公開日 2022年12月19日 最終更新日 2024年8月12日
「心筋梗塞の治療後も仕事を再開できるのだろうか…?」
突然発症した心筋梗塞の治療後、身体が回復しつつも、今後復職ができるか不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
心筋梗塞の進行具合によって状況は変わりますが、周りから必要な配慮を得られていれば仕事を継続することは十分に可能です。そのためには、回復の見通しを把握しつつ、職場とじっくり話し合う必要があるでしょう。この記事では、心筋梗塞の症状や仕事を行うにあたってのポイントについてご紹介します。心筋梗塞を発症して、仕事を続けられるか不安な方に読んでもらいたい記事です。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
心筋梗塞とは?
心筋梗塞とは、なんらかの原因で心臓に流れる血流が悪くなる「虚血性心疾患」のひとつです。ここでは心筋梗塞の概要について解説します。
心臓の血管が詰まって壊死する病気
心筋梗塞とは、心臓に血液を送っている「冠動脈」がプラーク(脂肪)や血栓で詰まることで発症する病気です。心臓に血液を送れなくなるので、酸素や栄養が不足して細胞の壊死がはじまります。
心臓の壊死は血流が止まって約20分後に始まり、状態が悪化すると死に至る可能性もあるため、非常に危険な病気です。心筋梗塞には以下の2種類に分かれます。
- 急性心筋梗塞
- 陳旧性心筋梗塞
突然発症したものが急性心筋梗塞に分類され、心臓の壊死がはじまってから時間が経過した後は慢性心筋梗塞と呼ばれます。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の代表的な症状は、突発的な激しい胸の痛みと圧迫感です。その他にも、肩・首に広がる痛みや、冷や汗、吐き気を伴うこともあります。数時間経過すると痛みは落ち着きますが、これは心臓の壊死がはじまって感覚がなくなっているためです。
症状が進行すると呼吸困難や意識障害を経て、治療をしなければ最終的に死に至ります。このように、心筋梗塞は時間が経過するたびに症状が悪化するので、1秒でも早い迅速な処置が必要です。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞の原因の多くが、血管が硬くなる「動脈硬化」によるものです。動脈硬化は喫煙やストレス、食生活の乱れから引き起こされる「生活習慣病」の1つです。動脈硬化によって血管の壁が傷つきやすくなり、その部分にプラークが溜まりやすくなります。
塊となったプラークが血栓として血管内を流れ、冠動脈に詰まることで血流が止まり、心筋梗塞が発症します。心筋梗塞を予防するためには、食事の栄養バランスを整えたり、定期的に運動を行ったりして生活習慣を整えることが大切です。
心筋梗塞と生活習慣の関係については、こちらの記事「生習慣活病と心臓病の関係性は?食事や睡眠を見直して予防・改善を目指そう」で詳しく解説します。
心筋梗塞の治療方法
心筋梗塞のおもな治療方法は以下の通りです。
- カテーテル治療
- 薬物治療
カテーテル治療は、血管が詰まっている部分を広げて血流の流れを確保する方法です。心筋梗塞の原因となる血栓を取り除いたあと、ステントと呼ばれる金属製の網で血管を広げた状態を維持します。
薬物治療は、「抗凝固薬」や「抗血小板薬」を使用して、詰まっている血栓を溶かしたり、新たに血栓ができないようにしたりする方法です。心筋梗塞による痛みや呼吸困難がみられる場合、酸素や鎮痛効果のある「モルヒネ」を投与することもあります。
心筋梗塞後の後遺症
心筋梗塞は早期の治療をすれば、心臓に障害を抱えることなく回復するケースもあります。しかし、慢性的な心不全や不整脈などの後遺症が残る可能性もあります。
心筋梗塞の治療後は、身体の状態にあわせてリハビリを実施し、心筋梗塞の再発や後遺症の悪化を防ぐことが大切です。身体機能の改善を図るリハビリ以外にも、生活や食事、内服などの指導も並行して行います。普段の生活を取り戻すためにも、心筋梗塞の治療だけでなく、その後のフォローも重要です。
心筋梗塞を発症した後も仕事はできる?
