公開日 2023年6月22日 最終更新日 2024年8月15日
急な心筋梗塞に見舞われたあと、退院してから普段通り生活ができるのか不安になりますよね。心筋梗塞は発症した状況や治療タイミングによって、どの程度後遺症が残るかが変わります。退院後も安全に過ごすためには、心臓に負担のかからないような生活を送ることが大切です。
この記事では、心筋梗塞の退院後の生活で気をつけるポイントや仕事復帰の際の注意点などについて解説します。注意すべきポイントをおさえることで、症状を悪化させないような行動をとれるでしょう。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
心筋梗塞に後遺症はある?
心筋梗塞とは、脂肪や血の塊などが心臓の血管に詰まって発症する疾患です。血管が詰まって心臓へ血液が流れなくなると、やがて細胞が壊死してしまい、最悪の場合死にいたる危険性もあります。
発症後すぐに治療をして心臓の壊死をおさえられれば、目立った後遺症もなく普段通りに生活を送れる可能性が高まります。しかし、処置が遅れて心臓の壊死が広がっていた場合、治療後も後遺症が残り、慢性的に心不全や不整脈を引き起こすケースも。そういった後遺症があることで、退院後の生活にも影響が出ることがあります。
心筋梗塞については、こちらの記事「 心筋梗塞になっても仕事は続けられる?後遺症の有無や無理なく働ける方法を解説」で詳しく解説しています。
退院後の生活で気をつけるべき点
心筋梗塞を治療し、退院したあとの日常生活ではどのようなことに気を付けるべきでしょうか?ここでは後遺症の有無に関わらず退院後の生活で安全に過ごすためのポイントをご紹介します。
自宅でもリハビリを継続する
自宅に戻ったあとも体力や筋力などの身体機能を維持するために、リハビリを継続することが大切です。リハビリで行う運動には「有酸素運動」と「筋力トレーニング」などがあげられます。退院後でも気軽に行える有酸素運動としては、心臓にかかる負担の少ないウォーキングがおすすめです。
また筋力トレーニングでは、以下のような内容の運動を行います。
- スクワット
- かかと上げ
- 膝伸ばし
- 腕上げ
筋力トレーニングは有酸素運動よりも心臓に負荷がかかりやすいので、無理のない範囲で行うことを心がけてください。これらのリハビリを自宅で行うときは、事前に主治医と相談してどのくらいの頻度・回数ですればいいのか確認しましょう。
心臓リハビリについては、こちらの記事「心臓リハビリテーションって何をするの?心リハ指導士が伝えるリハビリの意義」で詳しく解説しています。
生活習慣のリズムを見直す
生活習慣のリズムを見直して、健康的な毎日を送りましょう。睡眠不足になったり食事の栄養バランスが乱れたりすると心臓に負担がかかり、心筋梗塞の再発や後遺症の悪化につながる恐れがあります。いままで生活習慣が乱れていた方は、以下のようなポイントを意識してみましょう。
- 毎日の就寝・起床時間を一定にする
- 禁煙する
- お酒を飲みすぎない
- 肉だけじゃなく野菜も積極的に食べる
また生活習慣を見直すことは症状の悪化を防ぐだけでなく、糖尿病や脳卒中をはじめとした生活習慣病の予防にもなります。
生活習慣病については、こちらの記事「生習慣活病と心臓病の関係性は?食事や睡眠を見直して予防・改善を目指そう」で詳しく解説しています。
内服薬を忘れずに飲む
内服薬を飲み忘れたり、自己判断で飲むのをやめたりしないようにしましょう。「薬を飲んでも効果があまり感じられない」「薬を飲まなくても調子がいい」などの理由で服用をやめる方もいるのではないでしょうか。
薬を飲まなくても変わらないと感じていても、身体のなかでは大きな問題につながっている恐れもあります。内服薬は自己判断ではやめたりせず、何か疑問があれば医師に相談してみましょう。
心臓に負担のかかることは避ける
心臓に負担のかかりやすい動きは症状を悪化させる原因となるので、できるだけ避けましょう。避けるべき動き・状況としては、以下の通りです。
- 荷物や布団などの重いものを持つ
- 激しい運動をする
