公開日 2023年4月25日 最終更新日 2023年11月11日
妊娠・出産がきっかけで発症する心臓病があることを知っていますか?仕事をしていると妊娠・出産したら復職ができる環境になってきていますが、心臓病になったら簡単には復職できません。
自身の経験から、本人及び家族、そして職場の方が心臓病への理解を深めるきっかけになれたらと思います。
執筆:kazumi
先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。執筆記事一覧
【目次】
仕事と出産
私は、心臓病を発症するずっと前から理学療法士として病院勤務をしていました。当時は訪問リハビリという、自分で車を運転して現場へ向かい、リハビリを実施するという形で働いていました。
訪問リハビリでは妊娠6ヶ月までお世話になり、その後は病院内の業務へ変更となりました。就職して5年目に一人目、8年目に二人目を出産しました。
出産と心臓病
二人目を出産後、実家には帰らず、家族4人でアパートに住んでいました。
出産からしばらくは特に何事もなかったんですが、3週間後、夜間に突然背部の苦しさと息苦しさを感じるようになりました。しかし、まだ生後間もない赤ちゃんがいたため救急受診はせず、次の日旦那に子供達をお願いしてから、近くの総合病院を受診しました。
身に覚えのない症状だったため、何科を受診したらいいか分からず、受付に相談すると循環器内科を案内されました。「なぜ循環器内科?」と疑問に思いながら、診察を受けました。
倦怠感が強く、息苦しい状況でしたが、自分の足で歩き、はっきり状況を話すことができました。しかし、その時には血圧が測定できず、肺に水が溜まっている状況とのこと。そこで産後である事を伝えた瞬間に、医師が大学病院へ搬送できるか連絡を取り始めました。そして「周産期心筋症の疑いがあるため、大学病院へ行きます。」と先生から告げられ、救急車で救急搬送されました。自分は出産の疲れかと思っていましたが、妊娠・出産がきっかけで心不全を引き起こす病気があることをこの時初めて知りました。
大学病院の救急では、医師より「先手先手で行くから」と言われ、私もその対応を希望しました。結局、重症心不全となっており、バルーンパンピング(心臓の働きを助ける補助循環法の一種)を行うも回復せず、多臓器不全となったため、体外式補助人工心臓(LVAD)を装着しました。
ICUでの1ヶ月、状況を受け入れられず、子供達にも会えず、毎日泣いていました。そんな中、看護師さん達やリハビリスタッフに支えられ、心臓リハビリテーションを実施してきました。
一般病棟に移り、自身も心臓リハビリテーションを勉強し、症例を探し、理学療法士としての自分としてやれることを探していきました。あまりにも変化のないエコー検査の結果をみて落ち込み、追い討ちをかけるように心臓移植への登録の話がでてきました。
3ヶ月経過し、どんな形であれ、生きていれば子供達の成長を見ることができると腹を括り、コツコツとリハビリに取り組みました。なんとか発症から6ヶ月後体外式補助人工心臓から離脱し、退院することが出来ました。
心臓病と仕事
退院後は実家へ引越し、1年間の自宅療養を経て、復職しました。しかし、復職の話を職場に相談するにも、ここまでの経過を辿った職員がいなかったため、すぐにはいい返事がいただけませんでした。そこで、主治医とも相談し、職場に「リハビリ勤務」という形の働き方を提案し、3ヶ月後正式に復職することができました。
妊娠・出産がきっかけで、心臓病になることもあることがあります。息切れや倦怠感は産後によくある症状だからこそ、無理をせず、様子をみていくことが必要です。
そして、本人だけでなく、家族や職場の方にも知ってもらうことで、早期発見にもつながると思います。また、重症な状態からでも回復した方がどのような働き方があるかを知ってもらうことで、心臓病のある方でも復職できるきっかけがあると思います。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。