公開日 2023年4月18日 最終更新日 2023年12月18日
大学卒業直前に電車で倒れ(当時の話はこちら)、AEDでの救命措置を受けた僕は、S-ICDの植込み手術を受けることになりました。S-ICDは、不整脈が発生したときに自動で電気ショックを発生させ、正常な心拍に戻すための機器で、皮下植込み型除細動器とも呼ばれます。
当時はS-ICDなんて聞いたこともなかったし、物心ついてから手術を受けるのも初めてのことでした。
手術から4年ほど経った今、当時を振り返り、手術までの流れや術後のことについて紹介します。
またS-ICDについては、こちらの記事「S-ICD(皮下植込み型除細動器)とは?ICDとの違いやメリット・デメリットを解説!」で詳しく解説しています。
執筆:宮﨑 駿
ライター・編集者。大学卒業直前に心室細動を起こし、AEDによる救命を経験。現在はS-ICDを挿入している。障害者雇用専門の転職エージェントを経験し、ライター、編集者として独立。やたらと甘いものを食べている。(Twitter:@hayawo_)執筆記事一覧
【目次】
状況を理解する前に手術日到来
入院から手術までは、大体2週間ほどでした。
僕の場合は、電車で倒れて緊急搬送→ICU→HCU→一般病棟という流れでした。一般病棟に移るまでに、1週間ほどかかってしまったので他の人よりも手術までが長かったかもしれません。
一般病棟に移ってからは、検査や主治医との面談、簡単なリハビリなどをしながら、また1週間ほど過ごしました。HCUに移ってから手術日までは、万が一心室細動を再発しても良いように、常に心拍の計測機器を装着した状態での生活でした。
そして、満を持して手術の実施日を迎えました。今振り返ってみると「手術まで意外と時間がかかったな」とも思いますが、当時はバタバタしている間に、気づいたら手術日だった、という感覚でした。
S-ICDの植込み手術は難しいものではないと聞いていたこともあり、あまり緊張はありませんでした。
というより、その時「命を落としかけて、そのうえ体に機械を植え込むことになった」という状況を、自分ごととして捉えきれてなかったことが大きかったのかもしれません。そのため僕よりも両親が、手術について主治医に細かな点まで確認してくれていました。
ただ、病気になってしまったことより、「生きててラッキー(主治医からは何度も、本当に運が良かったと言われた)」の方が強かったので、受け入れられなかったというより、バタバタしてて理解するのが間に合わなかったんだと思います。
体感3分の手術
手術自体は、本当に寝て起きたら終わってたという感覚でした。時間にすると大体2時間程度だったそうですが、体感数分といったイメージ。
手術室まで運ばれ「麻酔入れまーす」というところまでは覚えていますが、次に記憶があるのは病室まで運ばれているところでした。手術の感想としては「麻酔ってすごい」しか残っていません。
しかし、麻酔からはっきり目が覚めてからが大変でした。術後は痛みが出るとは聞いていましたが、予想以上でした。
夕方には、はっきりと意識が戻っていたんですが、痛みが強く、痛み止めも「効いてないじゃんか」と勝手に怒っていました。もちろんしっかり効いていたはずですが。
結局その日は夕食もバナナだけ食べて残してしまい、消灯時間を過ぎても眠れませんでした。流石にそれ以降は慣れてきて、日が変わる頃にはなんとか眠れるようになりました。
そして朝起きると、体を動かさなければ全く痛みがない状況まで落ち着き、その状況の幸せを噛み締めることに。
一応補足にはなりますが、僕自身痛みに弱いタイプ(去年歯医者の治療でちょっと泣いたレベル)らしいので、他の人はそこまで痛みが出るわけではないかと思います。怖がらせてしまい申し訳ありません。でも僕には痛かったんです。
「若さ」が原因で退院延長
まだ起き上がったり、手術箇所を触られたりすると痛むことはありましたが、眠れないほどではなく、翌日からはそこまで不便なく生活できるようになりました。
あとは腫れが引けば退院ということで、予定では手術から5日から1週間が目安と言われていました。せっかくの学生最後の春休みに入院していたこともあり、とにかく退院が楽しみでした。
しかし手術から3日ほど経ったタイミングで主治医から、腫れが引いてないから予定通りの退院は難しいかも」と宣告。手術をして体の中をいじくったことと、体に異物(S-ICD)が入っていることで、体が反応してしまっているのが原因とのことでした。
一般的には数日で腫れが引くとのことだったんですが、当時22歳で体が若かったため、過剰に反応が出てしまっている状態でした。その結果、退院の延長が決まりました。
それからは毎日朝に退院ができるかどうかのチェックを受ける日々に。結局、予定より5日ほど延びてからの退院になりました。
まさか若さに苦しめられることになるとは思いませんでした。
退院後にもトラブル発生したけど、おおよそ問題なし
結局、入院から退院するまで3週間ほどかかりました。
入院中は病院内から一度も出れなかったので、3週間ぶりの外の世界はとてつもなく気持ちよかったです。
しかし、その日の夜に予想外の事態が発生。手術では、左脇の下とみぞおち部分の2箇所を切開したんですが、みぞおち部分の手術後から出血してしまったんです。
出血量はごくわずかではあったんですが、驚いてしまいすぐに病院へ。退院したばかりの病院にその日のうちに帰ってくることになるとは思いませんでした。
ただこの出血については特に問題がなかったそうで、再入院にはならずほっとしました。それからも1週間ほどは出血することもありましたが、自然と治りました。またそれ以外に、手術跡の変色もあったんですが、これも1ヶ月経つ頃には元通りに。
入院したのが、大学卒業前の2月だったので、さすがに卒業旅行は諦めることになりましたが、卒業式はギリギリ間に合いました。大学に行くと、友人たちから根掘り葉掘り聞かれることになりましたが、やっと日常に戻れたなとそこで実感しました。
こちらは卒業式の日の写真です。さすが3週間入院しただけあって、元気不足感が溢れ出ていますね。3週間ほとんどベットの上で過ごしていたので、退院後1週間くらいはこんな感じでした。
入院から術後、退院までの流れはこんな感じでした。痛みに弱過ぎたり、体の反応が過剰だったり、参考にならない部分もあったかとは思いますが、これからS-ICD植え込み手術を受ける人が少しでもほっとしてもらえたらなと思います。