- 長時間の運動をする
- 長期間の旅行をする
- 満員電車に乗る
身体的な問題だけでなく、精神的にも負担がかかりやすい状況にいるのも好ましくありません。特に退院してすぐは心身ともに疲れやすい時期なので、自分にとってストレスがかかることは避けるようにしてください。
心臓病とストレスの関係については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは?影響を受ける病気や適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。
退院後に仕事復帰するときの注意点
退院後に仕事復帰を考えている方は、どのような点に注意すべきでしょうか。ここでは仕事復帰の際のポイントについて解説します。
身体状況にあわせて勤務形態を調整する
職場と相談して、身体・精神的に負担がかかりすぎないような勤務形態で働きましょう。以下のような勤務制度があれば、活用することをおすすめします。
- 時差出勤
- 短時間出勤
- フレックスタイム制度
- 在宅勤務
職場によってはお試し出勤からはじめて、少しずつ身体を慣らしていけるように配慮されている場所もあります。仕事と治療を両立するためには、身体へのストレスをなるべくかけないような環境調整が必要です。最初の時期は焦らず、状態をみながら仕事復帰を進めていきましょう。
身体的な負担が強くない仕事に転職する
可能であれば、身体的な負担が強くない仕事に変更しましょう。特に肉体労働を中心とした仕事は心臓に負荷がかかりやすいため、おすすめできません。事務職や在宅ワークのような、デスクワークを中心とした仕事を選ぶといいでしょう。
現在の職場では仕事を変更できない場合は、職を変えることも一つの選択肢です。運動制限の範囲は症状によって異なるので、医師と相談してどこまで動けるかを事前に確認しておきましょう。
心臓病の人の転職については、こちらの記事「心臓障害(心臓病)の方が転職すべき職場とは?体に負担をかけずに働く方法やおすすめの仕事を解説」で詳しく解説しています。
障害者雇用枠のある職場で働く
身体障害者手帳を取得する予定のある方は、障害者雇用枠のある職場で働くことも1つの手段です。障害者雇用枠のある職場は障害に関しての理解や配慮を得られやすく、働きやすい環境が整っています。そのため、通常の職場よりも自分の症状に適した働き方ができるのが大きなメリットです。
一方で、障害者枠の求人は一般枠の求人と比較すると数が少ないため、仕事内容や場所がある程度制限される可能性がある点には注意してください。自分で働き口を探すのがむずかしい方は、ハローワークや人材紹介会社などに相談してみましょう。
障害者雇用については、こちらの記事「【2024年最新】障害者雇用の現状や課題、就労支援制度を具体的に解説」で詳しく解説しています。
仕事復帰のタイミングを考える
入院などによって仕事から離れている期間が長いほど「できるだけ早く仕事復帰をしたい」という焦りが生まれるかもしれません。しかし、退院したからといってすぐに仕事に復帰できるとは限りません。
上記でも解説したように、心筋梗塞の発症前と全く同じ生活や仕事が送れなくなっている人も少なくありません。また、焦って仕事復帰をすることで心身ともに無理をしてしまい、体調を再度悪化させてしまう可能性があります。
そのため仕事復帰のタイミングは、必ず主治医と相談しながら適切なタイミングを決めましょう。
心筋梗塞の退院後は身体に負担のない生活を送ろう
治療後の心筋梗塞の症状を悪化させないためには、生活習慣を見直したり、ムリのない範囲でリハビリを継続したりなどの工夫が必要です。また仕事復帰を目指す方は、勤務形態や作業内容を変えて、なるべく身体に負担がかからないように心がけましょう。
心筋梗塞によってどこまで後遺症が残るかは人によって異なります。そのため、現在の状態について医師と相談したうえで、注意すべき点を守りながら安全に生活を送れるようにしましょう。
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