公開日 2023年8月23日 最終更新日 2024年2月18日
内部障害を抱えていても、仕事で活躍している人は多くいます。安定して仕事を続けるには、職場の人が障害を理解したうえでサポートしてくれる環境が重要です。
今回は内部障害の人が仕事を行うにあたって、重要になる職場の選び方をご紹介します。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
内部障害とは
内部障害とは以下の7つの障害を指します。
- 心臓機能障害
- 呼吸器機能障害
- 腎臓機能障害
- 膀胱・直腸障害
- 小腸機能障害
- 肝臓機能障害
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害
どれも身体の内部で起こる障害なので、外見だけではわかりにくいです。そのため、周囲の人への理解やサポートが必要な障害といえます。
内部障害の種類と症状
内部障害といっても、種類によって特徴は異なります。ここではそれぞれの内部障害の種類と症状について説明します。またこれらの症状に該当する症状でも、障害者手帳を所有していないと正式に障害者と認定されません。障害者手帳と内部障害の関係については、こちらの記事「内部障害の等級を解説!身体障害者手帳の取得方法や医療費助成制度とは?」で詳しく解説しています。
心臓機能障害
血液を循環させる心臓の機能が低下する障害です。心臓の機能が低下すると身体を動かしたり、作業したりするときに動悸や息切れなどの症状が現れやすくなります。
心臓の鼓動が不規則になる人は「ペースメーカー」という、心臓のリズムを正常に戻すはたらきのある医療機器を入れることもあります。ペースメーカーは以下のようなものを使用すると、電磁波の関係で誤作動する危険性があります。
- 携帯電話
- IH炊飯器
- 体脂肪計
このような機器を使用する場合は、事前に注意点や使用方法を主治医に確認しておきましょう。
呼吸器機能障害
呼吸に関係する肺や筋肉、神経などの機能が低下して、酸素と二酸化炭素の交換をうまく行えない障害です。酸素が身体に取り込みにくい状態なので、運動時に呼吸困難や息切れなどの症状が現れることがあります。
障害が重い人は酸素ボンベを使用することで症状を軽減できます。呼吸器機能障害で仕事をしている人は、酸素ボンベを携帯しながら通勤・業務をすることも多いです。
腎臓機能障害
病気で腎臓の機能が低下する障害です。腎臓には、体内にある不要な老廃物や水分を取り除く機能があります。その機能が低下すると体内に不要な物質が溜まり、むくみや貧血などの症状が現れてしまうのです。
自分では不要な物質を取り除けない状態なので、場合によっては腎臓の機能を補助する人工透析治療を定期的に行う必要があります。
膀胱・直腸障害
膀胱と直腸の病気で尿や便を溜める、あるいは排泄する機能が低下する障害です。障害が進行して自身の力で排泄物を溜められなくなった場合、人工肛門や人工膀胱(オストメイト)を作る人もいます。オストメイトがあれば別の部位から尿や便を溜める・排出することが可能です。
小腸機能障害
小腸の病気で消化や吸収などの機能が低下する障害です。食べ物や飲み物の消化吸収がうまく行えないので、栄養の確保がむずかしくなります。そのため口で食べるのではなく、体外からチューブを使用した経管栄養を行うことも多いです。
障害が重度の場合、点滴で血液に栄養を送り込むこともあります。
肝臓機能障害
肝臓の機能が低下する障害です。食べ物の栄養を溜め込んだり、アルコールや有毒な物質を分解したりする機能が低下します。その結果、身体のだるさや出血のしやすさ、意識障害などの症状が現れやすくなります。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害
HIVウイルスの感染により、身体の免疫機能が低下する障害です。免疫機能が低下するとさまざまな感染症にかかりやすくなり、発熱や下痢、身体のだるさなどの症状が現れます。
現在では服薬で免疫機能の改善が期待できるようになっているため、仕事の継続や復帰ができるケースも多いです。
内部障害の人が仕事を行うときのポイント
内部障害の人は自己管理だけでなく、職場がどのような環境であるかの確認も重要です。ここでは内部障害の人が仕事を行うにあたって気をつけるポイントを説明します。また心臓障害の方が体に負担をかけずに働く方法についてはこちらの記事「心臓障害の方が転職すべき職場とは?体に負担をかけずに働く方法」で解説しています。
