公開日 2022年12月26日 最終更新日 2024年2月18日
先天性心疾患を抱えている関係で、自分に向いている仕事を探すのに苦労している人は多いのではないでしょうか。この記事では、先天性心疾患の人が仕事をするときのポイントや職探しに役立つサービスなどについてご紹介します。
自分の症状にあった働き方を見つけられれば、就職後も無理せずに仕事を継続できるでしょう。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
先天性心疾患の特徴
先天性心疾患とは、生まれつき心臓の機能に異常がある病気で、100人に1人の割合で発生するといわれています。疾患の程度は人によって異なり、自然治癒する場合もあれば、手術を行っても完治できないこともあります。
先天性心疾患の原因ははっきりと分かっていません。染色体や遺伝などの異常という説もありますが、複数の要因が重なって発生する病気であると考えられます。
先天性心疾患の種類
先天性心疾患にはさまざまな種類があり、それぞれ別の症状を引き起こします。ここでは、代表的な先天性心疾患について詳しく解説します。
心室中隔欠損症
心室中隔欠損症は先天性心疾患の中でもよくみられやすい病気のひとつです。心臓は4つの部屋に分かれており、そのうち「右心室・左心室」と呼ばれる部屋の間の壁(心室中隔)に穴があく病気です。
心室中隔に穴が開くことで血液が正常に流れず、呼吸不全や心不全を引き起こすきっかけを作ります。穴が小さければ症状が現れないケースもありますが、基本的には手術で閉鎖するケースがほとんどです。
心房中隔欠損症
心房中隔欠損症は、心臓の4つの部屋のうち「右心房・左心房」の間にある中隔に穴があく病気です。厳密には、胎児期には全ての人に心房中隔欠損があり、正常であればそれが徐々に塞がります。
そしてそれが塞がりきれなかった人が「心房中隔欠損症」となります。心室中隔欠損症と同様に、血流がスムーズに流れなくなり、心臓の負担が強くなって動悸や呼吸困難が出現しやすくなります。
子どものころは無症状だったとしても、加齢にともなって症状が進行し、チアノーゼや呼吸困難が強くなる危険性があります。
肺動脈狭窄症
肺動脈狭窄症とは、心臓と肺をつないでいる「肺動脈」が狭くなる、あるいは血流の逆流を防ぐための弁が開きにくくなることで発生する病気です。息苦しさや胸痛、疲労感などが現れますが、狭窄が軽度であれば無症状で経過することもあります。その場合治療は行わず、経過観察で様子をみます。
ファロー四徴症
ファロー四徴症とは、以下の4つの特徴を持っている病気です。
- 心室中隔欠損症
- 肺動脈狭窄症
- 大動脈騎乗
- 右心室肥大
大動脈騎乗とは、心室中隔欠損症の影響で左心室につながっているはずの大動脈が、左右の心室にまたがっているような状態です。肺動脈狭窄症によって右心室から血液が流れにくくなり、血圧が高まって肥大化することを右心室肥大といいます。
ファロー四徴症は血液中の酸素が不足しやすくなるので、チアノーゼを起こしやすいのが特徴です。重度の場合は、低酸素発作によって過呼吸や失神が起きやすくなります。
ファロー四徴症については、こちらの記事「ファロー四徴症の人に向いている職種は?仕事を見つけるためのポイントをご紹介」で詳しく解説しています。
【関連コラム】
先天性心疾患の人が仕事をするときのポイント
先天性心疾患の種類や特徴をおさえたうえで、仕事場面ではどのような点に注意すべきでしょうか。ここでは先天性心疾患の人が仕事を決める、あるいは仕事を行う際のポイントをご紹介します。
身体の負担のかからない仕事を選ぶ
先天性心疾患の人は身体的な負担をかけられないので、なるべく肉体労働を中心とした仕事は避けましょう。先天性心疾患の人におすすめの仕事は、以下の通りです。
- 事務職
- Webデザイナー
- Webライター
- システムエンジニア
- プログラマー
- アニメーターインサイドセールス
上記のようなデスクワークを中心とした仕事であれば身体的な負担が少ないので、体調も安定しやすいでしょう。
障害者雇用枠で仕事をする
障害者手帳を持っていれば、障害者雇用枠で仕事をすることもおすすめです。障害者雇用枠では身体的な配慮をもらいやすい環境なので、安心して仕事を行えるでしょう。
【障害者枠のメリット】
- 業務内容の配慮をもらえる
- 通勤時間や通勤方法の調整をしてもらえる
- 通院をしやすくなる
治療と仕事の両立をしたい人、仕事の負担を減らしたい人は、ぜひ障害者雇用枠を活用してみましょう。
障害者雇用については、こちらの記事「【2023年最新】障害者雇用の現状と課題【SDGs】」で詳しく解説しています。
障害について職場で共有しておく
障害について職場内で共有しておくと、仕事への配慮を受けられやすくなります。
特に一般雇用で働く場合は、しっかりと障害について説明しておかないと配慮を受けられにくいでしょう。身体的な負担を軽減しながら仕事をするためにも、必ず障害について共有しておきましょう。
有給休暇や社内制度をうまく活用する
入社後も、通院や治療を並行しながら生活をする人もいると思います。
治療と仕事の両立をするためにも、有給休暇や社内の制度をうまく活用しましょう。会社独自の休暇制度が設けられていることもあるので、有給休暇の発生日とあわせて確認してみましょう。
※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。
