公開日 2023年3月2日 最終更新日 2024年2月18日
「最近、運動時に息切れを感じる」「足がむくみやすくなっている」そのような自覚のある方は、もしかしたら心臓病のサインかもしれません。心臓病はさまざまな種類に分かれており、それぞれ症状が異なります。
この記事では、心臓病の種類と気をつけるべき症状についてご紹介します。心臓病についての知識を深めれば、身体に不調を感じたときに早期の対処ができるでしょう。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
心臓病とは
心臓病とは、心臓の働きや構造に問題が生じることで引き起こされる病気の総称です。心臓には、全身に血液を巡らせるためのポンプとしての役割があります。その役割を維持するために、一定のリズムで鼓動を繰り返したり、血液が逆流を防いだりするような機能が備わっています。
それらの機能が働かなくなる、あるいは心臓に負荷がかかって構造が変化すると、さまざまな症状が引き起こされてしまいます。
心臓病の種類
心臓病にはさまざまな種類があり、疾患によって特徴が異なります。ここでは、代表的な心臓病についてご紹介します。
心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が弱くなることで全身に血液を十分に送れなくなる疾患です。血液の循環がうまくいかなくなると、以下のような症状が現れやすくなります
- 運動時の息切れ
- 疲れやすさ
- 足のむくみ
酸素や栄養を送っている血液をうまく送れなくなるので、運動時にすぐ疲れやすくなります。また重力によって足に水分が溜まりやすくなるため、むくみが起きやすいのも特徴です。
心不全は高血圧や不整脈など、心臓に負担がかかりやすくなるような症状が原因で発症するといわれています。
心不全については、こちらの記事「 心不全でも仕事へ復帰できるのか。治療と仕事を両立していくためには?」「改めて知りたい!心不全の原因と種類・症状・治療の知識をアップデート」
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、何らかの原因で心臓に血液が流れなくなることで生じる疾患です。虚血性心疾患は「狭心症」と「心筋梗塞」の2種類に分かれます。ここではそれぞれの疾患について解説します。
狭心症
狭心症とは、心臓に血液を送る「冠動脈」の血管が狭くなり、一時的に血流が少なくなる疾患です。心臓に酸素や栄養が流れなくなることで、急な胸痛や心臓の圧迫感などが現れます。
これらの症状は、現れてから数十秒から十数分で治るケースがほとんどです。狭心症のおもな原因は、動脈硬化や血栓によるものです。
狭心症については、こちらの記事「狭心症の人に仕事の制限はある?治療を継続しながら働く方法を解説」で詳しく解説しています。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、冠動脈が完全に詰まることで発症する疾患です。心筋梗塞になると激しい胸の痛みや呼吸困難、冷や汗などの症状が現れます。
酸素や栄養を供給する血流が途絶えた状態が続くと、最悪の場合は一瞬で心停止し、3分程度で脳に障害をきたします。そのため、心筋梗塞を発症したら早急に処置を行う必要があります。
心筋梗塞の原因は、狭心症と同じように動脈硬化によるものが中心です。
心筋梗塞については、こちらの記事「心筋梗塞になっても仕事は続けられる?後遺症の有無や無理なく働ける方法を解説」で詳しく解説しています。
弁膜症
弁膜症とは、心臓についている「弁」が機能しなくなる疾患です。心臓は左右の「心房」と「心室」の、計4つの部屋に分かれています。それぞれの部屋を仕切って血液が逆流しないように防いでいるのが弁の役割です。
弁膜症になると弁が開きにくくなったり、閉まりにくくなったりして、血液の流れが悪くなります。その結果、心臓に負担がかかって心不全や不整脈などの疾患につながるリスクが高まるのです。弁膜症の原因は弁の種類によっても異なり、加齢による変化で起こるケースもあります。
弁膜症については、こちらの記事「心臓弁膜症により仕事・生活上の制限はあるのか?使える制度と相談機関を解説」で詳しく解説しています。
不整脈
不整脈は、脈のスピードやリズムに異常をきたす疾患です。脈の特徴によって以下のような種類に分類されます。
- 徐脈:脈拍が1分間に50回以下
- 頻脈:脈拍が1分間に100回以上
- 期外収縮:脈のリズムが不規則
不整脈の種類によって症状が異なり、徐脈は運動時に息切れを起こしたり、意識が遠のいたりすることがあります。頻脈と期外収縮では、動悸や胸痛、めまいが起こるときがあるでしょう。
全ての不整脈が危険な病気というわけではなく、特に心配する必要がないケースもあります。しかし、脳梗塞や心筋梗塞につながる種類もあるので、その場合は治療が必要です。
不整脈については、こちらの記事「不整脈になっても仕事は続けられる?無理なく働くためのポイントやを紹介」で詳しく解説しています。
先天性心疾患
先天性心疾患は、生まれつき心臓の働きや機能に異常をきたした疾患の総称です。発症には遺伝が関係するといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。先天性心疾患にはさまざまな疾患がありますが、おもに以下の2種類に分かれます。
