公開日 2023年8月18日 最終更新日 2023年11月11日
先天性心疾患を持ちつつも、他の人と変わらない日常生活を過ごしていた私。育児も他の人と変わらずできると思っていました。しかし、やはり心臓への負担は大きかったです。乳児期や幼児期にどのような事が大変だったかを紹介したいと思います。
また、息子が2歳の時に私は再手術を受けることになりました。母親不在になる約1か月の入院、また、在宅だけれど育児ができない退院後の育児はどのようなものだったのか。当時の経験をお話ししたいと思います。
執筆:たらこ
先天性心疾患心室中隔欠損で3歳半で根治術を受ける。その後ごく普通に生活していたが35年経ち再手術。現在、息子と猫に翻弄される日々を送る。執筆記事一覧
【目次】
乳児期~幼児期の育児
0~2歳代
まず育児で大変だったのは睡眠不足です。息子が2歳になる直前くらいまでは夜間授乳や夜泣きの対応のため、毎晩夜中に何度も起きていました。夜泣きが酷いときは、そのまま朝を迎えることも。当然睡眠不足に。そして、私は睡眠不足になると動悸が起こりました。よくある産後のマイナートラブルで心疾患とは関係ないと思っていましたが、実際には「何が起こってもおかしくない状態ですよ!」と医師から言われるくらいに心臓の状態は悪かったのです。そして再手術を受けることに…。
動悸やむくみなど、産後や育児中のマイナートラブルは心疾患の症状とよく似ています。自分ではどちらの理由で症状が出ているのか分からないことも多いと思います。よく自分で観察し、主治医に相談をしてほしいと思います。
また、この年代は抱っこ抱っこの時期です。3~10数キロを一日中抱っこやおんぶしている生活はとても体力が必要になります。肩や腰の負担も大きいです。また、術後そんなに経っていない人は、傷や骨が痛むと思います。私も術後数か月は、切開した胸骨の痛みから12キロの息子を持ち上げることができませんでした。
2歳以降
子供が自分で歩いてくれるようになったら、抱えっぱなしの生活ではなくなるので負担が少なくなるだろう、とのんきに考えていましたが、実際は違いました。
まず、子供の体力はすごいです!毎日何時間も散歩や外遊びにつき合わされます。元気に遊んでくれるのは嬉しいことなのですが、それに付き合うとなるとだいぶ体力が必要になります。そして、自分の体調が悪かったり体力が追いつかなくても、子供には関係ありません。息子には小さい頃から私の心疾患について伝えていましたが、理解し我慢できるようになったのはつい最近です。
自分の病気や体調について、子供への伝え方はとても難しいと実感しました。あまり具体的に伝えすぎると、怖がったり心配させてしまうし、かといって漠然とし過ぎると理解しづらくなってしまいます。怖がらせず、でも分かりやすいように、言葉を選びながら何度も伝えています。
体調に心配を抱えている中、育児を全て一人で抱え込むのは得策ではありません。家族や地域の助けをできるだけ利用してください。私は乳児期からよく、息子を連れて地域の子育てサロンや児童館など、屋内で保育士さんのいる場を利用していました。また、一時保育を利用し、自分の休養を取れる日を作るようにしていました。
育児中の入院・手術~2歳児育児中に再手術を経験~
息子が2歳になる直前の頃、転勤により引越しをしました。それにともない転院し検査をすると、心臓の状態が悪化しており手術を示唆されました。
突然のことに大きなショックを受けましたが、すぐに「検査の時息子の世話は?もし手術になったら入院中息子はどうする?」と子供のことで頭がいっぱいになりました。引越しからまだ2週間。土地勘のない新しい場所で、その土地の子育て支援の情報も全く分からない。そして実家も遠く、手助けを求めるのは難しい。夫は協力的だが転勤早々何か月も休みを取って育児をすることはできない。自分の身体の心配より、私がいない間の息子の預け先を探すことばかり考えていました。
まずは、手術が本当に必要か、通院でいくつか検査を受けます。突然のことでしたので、保育園の一時保育もすぐには使えませんでした。病気の事に悩む暇もなく、すぐに使える一時保育先を探したり、ベビーシッターを検討したり、自治体の窓口に相談したり、毎日対策に明け暮れました。
検査結果が出て、早々に手術を検討することになりました。心臓の状態は思ったより悪く手術までは自宅で絶対安静。「家でゆっくり過ごしてください。運動はもちろん、重いものを持つのも自転車に乗るのもダメです!何が起こってもおかしくない状態です。」と言い渡されました。元気な2歳男児がいる中で「家でゆっくり過ごす」というのは無理なことです。ちょうどイヤイヤ期でもあり、着替えや歯磨き、お風呂やトイレ、散歩や買い物など全てで息子を抱っこしたり追いかけたり…。どう頑張っても「家でゆっくり」とは反対の生活にしかなりません。
早急に保育園に入園させねば、と主治医の意見書を持参し自治体の窓口で相談しましたが、居住地区で空いている保育園はありませんでした。まだ入院中でないこと、そして障害者手帳を取得していないという事で、入園の優先順位が低かったのです。事情を話すと、しばらくの間毎日一時保育で受け入れてくれると言ってくれた園があり、保育園が決まるまで一時保育を利用しました。
検査入院中もベット上で自治体の担当者や他の地区の保育園と電話で交渉をしていました。どうにか隣の地区で受け入れてくれる保育園が見つかり、手術1か月前にやっと保育園が決まりました。
手術のための入院期間は約1か月。退院後も1か月位は自宅で安静に、と言われたので、その期間は実家の母を呼び寄せ、同居し家事育児を助けてもらうことにしました。
退院後数か月はできる家事育児が限られました。術後1か月は入浴禁止でしたので、息子をお風呂に入れることができません。また、正中切開でしたので、胸骨の痛みから重いものを持ったり腕を突っ張ることができませんでした。おむつ替えや抱っこ、トイレやチャイルドシートや椅子からの上げ下ろしなど、思った以上にできないことが多かったです。
手術後、障害者手帳を取得したことにより、保育園入園の優先度があがり、翌年は居住地区の保育園に入園することができました。
まとめ
育児は思っていた以上に体力を使うものです。自分の都合で「ちょっと横になって休む」ということもできない時期があります。周囲に相談すると「無理をしないで」と言われますが、無理をしないとどうしようもない時もたくさん出てきます。
しかし、私もまずは「無理をしない」ことをおすすめします。そのために、家族の協力を得たり、地域の子育て支援の施設やサポートを調べアンテナを張っておきましょう。産後の体調不良は「よくあること」と思いがちですが、心疾患の症状とよく似ています。自分の体調を過信せず、体調をよく観察し主治医に相談しましょう。私のように入院や手術が必要になった場合、自分以外に育児を担当する人が必要になります。そんな時、保育園等の利用ができないと治療にとりかかることもできなくなります。障害がなくとも(障害者手帳があると保育園は入りやすいように思います)持病を持っている親が、いつでも安心して治療できる社会になって欲しいと思います。
心疾患を抱えての育児の大変な部分ばかり紹介してきましたが、手術や治療の辛さや不安から助けてくれたのも子供の存在です。どんなに落ち込んでいても、目の前に明るいパワーのかたまりのような息子がいることが、どれだけ気持ちを強くさせてくれたでしょう。ただただ私を大好きで必要としてくれる息子のために、絶対に元気になって家に帰る。当時まだお話ができなかった息子が、いっぱいしゃべれるようになるまで生きていっぱいおしゃべりする。その願いを叶えるため、手術や治療に前向きに取り組めました。
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