先天性心疾患の人が仕事を見つける方法
先天性心疾患の人が効率的に仕事を探すには、どのようなものを活用すればいいのでしょうか。ここでは仕事を見つけるときのおすすめのサービスについてご紹介します。
ハローワークの活用
ハローワークは多くの求人情報を紹介してくれるので、先天性心疾患の人に限らず、仕事を探している人全般におすすめです。一般雇用だけでなく、障害者雇用枠での求人も豊富なので、症状にあわせた雇用形態で相談をしてみましょう。
その他にも「難病患者就職サポーター」の窓口もあり、難病の人を対象とした就労支援を行っています。先天性心疾患の中でも難病に指定されている病気を抱えている人は、こちらの窓口も活用してみましょう。
ハローワークについては、こちらの記事「障害者を対象にしたハローワークでの取り組みやさまざまな働き方をご紹介」で詳しく解説しています。
人材紹介会社の活用
人材紹介会社(エージェント)には通常の求人情報だけでなく、障害を抱えている人の就職活動をサポートしてくれるサービスもあります。
おすすめの求人の提供だけでなく、履歴書の記載方法の指導、社内見学の調整、入社後の相談なども行ってくれます。また、ハローワークでは公開されていない求人情報が見つかる可能性もあるでしょう。
就労移行支援の活用
就労移行支援とは、障害を抱えている人を対象に就職のサポートを受けられる障害福祉サービスです。就労移行支援は利用してから2年間まで有効で、それまでの期間では以下のようなサービスを受けられます。
- ビジネスマナーの練習
- 企業のインターンシップの支援
- 履歴書の作成指導
- 面接指導
- 入社後のサポート
このように、就職前後のさまざまなサポートを提供してくれるのが特徴です。
先天性心疾患の働き方の選択肢
先天性心疾患の人には、どのような働き方があるのでしょうか。ここでは、以下の4つの選択肢についてご紹介します。
一般雇用枠での就労
1つ目は一般雇用枠での就労です。いわゆる通常の雇用形態なので、障害を持っていない他の人と同じ条件で仕事を行います。一般雇用枠のメリットは、他の雇用と比較して高い給料を得やすい点です。しかし、基本的に障害を抱えている人の雇用を想定していないので、病気への配慮がされている環境があまり整っていません。
そのため、事前に上司や同僚に説明をして、病気に対しての理解を得てもらう必要があります。このように、一般雇用枠で仕事をするときは病気のことを周囲に伝えつつ、協力体制を作ってもらうことが重要です。
②障害者雇用枠での就労
2つ目は障害者雇用枠での就労です。障害者雇用は障害を抱えている人が働くのを前提としているため、一般雇用よりも配慮されやすい環境が整っています。
一方で、一般雇用枠での求人数よりも少ない傾向にあるので、働く場所や内容はある程度限られる点には注意しましょう。身体の負担をかけられない、通院が必要など、環境面の配慮を要する人は一般雇用枠よりもこちらのほうがおすすめです。
③就労継続支援での就労
3つ目の就労継続支援とは、障害によって一般的な就労がむずかしい人を対象とした福祉サービスです。就労の場の提供に加えて、仕事に必要なスキル向上の訓練を受けられます。
就労継続支援には「A型・B型」の2種類に分けられており、それぞれ内容が異なります。
A型では特定の事業所と雇用契約を結んだうえで、一般的な就労を目指した訓練の実施が可能です。雇用契約が結ばれているので、法律で定められている最低賃金以上の給料を受け取れます。A型の対象者は以下の通りです。
- 移行支援事業を利用したが、雇用に結びつかなかった人
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、雇用に結びつかなかった人
- 就労経験のある者で、現在雇用関係の状態にない人
B型はA型とは異なり、特定の事業所とは雇用契約を結ばれず、賃金は「工賃」という形で発生します。雇用契約を結ばないので、報酬は最低賃金を下回ることが多いです。
その分、自身のペースで働けたり、比較的簡単な作業がほとんどだったりする利点もあります。B型の対象者は以下の通りです。
- 就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業の雇用が困難となった人
- 50歳に達している人、または障害基礎年金1級の受給者
- 上記に該当せず、就労移行支援事業者により、就労面の課題が明確な人
④特例子会社での就労
4つ目の特例子会社では、障害を抱えている人の雇用をサポートするために、親会社によって作られた子会社です。特例子会社では通常の会社と比較すると、特例子会社は障害をサポートする環境が整っているのが特徴です。
そのため、柔軟な労働時間の設定や定期的な面談など、さまざまな配慮を受けながら仕事を行えます。また特例子会社は障害を抱えている人の割合が多いので、一般雇用よりも疎外感を感じにくいのも大きな強みです。
特例子会社については、こちらの記事「特例子会社とはどんな会社?就職するメリット・デメリットや求人の探し方を解説」で詳しく解説しています。
先天性心疾患の状態にあわせた仕事を選んでみよう
先天性心疾患にもさまざまな種類があるため、その病気の症状に適した仕事を見つけることが大切です。仕事を効率的に見つけるためには、自分の力だけで探すのではなく、ハローワークやエージェントなどをうまく活用してみましょう。
働き方にも複数の選択肢があるので、身体・精神的に負担の少ない就労形態の選択をおすすめします。