心筋梗塞になった後に仕事を続けられるか不安な人は多いでしょう。ここでは心筋梗塞を発症した後も仕事はできるのかについて解説します。
退院後の治療と仕事は両立できる
結論からいうと、心筋梗塞を発症した後でも仕事を継続することは十分に可能です。「心疾患」という枠組みでみた場合、身体的な配慮によって長期的な復職が可能な方は多いとされています。
もちろんその人の病気の種類や症状、仕事の内容によって治療と仕事のバランスは変化します。それでも「病気になったから」という理由で、すぐに仕事を諦める必要はありません。職場に病気のことを伝えて、どうすれば復職できるかを相談してみましょう。
病気や治療について理解することが大切
心筋梗塞を発症することでできる仕事に制限が生まれることがあります。そのため、発症前にしていた仕事に復帰することができない場合もあります。しかし、大切なのは心筋梗塞という病気を理解し、現在の回復状況や治療方針について医師と相談することです。
仕事をすることに不安を感じることもあると思いますが、適切なサポートを受けながらどのように治療を進めていくのかを詰めていきましょう。その際はご家族と一緒に情報を共有して、協力体制を作れるように準備しておくとよいでしょう。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。
心筋梗塞の発症後も無理なく仕事をする方法
実際に心筋梗塞後も仕事をするには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは無理なく仕事をする方法について解説します。
上司や同僚に相談して配慮を得てもらう
病気のことを上司や同僚に伝え、配慮をしてくれるような仕事環境を整えましょう。
たとえば、以下のような点があげられます。
- 通院のために休みや勤務時間を調節してもらう
- 休憩時間を増やしてもらう
- もしものための医療器具を配置してもらう
など
このように、勤務に関して柔軟に対応してくれたり、体調不良になったときの対策が整っていたりする職場が望ましいです。病気に対しての理解を得てもらうためにも、現在の身体の状況について詳しく伝えましょう。
身体的負担の少ない仕事に変える
身体的な負担が少ない仕事に変更するのも重要です。肉体労働をはじめとした身体的な負担が強い仕事を行うと、体調や症状の悪化につながります。特に、医師から制限すべき行動について伝えられている場合、その決まりは必ず守りましょう。
復職後の肉体労働は避け、負担の軽い仕事に切り替えられるか上司に相談してみましょう。既存の仕事の切り替えがむずかしいのであれば、事務職や在宅ワークなど、身体的な負担が少ない職場に変更するのも1つの手段です。
心臓病の人が体に負担をかけずに働く方法については、こちらの記事「心臓障害(心臓病)の方が転職すべき職場とは?体に負担をかけずに働く方法やおすすめの仕事を解説」で詳しく解説しています。
障害者雇用のある職場で働く
現在の職場で仕事を継続することがむずかしい場合は、障害者雇用枠のある場所で働くのもおすすめです。障害者雇用枠のある職場は、病気に対して理解や配慮を得られやすい環境が整っています。
そのため、障害を持った方の就職を想定していない一般雇用よりも仕事がしやすいでしょう。一方で、障害者雇用枠のある職場は少ないため、仕事の種類がある程度絞られる点だけ注意しましょう。
心筋梗塞の治療をしながら仕事との両立を目指そう
心筋梗塞は発症後の処置が遅れるほど症状が悪化し、ときには命にも関わる危険な病気です。しかし、周囲のサポートを受けられる環境が整っていれば、復職して仕事を継続できる可能性もあります。
まずは今後の回復具合を把握しつつ、職場の上司に病気のことを伝え、配慮を得られるように進めていくことが大切です。病気になって不安に思う方も多いと思いますが、1人で悩まずに医師や職場の人と情報を共有して、復職の道を目指してみましょう。