狭心症の発症を予防するには、適切な食事が重要であることをご存じでしょうか?偏った食生活は高血圧や糖尿病などにつながるだけでなく、狭心症の発症リスクも高まる恐れがあります。
この記事では、狭心症の発症をおさえるための食習慣についてご紹介します。食事する際のポイントを知ることで、狭心症の発症予防ができるようになるでしょう。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
狭心症とは
狭心症とはどのような病気なのでしょうか。ここでは狭心症の概要とその治療法についてみていきましょう。
狭心症は虚血性心疾患の1つ
狭心症は「虚血性心疾患」の1つで、心臓に流れる血管が狭くなり、血流が悪くなる状態のことです。狭心症を発症すると胸の締めつけや痛みが繰り返し起こり、数分以内におさまるのが特徴です。狭心症の症状は、活動している最中に急に発症する傾向にあります。
また、虚血性心疾患には「心筋梗塞」という病気もあります。心筋梗塞は心臓に流れる血管が詰まることで酸素や栄養が送れなくなり、細胞が壊死する病気です。症状がすぐにおさまりやすい狭心症とは異なり、心筋梗塞は長時間激痛をともない、場合によっては死亡する恐れもあります。
狭心症については、こちらの記事「狭心症の人に仕事の制限はある?治療を継続しながら働く方法を解説」でも解説しています。
狭心症の治療
狭心症の治療には、おもに以下の3種類があげられます。
- 薬物治療
- 心臓カテーテル治療
- 冠動脈バイパス治療
薬物治療では、血管を広げる薬や血液が固まりにくくなる薬などを服用し、狭心症の発症を予防します。心臓カテーテル治療は、「冠動脈(心臓に流れる血管)」にカテーテルを挿入して、狭くなっている血管を広げる方法です。冠動脈バイパス治療は、狭くなった冠動脈にバイパス(迂回路)を作って、血流を確保する方法です。
その他にも、狭心症を発症したときは、緊急用として冠動脈を広げる働きのある「ニトログリセリン」を服用することもあります。
ニトログリセリンについては、こちらの記事「心臓病のためにニトログリセリン(ニトロ)を使う人が知っておきたい10のポイント」で詳しく解説しています。
狭心症のリスクとなる病気
狭心症を発症するおもな原因は、血管が硬くなる「動脈硬化」によるものとされています。ここでは、動脈硬化を引き起こす可能性のある病気について解説します。
高血圧
高血圧とは、血圧が高くなる状態のことです。最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上となった場合に高血圧と診断されます。
血圧とは、心臓から血液を送り出す力のことです。血圧が高くなると、その分血液を送る力が強くなるので、血管にかかる負担が高まります。血管に負担がかかると次第に厚く、硬くなって動脈硬化を引き起こしてしまうのです。
高血圧を引き起こす原因として、塩分の過剰摂取や運動不足、ストレスなどがあげられます。
高血圧については、こちらの記事「高血圧の人には仕事制限がある?注意すべきポイントと利用できる制度を紹介」でも詳しく解説しています。
高脂血症
高脂血症とは、血液中にあるコレステロールや中性脂肪などの脂質が基準値よりも多い、あるいは少ない状態のことです。血中の脂質が多い状態が続くと、プラークと呼ばれる塊が血管のなかに作られます。プラークが徐々に大きくなると血管が詰まりやすくなり、虚血性心疾患を引き起こす原因となるのです。
また、高脂血症によって引き起こされる動脈硬化を、「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」と呼びます。高脂血症のおもな原因としては、肉の脂身やバター、加工食品などによる脂質の摂りすぎがあげられます。
糖尿病
糖尿病とは、血糖値(血液中の糖の濃度)が高い状態が続くことで発症する病気です。血糖値が高くなると血管に大きく負担がかかり、傷ついたり詰まったりする恐れがあります。その結果、動脈硬化を引き起こして虚血性心疾患につながってしまいます。
糖尿病によって引き起こされるのは、虚血性心疾患だけではありません。脳梗塞や神経障害、網膜症などのさまざまな重篤な病気のきっかけとなるのです。糖尿病の原因は、食べ過ぎや運動不足などがあげられます。
