心臓は十人十色 情報に振り回されないことが病気と向き合うために必要

公開日 2023年7月4日 最終更新日 2023年11月11日

心臓病になったとき、心臓病の疑いがあると言われたとき、皆さんはどうしますか?

多くの人が、まず病名を調べるのではないでしょうか。今はスマホで調べればすぐに、病態、症状、治療法、予後などの情報や、その病気になった人のブログや動画発信なども見つけられます。
自分と同じ病気になった人がどんな生活をしてるかを知ることは、今後の自分の生活スタイルの参考になります。

ですが、同じ病名でも心臓が違えば症状も予後も千差万別です。同じことをしたからといって、同じ結果になるとは限りません。では、知り得た情報をどうやって自分の中に取り入れていけばいいのでしょう。病気があっても自分らしく生きるヒントがそこにはあります。

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執筆:大前 有香

理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。執筆記事一覧

【目次】

いつ誰が心筋梗塞になるかわからない

心筋梗塞は、WHOが発表した世界の死因第一位の虚血性心疾患のひとつです。私が心臓リハビリ指導士として働いていた頃にも、担当することが多かった病気です。

心筋梗塞については、こちらの記事「心筋梗塞になっても仕事は続けられる?後遺症の有無や無理なく働ける方法を解説」で詳しく解説しています。

心筋梗塞は奥が深い

心筋梗塞は冠状動脈という血管が狭窄・閉塞することで起こります。冠状動脈は、右冠状動脈と左冠状動脈があり、更に左は前下行枝と回旋枝に分かれます。そして、部位により1~15まで番号がつけられています。

冠状動脈は心臓の筋肉(心筋)に栄養を供給しており、それぞれの枝に栄養を供給する担当領域があります。したがって、どの血管が狭窄・閉塞したかで心筋への影響が異なります。

また、狭窄の程度によっても異なります。血管が完全に閉塞すると、栄養が供給されず心筋は壊死してしまい機能を失います。そして、完全に壊死した心筋は元に戻ることはありません。

つまり、壊死した心筋の範囲が広い程、心臓のポンプ機能は著しく低下するのです。心筋梗塞の主な症状は、持続する胸痛と言われますが、人によって左肩の放散痛や無症状ということもあります。

このように、「心筋梗塞」と一言で言っても、部位や程度、症状の感じ方など様々であり、心筋梗塞だけで本が一冊書けるほど奥が深いものなのです。

あなたの心筋梗塞とわたしの心筋梗塞は違う

これだけ奥が深い病気なので、同じ「心筋梗塞」という病名でも、症状や治療、回復過程も人によって異なります。

もし、自分が心筋梗塞を起こしてしまったときには、このことを頭の片隅に入れておいてください。あなたの心筋梗塞と隣のベッドの人の心筋梗塞は、似ているかもしれませんが別物なのです。

得た情報をどうするか

心筋梗塞を起こした後に、インターネットなどで情報を収集する人も多いでしょう。

最近は、SNSで自分の病気について発信している人も増えています。自分と同じ病気だったりすると、親近感がわくかもしれません。しかし、ここでも大切なのはその人と自分は違うということです。

生活スタイルは人それぞれ

SNSで自分と同じ年齢で心筋梗塞を起こした人を見つけたとします。その人は、心筋梗塞を起こして入院しました。

退院してからは、毎朝1時に起きて散歩をし、食事は3食すべて手作り。塩分は5g以下にしっかり管理。毎朝の血圧、体重測定は欠かしません。

仕事復帰もしていて、仕事を終えると1駅分歩き、休みの日は1時間運動して汗を流しています。

とても理想的な生活習慣ですよね。では、自分もこの生活ができそうですか?

元々まめな性格で、料理も運動も好きだったけどきっかけがなかった人はできるかもしれません。でも、めんどくさがりで、運動が大嫌いな人だったらどうでしょうか。

頑張ってこの生活スタイルを真似したとしても、きっと続かないでしょう。結局、どんなに素敵な生活スタイルも自分に合わなければ続きません。

そして、無理に頑張ることがストレスとなり、心臓に負担をかけるという悪循環に繋がる可能性もあります。大切なのは自分らしい生活スタイルを見つけ出すことなのです。

自分の生活習慣を見直す

自分らしい生活スタイルを見つけるためには、インターネットなどで得た情報をどう活かしていけば良いのでしょう。

前提として、心筋梗塞を含む虚血性心疾患の原因のひとつは生活習慣と言われています。つまり、心筋梗塞を起こす原因となったであろう生活習慣の改善が必要なのです。

たとえば、食事の管理が不十分だったと思えばどんな食事がいいのかを情報収集します。

そして、その中で自分にできそうな調理方法や減塩メニューなどを取り入れてみます。運動や睡眠も同じです。

今までの生活スタイルのどこが改善できるか見直して、それについて得た情報を自分に合わせて取捨選択していくことが大切なのです。

自分の心臓と向き合うことが大切

情報を取捨選択していく上で必要なことは、自分の心臓や病気について知っておくことです。人は心臓病になると不安になり、外から情報を得ようとします。

もちろんそれは大切なことですが、まずは自分の心臓や病気と向き合ってみましょう。

心筋梗塞ひとつをとっても、原因や病態は様々です。自分はどの冠状動脈が閉塞し、どの部分の心筋が障害を負ったのか。他の冠状動脈や心臓の機能には問題ないのか。

そこまで専門的なところを気にすることはありませんが、自分の身体のことですから、まず興味をもつことが大切です。

病気になると多くの人が、これからどうしたらいいのかを気にします。もちろん大切なのは再発させない、悪化させないことです。

ですが、どんな病気なのか、心臓がどんな状態なのか、そこを素通りしてしまうことが本当に多いのです。まず自分の心臓を知らなければ、これから先のこと、心臓病を再発しないためにどうしたらいいのかはわかりません。

情報は正しく受け取ろう

心臓病を発症すると、誰もが不安になります。不安になると情報を得ようとしますが、世の中にはポジティブな情報ばかりではありません。

そのような外の情報に一喜一憂するのではなく、まず自分の心臓と向き合い知っていく事が大切です。たとえ形は同じであっても、心臓に刻まれた歴史は人それぞれ違いますし、違って当たり前なのです。

自分の心臓や病気を知ることで、自分自身と向き合い、自分らしさとは何か、自分らしく生きていくとはどんなことかが見えてくるのではないのでしょうか。

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理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。