通勤のストレスは心臓病の大敵!通勤時間の影響やストレスが少ない通勤方法を解説

公開日 2022年10月20日 最終更新日 2023年9月28日

コロナ禍となり、リモートワークが一般的になりました。しかし、職場まで通勤している人はまだ少なくありません。

心臓病がある人にとって、心臓に負担がかからない仕事選びは大切ですが、通勤によるストレスや疲労も負担になることを忘れてはいけません。

ここでは、心臓と通勤ストレスの関係、通勤ストレスを軽減する方法についてお伝えします。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

通勤時間とストレスの関係

まずは通勤時間の実態や、ストレスとの関係について解説します。

日本人の平均通勤時間は1時間19分

総務省が行っている社会生活基本調査によると、日本人の平均通勤時間は往復で1時間19分となっています。

これは地域によって差があり、神奈川県や千葉県、東京都など首都圏と大阪府や兵庫県など関西圏で通勤時間が長い傾向があります。東京や大阪は企業数が多く、またその周辺地域は都市部に時間をかけて通勤する人が多いためです。

通勤時間が長いほど、ストレス値が高い

企業が通勤時間とストレスについて行った調査で、以下の結果が見られました。

引用:ザイマックス総研の研究調査 通勤時間別にみる平均通勤ストレス

通勤ストレスの程度を0(最低)~10(最高)の値で示してもらったところ、通勤時間が長い人ほどストレスの値が高くなっています。

また、同社が行った別の調査によると、通勤ストレス値が高い人は、仕事のやりがいや生産性、プライベートの満足度も低い傾向があるそうです。

このほかにも、海外の研究では通勤時間が長い人は腰痛の再発率が高いなど身体的な悪影響も報告されています。

ストレスが少ない通勤時間は20分未満

先ほどの調査結果より、通勤時間が20分以上になるとストレス値が2.2→4.0と大きくあがります。

また「20分以上40分未満」の場合でも、平均値の5.2よりは低いストレス値なので、人によってはストレスを感じにくいかもしれません。

しかし心臓病の人の場合は、健康な人と比べてストレスによる負担が大きくなるため、病気のことを考えると、20分以内に通勤時間を抑えられると理想的です。

心臓病とストレスの関係

通勤によるストレスは心臓にどのような影響を与えるのでしょうか?ここでは、心臓病とストレスの関係を解説します。

ストレスは交感神経のスイッチ

内臓の機能や体温などは、自律神経と呼ばれる交感神経と副交感神経のバランスで調整されています。交感神経が優位になると、血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加などが起こります。

一方、副交感神経が優位になると、血圧の低下、腸の動きが活発になる、心拍数がゆっくりになるなどリラックスした状態になります。

ストレスがかかると交感神経が優位に働くため、血圧は上がり、心拍数は増え、心臓はいつも以上に働き続けなければならず、大きな負担がかかるようになります。

ストレスが影響する心臓病がある

狭心症や心筋梗塞はストレスが影響する心臓病です。

まずストレスにより交感神経が活発になると、血管が過度に収縮し動脈硬化を起こします。

そしてこの2つの病気は、冠動脈という血管に動脈硬化を起こすことが主な原因であるため、ストレスが引き起こす動脈硬化の影響を受けてしまいます。

ストレスと心臓病の関係については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは 適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。

通勤によるストレスを軽減するためには?

ストレスを軽減して、心臓に負担をかけず通勤する方法をお伝えします。

徒歩や自転車通勤はストレスフリー?

コロナ禍の影響もあり、徒歩や自転車通勤の人が増えました。満員電車のストレスから解放され、運動習慣にもなり一石二鳥です。

しかし、心臓病の人が徒歩や自転車通勤を選択するときには注意が必要です。

体調に左右される

心臓病があると体調が変化しやすくなります。なんとなく体調が悪い日に、徒歩や自転車での通勤は大変です。

その日だけ公共交通機関を利用することもできますが、頻度が多くなるとそれだけ交通費の負担が増えてしまいます。大半の企業では交通費の支給がありますが、念の為確認しておきましょう。

体力が問題

徒歩や自転車通勤はストレスが少ない分、公共交通機関の利用に比べて体力を使います。心臓病があると、仕事だけでも体力を消耗します。

それに加え、徒歩や自転車で通勤する余力があるかが問題になります。

ストレスの少ない通勤は、公共交通機関で20分未満

通勤によるストレスは極力軽減しましょう。

乗車時間は短めに

通勤時間は、ドア to ドア(自宅を出てから会社に着くまで)で20分未満が理想です。

心臓病の人は、徒歩や自転車よりも電車やバスなどの公共交通機関の利用が体力的には安心です。しかし、公共交通機関での通勤、特に満員の場合、乗車時間にストレスを感じやすいので、この時間をできるだけ短くすることが望ましいです。

時差通勤でストレス回避

満員電車のストレスを避けるためには、時差通勤もおすすめです。会社によってはフレックスタイム制が導入されているところもあるので、一度確認してみてください。

また障害者雇用で就労している場合、通勤時間の配慮をもらえる可能性もあります。障害者雇用では、企業側が働く障害者に対して配慮することが義務付けられているため、もし通勤が負担になっている場合は、会社側に相談してみましょう。

障害者雇用については、こちらの記事「【2022年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。

リモートワークなら通勤する必要がない

心臓病を抱えて働くには、通勤は避けては通れない問題でした。しかし、コロナ禍となりリモートワークが推奨されるようになりました。

リモートワークは、通勤時間「ゼロ」、通勤ストレス「ゼロ」の働き方です。まだ職種は限られていますが、未経験から始められる仕事もあります。

通勤に悩みを抱えている人は、ぜひリモートワークという働き方も検討してみてください。

リモートワークについては、こちらの記事「リモートワークができる職種とは?未経験から転職する方法も解説」で詳しく解説しています。

まとめ

通勤ラッシュという言葉があるくらい、日本の通勤事情は厳しいものです。特に心臓病の人は、通勤による疲労だけでなく精神的なストレスも心臓に負担をかけます。

心臓に負担をかけず、長く働くためにもストレスの少ない通勤が理想です。どうしても通勤が困難な場合は、リモートワークなど新しい働き方も検討してみてください。

理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。