障害者雇用で正社員になれる?実際の雇用状況や正社員になる方法をご紹介

公開日 2022年8月30日 最終更新日 2023年9月28日

障害者雇用で働く人のなかには、正社員としての勤務を希望している人も多くいます。

アルバイトや派遣といった非正規の求人は多いですが、実際に正社員として働けるのでしょうか。今回は、障害者雇用の実際の割合や、正社員になるための方法についてご紹介します。

【目次】

障害者雇用で正社員になれる?

正社員

結論から述べると、障害者雇用で正社員になることは十分に可能です。しかしアルバイトや派遣などの雇用形態と比べると、正社員の割合は少ないです。厚生労働省の調査によると、2018年の障害者雇用の正社員の割合は以下の通りです。

  • 身体障害者:52.5%
  • 知的障害者:19.8%
  • 精神障害者:25.5%
  • 発達障害者:22.7%

このように身体障害者の正社員の割合は約50%と高いですが、その他は約20%程度であることがわかります。つまり、障害者の大半は非正規雇用として仕事をしていることになります。

障害者雇用の正社員が少ない理由

事務職

なぜ障害者雇用の正社員の割合は少ないのでしょうか。ここではその理由について説明します。

他の勤務形態から開始することが多い

いきなり正社員として働くのではなく、アルバイトや契約社員からはじまることが多いのも理由の1つです。正社員の求人数は少ない傾向にあり、企業側も最初は非正規で職場の環境に慣れてほしいという思いがあります。

正社員登用のある職場では、一定期間仕事を続けて問題ないと判断されれば、正社員として雇用されます。職場によっては正社員登用の制度がなく非正規のみ募集しているケースもあるので、求人情報をよく確認することが大切です。

正社員以外の雇用形態を求めている人が多い

全ての障害者正社員を望んでいるわけではなく、非正規での雇用を求めている人も多くいます。体調が不安定だったり、通院をする必要があったりする人にとっては、非正規として働く方が都合がいいからです。

非正規だと「この曜日は○時に帰りたい」「体調がすぐれないから短時間勤務にしたい」など、希望にあったはたらき方を実現しやすいでしょう。仕事だけでなく身体の管理も大切なので、そのバランスをよく考える必要があります。

障害者雇用の現状については、こちらの記事「【2023年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。

障害者雇用で正社員として働くメリット

障害者雇用の正社員の割合は少ないものの、非正規にはない待遇も多くあります。ここでは正社員のメリットについて説明します。

給料が高い

非正規より正社員の方が給料は高いです。とくにボーナスのある職場では、その差が大きくなります。契約社員でもボーナスをもらえる場合はありますが、少ない金額であることも多いです。

仕事を継続して昇進すれば、さらなる昇給も期待できるでしょう。より給料をもらいたい人は、正社員での雇用を検討しましょう。

障害者雇用の給料については、こちらの記事「障害者雇用の給料は安くて生活できない?給与の現状や年収アップの方法を解説」で詳しく解説しています。

福利厚生がそろっている

正社員になると福利厚生を利用できる職場も多いです。住宅手当や家族手当などのサービスが充実していれば、非正規雇用よりもさらに金額の差が生まれます。

福利厚生の対象は、必ずしも正社員だけでなく、一定の条件を満たせば契約社員やアルバイトの人でも利用できる職場もあります。内容は場所によって異なるので、事前にどのような福利厚生があるのかを聞いてみましょう。

解雇のリスクが減る

正社員になれば、よほどのことがない限り解雇になることはありません。もちろん契約社員でも途中で解雇されることは少ないですが、期限の更新が終了する危険性があります。

その点を考慮すると、正社員は非正規よりも安定して仕事ができるといえるでしょう。しかし可能性がゼロというわけではないので、正社員になっても油断せず、まじめに仕事に取り組むことが大切です。

障害者雇用で正社員として働くデメリット

ストレス

障害者雇用の正社員のメリットについて説明しましたが、中にはデメリットになるポイントもあります。ここでは正社員で仕事をするうえで気をつけたいリスクについて説明します。

転勤・異動・残業が発生する

正社員として仕事をする場合、非正規にはなかった転勤や異動、残業が発生する可能性があります。そのため仕事環境が変化したり、勤務時間が伸びたりすることで心身への負担が大きくなる危険性があります。

もし転勤や残業による不調で仕事のパフォーマンスが落ちてしまうと、上司や社員への信頼関係にも影響が出てしまうでしょう。

しかし障害者雇用に理解がある企業であれば、転勤や異動は発生しないこともあります。企業にはあらかじめ障害の関係で転勤や残業がむずかしいことを伝えておきましょう。

仕事の責任が大きくなる

正社員は非正規よりも仕事の範囲が広くなり、その分責任も大きくなります。昇進や昇格の可能性もあるので、より一層仕事に力を入れる必要があるでしょう。しかし責任が大きくなると、プレッシャーを感じてしまう人も多いです。

その影響で心身に不調が現れたり、うまく仕事ができなかったりした場合は、一度上司に相談をしてみることをおすすめします。障害者雇用を積極的に行っている企業では、サポートを受けながら仕事を進められる環境を整えてくれることもあります。

このように、正社員にはいくつかデメリットはありますが、周囲の協力により安心して仕事を行えることも多いです。不安な点があるときは、上司への相談を忘れずにしましょう。

障害者雇用で正社員になるためには?

