障害者 給料

障害者雇用の給料は安くて生活できない?給与の現状や年収アップの方法を解説

公開日 2022年9月5日 最終更新日 2023年9月28日

障害者雇用の給料は障害の程度や働き方によって大きく異なるだけでなく、一般雇用よりも給料が低くなる傾向があります。

今回は障害者雇用の給料の現状や給料差が生まれる原因を、最新データをもとにまとめました。

【目次】

障害者雇用とは?一般雇用の違い

障害者雇用とは、障害者手帳を取得している身体障害者・知的障害者・精神障害者が障害者基本法の元雇用される雇用形態です。障害者雇用と一般雇用の違いを以下にまとめました。

障害者雇用 一般雇用
  • 障害や病気・特性に対し配慮が受けられる
  • 障害者手帳を持っている必要がある
  • 障害者雇用率制度の中で働く
  • 一般雇用より求人が少ない
  • 障害や病気・特性に対する配慮が受けにくい
  • 障害のない人と同条件で働く
  • 障害や病気・特性を伝える必要はない
  • 求人が多い

障害者雇用に関連する法律は適宜改定され、障害を持つ人が自分らしく働けるようにさまざまな取り組みが行われています。

障害者雇用については、こちらの記事「障害者雇用はデメリットしかないって本当?企業で働くメリットとデメリットを解説!」で詳しく解説しています。

障害者雇用の給料の現状

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障害者雇用で働くとどれくらいの給料が貰えるのでしょうか?2018年に報告された厚生労働省の障害者雇用実態調査結果を元に解説します。

障害別の給料の現状

調査結果では、障害別に1か月の平均賃金をまとめています。結果からは障害ごとの給与平均額と特徴が明らかになりました。順に紹介します。

身体障害者

身体障害者の超過勤務を除いた1か月分の所定内給与額は、204,000円です。これは同年の一般労働者の所定内給与額、312,288円と比べると10万円以上の差があります。

次に週所定労働時間別の1か月の平均賃金は、以下の通りです。

身体障害者平均 通常(週30時間以上) 20時間以上30時間未満 20時間未満
21万5,000円 24万8,000円 86,000円 67,000円

出典:平成30年度障害者雇用実態調査結果

1か月の週所定労働時間別平均賃金は、通常(30時間以上)は248,000円、20時間以上30時間未満は86,000円、20時間未満は67,000円です。

知的障害者

知的障害者の、超過勤務を除いた1か月分の所定内給与額は114,000円です。

知的障害者平均 通常(週30時間以上) 20時間以上30時間未満 20時間未満
11万7,000円 13万7,000円 82,000円 51,000円

出典:平成30年度障害者雇用実態調査結果

1か月の週所定労働時間別平均賃金は通常(30時間以上)は137,000円、20時間以上30時間未満は82,000円、20時間未満は51000円で、身体障害者や精神障害者より大幅に低い特徴があります。

精神障害者(発達障害者を含む)

精神障害者の超過勤務を除いた1か月分の所定内給与額は122,000円です。

精神障害者平均 通常(週30時間以上) 20時間以上30時間未満 20時間未満
12万5,000円 18万9,000円 74,000円 51,000円

出典:平成30年度障害者雇用実態調査結果

1か月の週所定労働時間別平均賃金は、通常(30時間以上)は189,000円、20時間以上30時間未満は74,000円、20時間未満は51000円で、身体障害者と知的障害者の間の給与です。

障害者雇用の給料差が生まれる原因

平均賃金の差が生まれる原因は3つあります。

原因①賃金支払い形態

1つ目は賃金支払い形態の違いです。賃金の支払い形態は月給制・日給制・時給制と大きくわけて3つの種類があり、障害別賃金支払い形態の割合は以下の通りです。

身体障害者 知的障害者 精神・発達障害者
月給制 58.6% 19.9% 28.6%
日給制 4.6% 6.0% 2.3%
時給制 34.0% 73.8% 68.9%
その他 1.5% 0.2% 0.0%
無回答 1.3% o.1% 0.2%

