出掛けることが難しい状況ではありますが、日本と違った建物や自然、文化に触れることで得られるものは、計り知れないぐらい素晴らしい人生経験に繋がります。ぜひトライしてみてください。