公開日 2025年7月7日 最終更新日 2025年7月7日
心臓病の治療をしていく中で、医療従事者と上手く行かなかった経験はないでしょうか。
入院中や外来受診時、心臓リハビリテーション時と退院後も医療従事者の方達にはお世話になることが多くあると思います。その中で、医療従事者に患者さんの気持ちが伝わらない、医療従事者の気持ちが患者さんに伝わらない事は多々あると思います。
どちらにしても、お互いの考えを知ることで穏やかに治療へ臨める事もあると思うので、私見ですがどちらの立場も経験している身として、何かの参考になれたらと思います。
はとらくでは、心臓病に関する寄稿を募集しています。当事者や医療・福祉の現場にいる方の声を、編集部がサポートのうえ発信しています。

執筆:kazumi
周産期心筋症・慢性心不全と共に理学療法士として勤務。2人の男の子を育てながら、悪戦苦闘の日々を過ごしている。執筆記事一覧
【目次】
考えるようになった一つのきっかけ
以前投稿した学会での発表を通じて、筆者のような立場は珍しい事がわかり、医療従事者側も患者側も双方の考えを知る機会が少ないのではないかと感じました。
筆者自身も入院中に悩みながら過ごしていた経験から、それぞれの考えを共有することでトラブルを回避し、自身の治療に集中できるのではないかと感じました。そこで、医療従事者側と患者側のそれぞれの視点を取り上げてみたいと思います。
医療従事者側の視点
医療従事者は、患者さんが回復するために助けてあげたいという気持ちで関わってくれている方が大半ですが、現実の問題として、業務の時間に追われ、疲労を常に感じながら仕事をしている方も多いと思います。
休憩時間を十分に取ることができず、患者さんから呼ばれたら走っていく事も多くあるため、タスクに追われ、気持ちの波も多い事があると思います。そのため、意図しない事に遭遇すると、落ち着いている時と同じように関われない事もあります。しかし、ふとした時に初心を思い出す事も多くあります。
それは、患者さんからの感謝の言葉だったり、患者さんが頑張っている姿を目にした時など、「医療従事者でよかった」と思い、明日も頑張ろうという気持ちになっています。
患者側の視点
体調の悪化から、入院しての治療、そして退院と医療従事者から助けてもらいながら病と闘っています。病と戦う中で、医療従事者とともに、時に笑い合いながら、不安に立ち向かっているのではないでしょうか。
先の見えない治療や、意図しない入院で心の整理をする間もなく入院をする方も多いのではないでしょうか。そのため、なぜこうなったんだろうと自身を責め、周囲へ迷惑をかけてしまっている事への罪悪感などを背負っています。
反面、入院したくなかったのに言われたから入院する事になり、そこに苛立ちを感じている方もいます。思うようにいかない現実に、その苛立ちを医療従事者へぶつけている方も少なくありません。そして、患者さんの気持ちをわかっているかのように接する医療従事者もいて、そのような場合も不満が積もり積もって、患者の気持ちが爆発することがあると思います。
お互いが相手の視点を知る
それぞれの視点を一部書き出してみましたが、医療従事者は絶対ではないですし、偉いわけでもありません。
もちろん、勉強をして資格を持った上で、患者さんの病気を治したくて、診療して支えてくれています。医療従事者を目指すきっかけも様々です。また、患者側も偉そうにしている方もいますが、患者側もまた偉いわけではありません。
疲労や不安に追い込まれ、双方が自分が1番の被害者と感じてしまう状況になってしまい、相手の気持ちを考える余裕がなくなっているのかもしれません。ここに、医療従事者側と患者側とそれぞれが「思いやり」の気持ちを持って関われることがお互いにとって良いのではないかとつくづく思います。
【関連コラム】
ICUでの出来事
この思いやりが持てない時期があります。それが、ICUにいる時です。
この時は、術後や状態が良くない状況の方が入るため、精神状態が良くない方が多い場所かと思います。せん妄状況では、悪い夢の中と現実の間で、筆者は医療従事者の方々に失礼な事や申し訳ない発言などをしてしまっていました。
あとで謝りに行った時、看護師のリーダーの方から、「ICU の看護師は勉強しているから大丈夫だよ」と言われ、「それよりも良くなって良かった」と言われた時には涙が出ました。この時期は不可抗力な状況ではありますが、辛抱して対応してくれた医療従事者の方々に今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
理解と思いやりが何よりも大切
なりたくてなったわけではない患者という立場に、悩み苦しみ、不安を抱え退院し苦渋している方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
筆者も前例がないと言われ、復職に大きな壁をいくつも感じ、何度も心が折れかけました。そんな中、筆者に関わって頂いた医療従事者の方達には幾度と助けられました。そして、医療従事者の筆者が患者となり、その患者がまた医療従事者となった時、考えがガラッと変わりました。
患者さんの気持ちはその方にしかわかりません。医療従事者の思いもまた、医療従事者にしかわかりません。どちらに偏っても良くなく、「思いやり」の気持ちはこのような場面でもとても大切だと実感しました。医療従事者側からは優しさを、そして患者側からは感謝を伝えてみてはいかがでしょう。