【2024年最新】障害者雇用の現状や課題、就労支援制度を具体的に解説

公開日 2022年9月15日 最終更新日 2024年2月18日

障害の有無に関わらず、誰もが能力や適性に応じた仕事ができるよう、障害のある人の雇用を国は推進しています。

しかしそれが順調に進んでいるわけではありません。今回は障害者雇用の現状と課題と題し、2024年最新の動向をまとめました。

【目次】

障害者雇用とはどのような働き方?


障害者雇用とは、障害を抱えながらも自分らしく能力を活かして働けるよう、国が推進している働き方です。障害者雇用は、労働者の障害や病気、配慮について雇用者・労働者双方の合意のうえで働きます。

労働者は勤務時間や業務内容などで合理的配慮を受けられるため、障害や病気を抱えている人も働きやすいというメリットがあります。

障害者雇用促進法とは?

正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」で昭和35年に制定されました。障害者雇用促進法は、障害を持つ人が特別な「障害者雇用枠」で働いたり、雇用において差別されることを防ぐためのさまざまな対策を定めた法律です。

時代に合わせてアップデートされ、現在は身体障害者・知的障害者だけでなく2018年からは精神障害者と発達障害者も対象になっています。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法とは、従来の障害者自立支援法が改正された法律です。

障害を持つ人が日常生活・社会生活の支援を受けながら生活できるように、就労移行支援や就労継続支援など福祉的就労について定めた法律です。障害者だけでなく、難病を抱える人も対象となっています。

障害者雇用の現状

障害者雇用は国が力を入れている施策です。障害者雇用の現状を理解するために、まずは障害者雇用率制度と法定雇用率について知っておきましょう。

障害者雇用率制度とは

障害者雇用率とは、常時雇用する従業員のうち障害者を雇用する割合のことです。

国は障害者雇用促進法で、事業主に対し以下の割合で障害者を雇用するように定めています。この定められた割合のことを法定雇用率、制度のことを障害者雇用率制度と言います。2023年1月時点の法定雇用率は以下の通りです。

  • 民間企業:2.3%
  • 国・地方自治体:2.6%
  • 都道府県等の教育委員会:2.5%

法定雇用率は定期的に見直されています。この10年で法定雇用率は0.5%上昇し、実質雇用者数は1.5倍に増えています。そして、2023年1月、更なる法定雇用率の引き上げが決定しました。

【民間企業の今後の法定雇用率】

  • 2024年4月:2.5%に引き上げ
  • 2026年7月:2.7%に引き上げ

また民間企業だけでなく、国や地方公共団体の法定雇用率も、段階的に3%まで引き上げられることが決定しています。今回の引き上げは、1976年に障害者雇用制度が導入されてから、最も大きな引き上げ幅となりました。

しかし、障害者雇用が促進される中、2021年の実雇用率は2.2%で目標の法定雇用率は達成できていません。法定雇用率達成企業の割合は47.0%で、雇用義務のある企業の約3割が一人も障害者を雇用していない現状があります。そのため国は、公共職業安定所による雇用率達成指導や相談支援を実施し、障害者の雇用拡大を目指しています。

障害者雇用者数

厚生労働省は毎年障害者雇用の状況を報告しています。民間企業の障害者雇用者数は右肩上がりで増加し、2023年の障害者雇用数は前年よりも約1万6,000人増えており、過去最高を記録しています。

特に2018年4月から法定雇用率の対象に追加された、精神障害者(発達障害者含む)の伸び率が著しいです。

出典:厚生労働省 令和4年 障害者雇用状況の集計結果

次に、業界ごとの障害者の雇用割合をみていきます。

引用:平成 30 年度障害者雇用実態調査結果 厚生労働省

業界別にみると、卸売業・小売業が障害者雇用者数が最も多く 23.1%です。

そして製造業19.9%、医 療・福祉16.3%の順に続きます。この3つの職種は就業者数も多いことから、求人数も多く就職しやすい職種です。反対に農業・漁業・林業・工業では障害者雇用はほとんどなく就職が難しいです。

障害者雇用の課題

障害者の働く機会は、障害者雇用制度のおかげでどんどんと増加しています。しかし、障害者雇用には、まだまだ解決が求められている課題点がいくつかあります。

【障害者雇用の課題点】

  • 離職率の高さ
  • 平均給与の低さ
  • 地方求人の少なさ

まず障害者雇用では、離職率の高さが目立ちます。2015年に行われた調査では、入社から1年以内の身体障害者の離職率は約30%と、10人のうち3人が一年以内に離職している状況があります。

また平均給与の低さも課題の1つです。2018年に行われた調査では、身体障害者の平均月給は21万5,000円と、全労働者の平均給与の30万7,000円(2021年調査)と比較すると10万円以上の差があります。

