ブルガダ症候群とはどんな病気?発症する原因・症状や仕事に対する影響について解説

公開日 2023年4月20日 最終更新日 2024年8月23日

身体に問題がない状態でも、急な失神や心停止を引き起こすブルガダ症候群。発症後はまた再発作しないか不安になるだけでなく、仕事にも影響が出ないか心配ですよね。ブルガダ症候群で仕事を制限するケースは少ないですが、植込み型除細動器(ICD)の治療後は特定の作業は控えた方がいい場合があります。

この記事ではブルガダ症候群についてと、仕事へどのような影響をおよぼすのかについてご紹介します。ブルガダ症候群の知識を深めることで、発症後も仕事を問題なく行うためのヒントを得られるでしょう。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

ブルガダ症候群とは

ブルガダ症候群とはどのような疾患なのでしょうか。ここではおもな原因や症状などについて解説します。

突然死の危険性がある疾患

ブルガダ症候群は、突然死の危険性がある「心室細動」を引き起こす疾患です。心室細動とは心臓がけいれん状態となり、血液を十分に送れず心停止してしまう種類の不整脈を指します。ブルガダ症候群は心臓の機能や構造自体に異常が起こるわけではなく、発作が起こるまでは身体への問題がみられないことが特徴です。

心臓が急停止して死亡した場合に、ブルガダ症候群が関与していることがあるため「ポックリ病」とも呼ばれていました。また、症状がまったく現れないものを「無症候性ブルガダ症候群」ともいいます。

ブルガダ症候群の原因

ブルガダ症候群は、心臓の電気信号が乱れることで引き起こされるといわれています。心臓は電気信号によって規則正しく動いているため、そのリズムが乱れると血液がスムーズに送れなくなります。

その電気信号の乱れを引き起こす原因が、「ナトリウムチャネル」と呼ばれる物質の遺伝子異常だとされています。ブルガダ症候群患者の20%に、この遺伝子異常が見つかったという研究結果もあり、遺伝子異常は原因の1つと言えます。

しかし、あくまで遺伝子異常なので、遺伝性疾患とは異なります。そのため、家族や血縁者に発症者がいなくともブルガダ症候群を引き起こすケース(孤発性)も少なくありません。また、ブルガダ症候群は30〜50代の男性の割合が多いため、「男性ホルモン」による関係もあるのではないかとも考えられています。

ブルガダ症候群の症状

ブルガダ症候群の症状はおもに「失神」と「突然の心停止」で、特に夜間に起こることが多いとされています。これらの症状は心室細動だけでなく、別の原因が潜んでいる可能性もあるので、医師の診察や検査が必要です。

ブルガダ症候群による突然死は1年で約10%といわれていますが、無症候性の場合では年で1%にも満たないと報告されています。

ブルガダ症候群の治療法

ブルガダ症候群を発症した場合、どのような治療をするのでしょうか。ここではおもな治療法についてご紹介します。

植込み型除細動器(ICD)による治療

ブルガダ症候群による心室細動の発症をおさえる適切な方法としては、植え込み型除細動器(ICD)による治療が挙げられます。ICDは心臓の脈を監視して不整脈が現れたときに電気ショックを起こし、発作を防ぐ機能があります。そのため、急な心室細動に素早く対応し、突然死を防ぐ働きが期待できます。

特に既往歴に心停止や心室細動がある方は再発のリスクが高いので、ICDの植え込みが推奨されています。ICDに似ている機器として「ペースメーカー」がありますが、それぞれ機能が異なります。ペースメーカーは心臓のリズムを一定にするための機器であり、脈拍のスピードが遅くなる「徐脈」の方に使用されることが多いです。

ICDについては、こちらの記事「ICDとは?機能や植え込みにかかる費用を解説!生活や仕事に与える影響とは」で詳しく解説しています。

【関連コラム】

薬物療法や生活習慣の指導

ICDによる治療の他には、薬物治療や生活習慣の指導などが行われます。発作による心停止を防ぐために、以下のような治療薬を服用します。

  • ペプリジル(抗不整脈薬)
  • ジソピラミド(抗不整脈薬)
  • シロスタゾール(血液が固まるのを防ぐ薬)
  • イソプロテレノール(血管を拡張させる薬)

また、抗うつ薬やナトリウムチャネル遮断薬といった薬は、発作の頻度が増えるリスクもあるため注意が必要です。生活習慣の指導では睡眠時間や栄養バランスなどを整えて、発作だけでなく他の疾患の予防につなげます。

ブルガダ症候群の発症後は仕事ができる?