障害者雇用で働く
内部障害の人が働く場合、まず一般雇用ではなく障害者雇用ので就労をおすすめします。
障害者雇用では、企業側から障害に対する配慮を受けながら働けるため、身体的にも精神的にも負担を軽減できます。
障害者雇用については、こちらの記事「【2024年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。
勤務時間のルールを確認する
勤務時間や勤務形態の決まりを確認しておきましょう。内部障害を持っている人は、長時間の仕事を行うと身体に大きな負担がかかりやすいです。フレックスタイム制度や短時間業務を採用している企業であれば、身体の負担をおさえながら仕事ができます。
また定期的な通院が必要な場合、その日を休みにできるか、あるいは早めの退勤ができるかどうかを上司と相談してみましょう。企業に自分の症状を知ってもらうことは大切なので、なるべく早めに内部障害の理解を得てもらうことをおすすめします。
仕事内容を確認する
力仕事や残業が多いとその分身体への負担が強くなるので、あらかじめ仕事内容や残業時間の有無を確認しておきましょう。身体的な負担が強いと体調不良を起こしやすくなり、仕事を継続しにくいです。
上司と相談して、なるべく軽作業の仕事に移ったり、残業をゼロにしてもらったりなどのサポートをしてもらいましょう。
職場の環境を確認する
職場内の医療環境が整っているのかも大切なポイントです。以下のような環境がそろっていると安心です。
- 休憩室が設けられている
- 血圧計やAEDなどの医療機器が揃っている
- 医者をすぐに呼べる体制にある
内部障害を持っている人は、いつどの場面で急変するかわかりません。上記のような環境が整っていれば、もしもの事態にもすぐ対応できます。勤務形態や仕事内容だけでなく、設備に関してもよく確認しておきましょう。
内部障害の人が働きやすい業種
内部障害を持っている人がはたらきやすい業種として、事務職をはじめとしたデスクワークの仕事があげられます。このような職業は基本的に座った状態で仕事ができるので、身体的な負担も少ないです。力仕事や頻繁に移動するような仕事と比べると、体力の心配なく安定してはたらけるでしょう。
【職種例】
- 一般事務
- 経理
- 人事
- プログラマー・エンジニア
- Webデザイナー
- インサイドセールス
また企業としてもサポートする頻度が下がるため、お互いの負担軽減につながります。これから仕事を希望している人は、ぜひデスクワークの求人もチェックしてみてください。
心臓障害の方に向いてる仕事についてはこちらの記事「【心臓病】向いてる仕事や治療と両立させるポイントを解説」で解説しています。
内部障害の人におすすめの就労支援先
障害のある人が仕事を希望した場合、その就職活動をサポートする機関があります。ここでは内部障害を持っている人におすすめの就労支援先をご紹介します。
ハローワーク
一般の人でも就職のために使用するハローワークには、障害のある人を支援する「専門援助部門」があります。その部門では、障害のある人が就職するための相談が可能です。
さまざまな障害者雇用の求人を紹介してくれる他にも、仕事や障害に関してのカウンセリングも行っています。
地域障害者職業センター
全国の都道府県にある地域障害者職業センターは、障害のある人が就職するために必要なトレーニングを行ってくれます。
専門のカウンセラーやジョブコーチ、相談支援専門員などが在籍しているので、質の高いサポートを受けられます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、仕事以外にも生活の面でもサポートしてくれる機関です。全
国的にも数多く設置されており、ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携をとりながらサポートしてくれるのが特徴です。
体調にあわせて柔軟に対応してくれる職場選びが大切
内部障害にはさまざまな種類と症状があるため、柔軟な対応をしてくれる職場なのかを確認することが大切です。
またサポートをしてくれる環境を作るために、障害を持っている自身の状態を十分に説明し、企業に理解してもらいましょう。
業務内容や勤務形態だけでなく、周囲とのサポート体制がしっかりしていれば、安定して仕事を続けられるでしょう。