障害者雇用の給料については、こちらの記事「障害者雇用の給料は安くて生活できない?給与の現状や年収アップの方法を解説」で詳しく解説しています。

その上、障害者雇用の求人は、首都圏や関西圏など、大都市に偏っている傾向があるため、地方在住の場合、就職の選択肢が限られているという課題もあります。

障害者雇用に関する制度改定

障害者雇用に関連した制度は、定期的に改定されています。直近に改定された3つのポイントを紹介します。

精神障害者と発達障害者の雇用義務化

2018年4月の改定では、障害者雇用の対象に精神障害者と発達障害者が加わりました。

これにより、より多くの障害を抱える人の社会進出が可能になりました。

法定雇用率の引き上げ

法定雇用率は直近では2021年3月に引き上げられました。

改定前法定雇用率 2021年3月改定後 法定雇用率
民間企業 2.2% 2.3%
国・地方公共団体 2.5% 2.6%
都道府県等の教育委員会 2.4% 2.5%

この改定により、従来よりも少ない人員の企業にも障害者雇用の義務が生じるようになりました。

民間企業では従来は従業員数45.4人以上の企業に雇用義務がありましたが、現在は従業員数43.5人以上の企業に障害者の雇用義務が生じています。改定により新たに加わった従業員数43.5~45.5人未満規模の企業の2021年の実雇用率は1.77%で、法定雇用率達成企業の割合は35.1%でした。

これは、従業員1,000人以上の企業の実雇用率2.42%、法定雇用率達成企業割合55.9%と比べると大きく差があります。

精神障害者の短時間労働者算定方法の変更

精神障害者の雇用促進に向けて、労働者算定方法の特例措置が設けられました。

もともと、障害者雇用で働く人の人数の数え方は、障害の種類や労働時間により以下の表のように異なっています。

週所定労働時間30時時間以上 週所定労働時間20時間以上30時間未満
  • 身体障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 知的障害者
1 0.5
  • 重度身体障害者
  • 重度知的障害者
2 1

この改定により精神障害者・発達障害者のうち、以下の条件に当てはまれば従来は0.5人として数えられていたものが、1名として数えられるようになっています。

  • 雇入れから3年以内の人
  • 障害者手帳取得から3年以内の平成35年3月31日までに雇い入れられ、障害者手帳を取得された人

従来は、短時間労働の障害者雇用は2人雇用しなければ、1人としてカウントできませんでしたが、特例措置により、短時間労働の精神障害者を雇用すれば1人としてカウントされるようになりました。これにより精神障害者、発達障害者の雇用へのハードルが下がり、雇用が活発になりました。

障害者雇用とSDGs

近年話題のSDGs。その中に障害者雇用に関連する項目があるのをご存知でしょうか?

SDGs17の項目のうち、10『人や国の不平等をなくそう』が該当します。

SDGs10‐2では以下のような達成目標を示しています。

10-2
2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。

本目標では障害を持つ人への差別や偏見をなくすだけでなく、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などを遵守し雇用を促進することが企業に求められます。

障害を持つ一人ひとりの能力を最大限活かすだけでなく、さらに高めながら障害を持つ人が社会から取り残されないようにすることが、世界中の目標です。

障害者雇用で働こう

障害者雇用で働きたい場合に気になる3つのポイントを紹介します。

障害者雇用の就労支援

障害者雇用は全国のハローワークや障害者職業センター、就労移行支援事業所で探します。

一般的な転職サイトや転職エージェントでも障害者雇用を探せますが、件数が少ないため、エージェントを利用する場合は、障害者雇用専門のエージェントを選びましょう。

就労移行支援事業所は、事務職に活かせるPC操作やプログラミングなど、転職活動に役立つスキルを学びながら転職活動を行える支援事業所です。現状のスキルに自信がない方や、じっくりと時間をかけて自分に合った職場へ転職したい方におすすめです。

就労移行支援については、こちらの記事「【よくわかる!】就労移行支援とは?特徴や就労継続支援との違いも解説」で詳しく説明しています。

障害者雇用のメリット

障害者雇用のメリットは、障害に対する理解や合理的配慮を受けられる点です。一人ひとりの病気や障害に合わせた労働時間や業務内容を、双方同意の上で雇用契約を締結します。

具体的には病気や障害の負担となる営業や出張・肉体労働は免除し、デスクワークやリモートワークの割合を増やすなどがあります。そのほかに通院や治療などの休暇も取りやすくなり、職場への定着率が高くなる傾向があります。

障害者雇用についてはこちらの記事「障害者雇用で正社員になれる?実際の雇用状況や正社員になる方法をご紹介」でも解説しています。

障害者雇用のデメリット

障害者雇用のデメリットは、仕事の内容や働ける企業が限られている点です。その他にも一般雇用よりも求人枠が少なく希望するエリアで働けなかったり、キャリアアップが難しいケースもあります。

それ以外にも労働時間や業務内容が制限される、給料が低い求人が多いなどのデメリットがあります。

障害者雇用の給料については、こちらの記事「障害者雇用の給料は安い?給与の現状や年収アップの方法を解説」で解説しています。

障害者雇用制度を活用し能力を活かして働こう

病気や障害を抱えていても、能力や適性に合わせて働ける社会の構築が進んでいます。

国の法改正だけでなくSDGsも障害者雇用を後押ししています。体調や障害の程度に合った働き方ができる未来は、すぐそこまで来ているのです。

大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし医療ライター・監修者として活躍中。https://odaakari.com/