実際にブルガダ症候群を発症した方は、仕事ができるのでしょうか。結論をいうと、仕事を問題なく継続できるケースは多いと考えられますが、いくつかの注意点もあります。ここではブルガダ症候群を発症した方が仕事を継続するためのポイントについてご紹介します。

ICDの装着後は仕事内容に注意が必要

ブルガダ症候群による仕事内容の制限はないとされていますが、ICDを装着した場合はデバイスに支障をきたすような作業は控えましょう。ICDを装着した方が避けるべき仕事とおすすめの仕事は、以下の通りです。

【避けるべき仕事】

  • 電動工具を使用する仕事
  • 発電機に関係する仕事
  • ICDを埋め込んだ腕に負担がかかるような仕事
  • 重い荷物を運ぶ仕事
  • 車を運転する仕事

【おすすめの仕事】

  • 事務作業をはじめとしたデスク中心の仕事
  • リモートワークでの仕事

また、無症候性のブルガダ症候群の場合は、激しい運動以外の制限はありません。避けるべき仕事を現在行っている場合は、別の内容に変更しましょう。

心臓病の人に向いてる仕事については、こちらの記事「心臓病の人に向いてる仕事とは?負担がかからない仕事とできない仕事との違いを解説」で詳しく解説しています。

治療や通院時は職場の理解・協力を得よう

ブルガダ症候群の治療や通院をスムーズに行うには、職場の理解と協力が必要です。そのためには、疾患について職場にしっかりと説明し、今後の見通しを共有することが大切です。また、休職や病気休暇などの制度の活用もおすすめです。

休暇制度は職場によって期間や条件が異なるため、就業規則を確認してから上司に相談しましょう。

障害者雇用で働ける可能性もある

ブルガダ症候群を発症しICDを植え込むと、身体障害者として障害者手帳を取得できる場合があります。そして障害者手帳を取得すると、障害者雇用での就労が可能になります。

障害者雇用では、業務内容や勤務時間の調整など、個人の障害に合わせて無理なく働けるような合理的配慮を企業側から受けることができます。ブルガダ症候群を発症してからの仕事に不安があるのであれば、障害者雇用での就労を検討しましょう。

障害者手帳については、こちらの記事「心臓疾患の人は障害者手帳を持つべき?取得するメリットや申請方法について解説」で詳しく解説しています。

生活習慣に気をつける

ブルガダ症候群の再発作をおさえるためにも、規則正しい生活習慣を心がけましょう。ブルガダ症候群は夜間時だけでなく、食後や飲酒のあとにも発作を起こしやすいといわれているので、食べ過ぎやアルコールの過剰摂取は控えてください。

また、良質な睡眠をとるためにも起床・就寝時間を一定にしたり、ストレスを溜めすぎないようにしたりなどの工夫も大切です。生活習慣を整えれば、ブルガダ症候群以外にもさまざまな疾患の予防にもつながるでしょう。

生活習慣と心臓病の関係については、こちらの記事「生習慣活病と心臓病の関係性は?食事や睡眠を見直して予防・改善を目指そう」で詳しく解説しています。

ブルガダ症候群の治療に努めて仕事の継続を目指そう

ブルガダ症候群は急な失神や心停止を発症し、最悪の場合死に至る危険性がある疾患です。治療法は薬物療法や生活指導だけでなく、急な発作を防ぐためにICDを用いることが多いといえます。

仕事で制限すべき内容は、ICD治療の有無によっても大きく変化しますが、なるべく重労働の作業を控えることがおすすめです。ブルガダ症候群の発症後も仕事を継続するためにも、治療の他にも職場への協力を得られるような環境を整えておくことが大切です。

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5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)