では実際に正社員として働くためにはどうすればよいのでしょうか?ここでは障害者雇用で正社員になるための方法について説明します。

またこちらのコラム「これをやっとけばよかった…障害者が“正社員雇用”を掴むために就活で意識したい5つのこと」では、実際に正社員雇用を目指して就職活動を行なった方が、当時を振り返ってやるべきだったことについてまとめています。

正社員を募集している求人を探す

一番スムーズな方法としては、正社員を募集している求人を探すことです。しかし正社員の求人は、アルバイトや契約社員などの非正規雇用と比べると数が少ない傾向にあります。

さらに職種が限定されたり、条件が多かったりする求人もあるため、就職の難易度は高いです。「特定のスキルを保有している」「今まで正社員として仕事をしていた」などの実績を持っていれば、正社員として採用される可能性は高くなるでしょう。

非正規雇用から正社員を目指す

正社員からの採用がむずかしければ、非正規雇用からスタートする方法もおすすめです。アルバイトや契約社員から開始すれば仕事の負担も少なく、企業としても業務の姿勢を評価しやすいです。

今の仕事が自分にあっているのかを確認したうえで、安定して勤務を継続できれば正社員として登用される可能性は高まるでしょう。非正規雇用からのスタートは、仕事の環境を見極めたい人やはじめて就労をする人におすすめの方法です。

スキルを身につける

正社員として働くためには、会社から必要な人材であると認めてもらうことが重要です。

そのために、専門的なスキルを身につけることも1つの手段です。専門的なスキルと言っても、国家資格のように習得に時間がかかるものである必要はありません。

【おすすめのスキル】

  • Officeソフト
  • プログラミング
  • Webデザイン

特に障害者雇用は、事務職の求人が多いため、Officeソフトをはじめとする事務スキルは重宝されます。

スキルを身につけるためには、正社員以外の雇用形態で働きながら実践的に身につける方法と、就労移行支援や職業訓練校などを活用して身につける方法があります。

自分の状況に合わせて、取得方法を選びましょう。

就労移行支援については、こちらの記事「【よくわかる!】就労移行支援とは?特徴や就労継続支援との違いも解説」で詳しく解説しています。

障害者雇用で正社員になれる人の特徴

障害者雇用の正社員になれる人の特徴として、以下のポイントがあげられます。

  • 体調が安定している人
  • 障害への自己理解がある人
  • 仕事をある程度こなせる人
  • 周りの人のことも考えられる人

体調が安定している人

やはり体調が安定している人は、正社員として採用されやすくなります。

体調が安定していることで、突発的に仕事を休むことが少なくなるため、企業側も安心して仕事を任せられます。

仕事と治療を両立させる働き方については、こちらの記事「通院しながらでも仕事はできる?治療と労働を両立するためのポイントを紹介」で詳しく解説しています。

障害への自己理解がある人

障害への自己理解は、正社員で働くために必要不可欠な要素です。

障害者雇用で働く場合は、企業側に障害への配慮を求める形になります。しかし自分の障害への理解が不足していると、何を配慮してほしいのかを、企業へ伝えられません。

そのため下記の内容は必ず説明できるようにしましょう。

  • 障害の特性・症状
  • 体調が悪くなりやすい条件(睡眠不足・過労など)
  • 配慮がなくてもできる業務
  • 配慮があればできる業務
  • 配慮があっても対応できない業務

上記の内容を説明できるように、自分の障害についての理解を深めましょう。

仕事をある程度こなせる人

前述の通りですが、できる仕事が多いほど正社員として働ける可能性は高まります。

障害が理由でどうしてもできない業務については考える必要はありませんが、できる業務を増やすためにスキルを身につけたり、正社員以外の雇用形態でも働き経験を積んだりしましょう。

周りの人のことも考えられる人

企業で正社員として働く以上、自分のことだけでなく周りのことも考えられなければいけません。

障害者雇用では、企業側に配慮を提供する義務があるとはいえ、それを当たり前だと思ってはいけません。障害への配慮を周りから受けるときは、常に感謝を伝えるようにしましょう。

また自分以外にも、障害者雇用で働いている人がいれば、可能な範囲でサポートができるように、一緒に働く人のことを考えながら仕事に取り組みましょう。

正社員として仕事をすることは十分に可能!

障害者雇用の非正規と比べると割合は少ないですが、正社員として仕事をすることは十分に可能です。

正社員にはメリットはたくさんある反面、デメリットもあるため、その点はよく理解しておきましょう。また非正規雇用にも正社員にはない強みがあるので、よく考えたうえでどちらが自分にあっているのかを決めてみてください。

また心臓病の方に向いてる仕事などの情報についてはこちらの記事「【心臓病】向いてる仕事や治療と両立させるポイントを解説」で解説しています。

5年間理学療法士として医療に従事し、全国規模の学会で演題発表の経験あり。2021年からフリーランスとして独立を決意し、現在は専業のWebライターとして活動中。過去に先天性の心房中隔欠損症を発症したが、早期治療済み。ゆるく自分らしく生きることが人生の目標。(Twitter:@kaisei_writer)