- チアノーゼ性心疾患
- 非チアノーゼ性心疾患
チアノーゼ性心疾患では、血液中の酸素が不足して手足が青紫色になる「チアノーゼ」が現れます。「ファロー四徴症」が代表的で、酸素の少ない静脈の血液が動脈に流れ込むことでチアノーゼの症状が出現します。
非チアノーゼ性心疾患は、血液の流れが乱れることで心臓や肺にかかる負担が強くなるのが特徴です。「心房中隔欠損症」や「心室中隔欠損症」などが代表的で、これらは心臓の部屋の間にある「中隔」に穴が開く疾患です。
先天性心疾患については、こちらの記事「先天性心疾患の人が仕事をするには?向いている仕事内容や職探しのポイントを解説」で詳しく解説しています。
こんな症状に注意!心臓病のサインとは
心臓病を早期に発見して治療を行うには、どのような症状が現れるのかを理解する必要があります。ここでは心臓病のサインになる症状についてまとめてみました。
息切れ・呼吸困難
心臓から全身に送る血液量が不足すると、運動時に息切れを起こすことがあります。息切れはおもに弁膜症や虚血性心疾患、心不全などで引き起こされます。また、突然の呼吸困難は急性の心筋梗塞の可能性があるので、その場合は早急な対処が必要です。
胸痛
胸痛は虚血性心疾患に起こりやすく、心臓に血液を送る動脈がつまることで現れます。
狭心症は数十秒から数分でおさまりやすいですが、心筋梗塞では激しい胸痛がともない、最悪の場合死亡する危険性も。どちらにせよ、胸痛が現れた場合は早期に対応する必要があります。
むくみ
水分が体内に貯留している状態をむくみといいます。心臓から血液を送り出す力が弱くなる心不全がおもな原因です。足やふくらはぎの部分を押して、へこみが残っているならむくみがあるといえるでしょう。
むくみが頻繁に起こるとともに、運動時に息切れも現れているようであれば、心不全を疑ってみましょう。
チアノーゼ
チアノーゼは動脈に流れている血液の酸素量が足りなくなると現れやすく、唇や爪が青紫色になります。この症状は先天性心疾患で起こりやすく、動脈と静脈の血液が混じることでチアノーゼが現れます。
失神
失神は脳に送られる血液の流れが一時的に減少する、あるいは止まることで生じます。失神の原因は不整脈や心不全、急性心筋梗塞などがあげられます。血流が戻れば意識は回復しますが、場合によっては突然死にもつながる危険性があるでしょう。
心臓病を予防するためのポイント
心臓病は生活習慣と大きな関わりがあるため、普段の日常に注目することが大切です。ここでは心臓病を予防するための生活習慣のポイントをご紹介します。
食生活の見直し
食生活を見直して、栄養バランスを整えることで心臓病のリスクの低下につながります。食べ過ぎによる肥満を防ぐだけでなく、以下のとりすぎにも注意が必要です。
- 塩分:高血圧の原因になる
- 糖分:糖尿病の原因になる
- 脂質:脂質異常症の原因になる
これらの疾患は心臓病につながるリスクがあるので、なるべく控えるようにしましょう。野菜には血圧を下げる働きのあるカリウムや、コレステロールを減少させる食物繊維などが含まれています。そのため、これらが多く含まれる食材を積極的に食べましょう。
【カリウムが多い食材例】
- 切り干し大根
- ほうれん草
- にんじん
- 海藻類
【食物繊維が多い食材例】
- 玄米
- 海藻類
- バナナ
- 納豆
食事と心臓病の関係については、こちらの記事「心臓病に良い食べ物を摂取して悪化予防!避けるべき食べ物や食生活もご紹介」で詳しく解説しています。
適度な運動の継続
運動は心肺機能を高めて、身体の血液の循環を促す効果が期待できます。さらに筋肉量が増えることで身体の代謝量が高まり、肥満の予防・改善にもつながります。血糖値や血圧が低下する効果もあるので、心臓病だけでなくさまざまな病気の予防になります。
運動の内容は、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。病気の予防だけでなく、いつまでも若々しい身体作りをするためにも、運動習慣をつけてみましょう。
運動と心臓病の関係については、こちらの記事「心不全の人は運動をするべき?おすすめの内容や注意点を理解しておこう!」で詳しく解説しています。
ストレスの解消
なるべくストレスを貯めない生活が理想です。ストレスは血圧を高める原因となり、やがて高血圧につながって心臓に負担がかかりやすくなります。
さらに、ストレスが溜まると生活リズムが崩れたり、暴飲暴食をしたりするきっかけにもなるでしょう。趣味に打ち込む、仲のいい人に相談をするなど、自分なりのストレス解消法を見つけてみましょう。
心臓病とストレスの関係については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは?影響を受ける病気や適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。
心臓病の種類をおさえて発症の予防に努めよう
一口に「心臓病」といっても、種類によってその特徴は異なります。心臓病の予防・早期改善をするには疾患の種類だけでなく、それぞれ起こりやすい症状をおさえておくことが大切です。
また、心臓病は生活習慣とも大きな関わりがあります。普段の生活を見直し、心臓病を含めた生活習慣病の予防に努めましょう。
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