身体障害者は月給制が多く、知的障害者や精神障害者は時給制が多い傾向が明らかになりました。

原因②雇用形態

2つ目の原因は雇用形態の違いです。

身体障害者 知的障害者 精神・発達障害者
無期契約の正社員 43.9% 18.4% 25.0%
有期契約の正社員 3.2% 1.4% 0.5%
無期契約の正社員以外 19.9% 40.9% 46.2%
有期契約の正社員以外 27.2% 39.1% 28.2%
無回答 0.4% 0.2% 0.1%

身体障害者は正社員の割合が約50%ですが、知的障害者や精神障害者の正社員の割合は約20~25%で正社員以外が約70%と高くなっています。

一般的な給与傾向として正社員のほうが正社員以外よりも高い傾向があります。この雇用形態の差が、身体障害者と知的障害者・精神障害者の給与差に繋がっていると考えられるのです。

原因③週所定労働時間

3つ目の原因は週所定労働時間の違いです。

身体障害者 知的障害者 精神・発達障害者
30時間以上 79.8% 65.5% 47.2%
20時間以上30時間未満 16.4% 31.4% 39.7%
20時間未満 3.4% 3.0% 13.0%

身体障害者は1週間30時間以上勤務している割合が多く、ほとんどの身体障害者が一般雇用と変わらない長時間労働をしています。知的障害者や精神障害者は短時間労働者が多く、労働時間に比例して給与も低くなっていることが伺えます。

障害者雇用で年収アップする方法

障害者雇用で年収を上げる方法を4つ紹介します。

障害や病気・特性に合った職場を見つける

ご自身に合った職場の方が、心身への負担が少なく、長期間・長時間働き続けられる可能性が上がります。

将来的に、昇給や正社員登用に繋がり年収アップが見込めます。

長い時間働く

同じ時給でも長時間働けば給与は多くなります。

また勤務時間が長くなると、時給制から月給制に変更したり正社員登用に繋がったりするケースも多く、年収アップに繋がるかもしれません。

正社員雇用を目指す

同じような業務内容でも、正社員と正社員以外では基本給に差があります。

さらに基本給以外にも、正社員にはボーナスや残業代や手当などが支給されるため年収が多くなります。障害や病気・特性に無理のない範囲で正社員雇用を目指しましょう。

障害者雇用の正社員雇用については、こちらの記事「障害者雇用で正社員になれる?実際の雇用状況や正社員になる方法をご紹介」で詳しく解説しています。

スキルや資格を取得する

これは障害者雇用に限った話ではありませんが、できる仕事が増えたり、担当業務の専門性が上がると、昇給のチャンスが得られやすくなります。

またそれだけでなく、現状より好条件の職場に、転職できる可能性もあります。

スキルを身につけるために、就労移行支援を利用するという選択肢もあります。就労移行支援では、事務スキルやプログラミングなど、キャリアアップに役立つスキルを習得しながら転職活動を行えます。

就労移行支援については、こちらの記事「【よくわかる!】就労移行支援とは?特徴や就労継続支援との違いも解説」で詳しく解説しています。

年収アップのためでも無理は厳禁

障害者雇用で年収アップするために注意したいことがあります。

それは「絶対に無理をしない」ことです。

無理をすると身体的・精神的に負担がかかり、持病が悪化したり働けなくなったりしてしまうかもしれないからです。特に精神疾患を抱える方は、ストレスや疲れが病気を悪化させる危険性があります。

年収を上げたいからと無理をすることは避け、自分に合った労働時間や業務内容で働くようにしましょう。

障害に合わせた自分らしい働き方を見つけよう

障害者雇用は障害や病気・特性を抱える人が自分らしく働き、社会で活躍するために作られた制度です。法定雇用率の引き上げに伴ない、障害者雇用を行う企業も増えています。障害者雇用制度を利用し、自分らしく働ける仕事を見つけましょう。

大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし医療ライター・監修者として活躍中。https://odaakari.com/