糖尿病は発症しても自覚症状がないケースも多いので、気づかないうちに病状が悪化することもあります。
狭心症を予防するための5つの食事のポイント
狭心症の発症を予防するためには、以下の5つの食生活を心がけることが大切です。
- 1. 減塩する
- 2. 脂肪・コレステロールの摂りすぎには注意する
- 3. 食べ過ぎない
- 4. 食物繊維やビタミンなどの栄養を摂る
- 5. 飲酒・喫煙をしない
ここではそれぞれのポイントについて解説します。
1. 減塩する
1つ目は、減塩を心がけることです。
塩分の摂りすぎは血圧が高めてしまい、動脈硬化を引き起こす原因となります。普段から濃いものをよく食べる方は、特に注意が必要です。
1日あたりの食塩の摂取目安量は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満とされています。減塩するためには、以下のような工夫が大切です。
- 薄味に慣れる
- 麺類を食べるときは汁を残す
- しょうゆやソースはかけるのではなくつけて食べる
- 柑橘系の酸味や香辛料、香味野菜を取り入れる
塩分を摂りすぎないような食生活を送り、健康な身体を目指しましょう。
2. 脂肪・コレステロールの摂りすぎには注意する
2つ目は、脂肪やコレステロールを摂りすぎないようにすることです。
脂肪やコレステロールが多く含まれている食べ物を食べると、高脂血症を引き起こす原因となります。脂肪やコレステロールの摂りすぎを防ぐことで、高脂血症だけでなく、生活習慣病の1つでもある肥満の予防にもなるでしょう。
レバーや肉の脂身などをなるべく避けて、きのこや海藻、こんにゃくなどの低脂肪のものを食べるようにすることが大切です。サバやサンマなどの青魚にはコレステロールを低下させる働きが期待されているので、そちらも積極的に摂るとよいでしょう。
3. 食べ過ぎない
3つ目は、食べすぎないようにすることです。
1日に必要なエネルギーを超えて食事をすると肥満になる恐れがあります。肥満を判定するにはBMI(Body Mass Index)が用いられ、「体重(kg)÷身長(m)2」の計算で求められます。この計算で肥満と判断される基準は25以上です。
肥満は高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を引き起こすきっかけとなります。肥満を防ぐためには、適切なエネルギーの摂取を心がけ、年齢や身長に応じた体重に近づけることが大切です。食事をする際は、腹八分目に留めるように意識してみましょう。
4. 食物繊維やビタミンなどの栄養を摂る
4つ目は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養を積極的に摂ることです。
食物繊維は排便を促し、便秘の解消につながります。それだけでなく、血中コレステロールの低下や血糖値上昇の抑制などの働きも期待されています。
ビタミンAやビタミンCには抗酸化作用があり、身体の酸化を防ぐことで動脈硬化の発症抑制につながるでしょう。また、ミネラルの一種であるカリウムには、体内のナトリウムを排出して血圧を下げる働きがあるとされています。
食物繊維やビタミン、ミネラルは野菜・果物などに多く含まれているので、普段の食事で積極的に取り入れていきましょう。
5. 飲酒・喫煙をしない
5つ目は、飲酒や喫煙をしないことです。
お酒を飲み過ぎると、心臓病や脳卒中などの発症リスクが高まる恐れがあります。適度なアルコールの摂取は身体によいとされていますが、飲み過ぎのリスクを考慮すると飲酒は避けた方が望ましいでしょう。
喫煙は動脈硬化を助長し、虚血性心疾患や脳卒中を引き起こす原因となります。喫煙は吸っている側だけでなく、周囲にも受動喫煙として悪影響をおよぼす可能性もあります。普段から飲酒や喫煙をしていた方は、これを機に禁酒・禁煙を目指してみましょう。
正しい食事を心がけて狭心症の発症を予防しよう
狭心症は虚血性心疾患の1つで、おもな原因は動脈硬化とされています。動脈硬化は、高血圧や高脂血症、糖尿病などの病気がきっかけで引き起こされることもあります。
そのようなリスクを防ぐには、減塩や食べ過ぎの防止、野菜・果物の積極的な摂取が重要です。狭心症を発症せず、健康な毎日を送るためにも、正しい食事を心がけるようにしましょう。