心不全でも仕事へ復帰できるのか。治療と仕事を両立していくためには?

公開日 2022年12月22日 最終更新日 2024年2月18日

「心不全」と言われると「命の危険があるのでは?」と不安に感じる方も多いと思います。実際、心疾患は日本の死因2位となっており、令和3年には21万人が心不全を含む心疾患で亡くなっています。

家族はこれからの生活を考え不安が募るばかりでしょう。こうした不安を打ち消すには、病気についての理解を深める必要があります。

知識があれば、現状を正しく理解できます。今後の見通しを立てることができ、そして先のことが少しでも分かれば不安も軽減するでしょう。

そこで、今回は心不全の解説と、退院後の生活について解説していきます。また、実際に心不全を発症してから職場復帰をされた方へのインタビューも掲載しています。

この記事を読み、心不全について理解することで先の生活が見えてくるかもしれません。不安解消につながるようぜひ最後までご覧ください。

 

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

心不全とは

心不全とは「何らかの原因」で、心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送れなくなっている状態です。

原因疾患によっては突然死につながります。

厚生労働省の「令和3年人口動態統計月報」によると、全体の死因のうち心不全が6.2%を占めています。

そして、年間の死亡者の数は​​約9万人と、「心疾患」で亡くなる数の約4〜5割を心不全が占めています。

出典:「心疾患の治療と仕事の両立お役立ちノート」厚生労働省

心不全のステージ分類

心不全は自覚症状がどの程度かを基準に重症度を分類しており、これを「NYHA分類」といいます。

【NYHA分類】

Ⅰ度 心疾患はあるが、普通の身体活動では症状がない。
Ⅱ度 普通の身体活動(坂道や階段をのぼるなど)で症状がある。
Ⅲ度 普通以下の身体活動(平地を歩くなど)でも症状がある。
Ⅳ度 安静にしていても、心不全の症状や狭心痛がある。

出典:心臓SOS

心不全の死亡率は、Ⅲ度からⅣ度になると高くなり、Ⅲ度では30%、Ⅳ度になると2年以内に50%の方が亡くなると言われています。

重症になると相対的に死亡率は高くなるため、予後を考える上でこういった知識を持っておくことは大切です。

出典:​​公益社団法人 日本心臓財団

心不全の症状は

心不全になり、心臓のポンプ機能が低下することで全身の血流が悪くなり下記のような症状が現れることがあります。

  • 呼吸困難や息切れ
  • 動悸
  • 手足のむくみ
  • 体重の増加
  • 尿量が減る

全身に血液を運べなくなり、血流が滞ることで、肺に水分が貯まり換気ができなくなるため、「息切れや」「呼吸困難感」「疲労感」につながります。

重症化すれば起座呼吸(横になると呼吸が苦しく、上半身を起こした状態が楽になる)や、夜間発作性呼吸困難(寝ている時に急に息が苦しくなる)となるでしょう。

また、尿が作られる「腎臓」への血流が悪くなれば尿量が減ります。体内に水分がたまることで浮腫(むくみ)につながります。

腸や肝臓などの消化器でも、血流が滞ることから水分により腸管浮腫(むくみ)が起こります。消化器が機能しなくなることから吸収不良や、鼓腸(腹部が膨れる)につながります。

膨れた腹部に肺が圧迫されれば、呼吸困難は悪化するでしょう。血液は全身に関連するので、心不全になることで全身に様々な症状へとつながります。

心不全の治療は

心不全の治療は大きく「薬物療法」「非薬物療法」の2つに分かれます。

これらは、併用して行うのが一般的で状態に応じて様々な治療が行われます。

出典:急性・慢性心不全診療

薬物療法

薬物療法では、「症状の緩和」「予後の改善」を目的に以下の薬などが使われます。

  • 体内の余分な水分を取り除くための「利尿剤」
  • 心臓の動きを助けるための「血管拡張薬」
  • 心臓の動きを強める「強心薬」
  • 心臓の休ませる「β遮断薬」
  • 心臓を保護する「ACE阻害薬」

どの薬物を使うかは症状によって異なります。

基本的には退院後も内服治療は続きますので、医師の指示に従いながら内服を行いましょう。

非薬物療法

非薬物療法では心臓や全身の状態や、原因疾患によって下記の治療が行われます。

  • 酸素投与
  • 呼吸補助の治療
  • カテーテルアブレーション
  • 植込み型除細動器(ICD)
  • ペースメーカー植込み
  • 心臓カテーテル治療
  • 冠動脈バイパス術

非薬物療法は全身の状態や、原因疾患によって多岐にわたります。

心不全により、肺の換気がうまく行えない場合は、酸素を投与して酸素の取り込みの補助を行います。また、CPAP(持続的陽圧呼吸)やASV(適応補助換気)によって呼吸自体をサポートする方法もあります。

不整脈に対してはペースメーカーの挿入や、「カーテーテルアブレーション」といって、カテーテルを血管から心臓に入れて不整脈の原因になる部分を焼いてしまいます。

薬物療法と、非薬物療法は片方ずつ行うのではなく、状態に応じて合わせて行うのが一般的です。

心不全につながる危険因子

心不全の危険因子は以下です。

  • 高血圧
  • 高コレステロール
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • ストレス
  • 加齢
  • 感染症

心不全の原因は多岐にわたります。高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病などで血管に負担がかかり続けると、心筋梗塞、弁膜症、心筋症などの原因となり、心不全につながります。

過度なストレスが続くと、自律神経に変調が起こり頻脈や、不整脈の原因となります。ストレスから過食や、喫煙、過度に飲酒することで悪循環が生まれるでしょう。

心不全でも仕事に復帰できるのか

心不全になった場合、職場復帰、仕事復帰は可能なのでしょうか。

今回は、仕事復帰するときの注意点やポイントを4つまとめました。

  • 現状の把握
  • 仕事開始までの準備
  • 社会資源の利用
  • 復職後は周囲に理解者を作る

仕事復帰のポイント①現状を把握する

まずは「どれくらいの運動が可能なのか」現状を把握することが大切です。

心不全は状態により、運動制限が異なります。心疾患患者の「職域における運動許容条件に関するガイドライン」では、身体活動能力をMETs(代謝当量)により評価して、それぞれの職域での身体負荷量により就労の可否を判断することが推奨されています。

【METsとは】

運動強度の単位で、安静時を「1」とした時に​​何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。

活動状況 METs
静かに座っている(安静) 1
​​歩く/軽い筋トレをする 3
階段をのぼる/通勤で自転車に乗る 4
ランニング/重たい荷物の運搬 8

出典:厚生労働省eヘルスネット

こういった基準を元に自分がどれくらいの仕事ができるかを知ることが、職場復帰への第一段階です。

仕事復帰のポイント②仕事開始までに適切な準備する

心疾患は再発のリスクがあります。継続して仕事を続けていくためには病気について理解して再発の予防を行うことが大切です。

  • 薬は自己の判断でやめない
  • 食事、運動について医師の指示(制限)を守る
  • 活動量の維持や増加を意識して生活する
  • 規則正しい生活リズムを作る

再発予防には「生活」を見直す必要があります。パートナーや、家族からの協力が得られるように、病気を理解してもらう機会を設けて、仕事開始のための準備を一緒に行いましょう。

​​​​​​仕事復帰のポイント③社会資源を利用する

仕事復帰に関しては社会資源を利用することも大切です。

休みの期間に会社の有給や、病気休暇を利用したように、社会にある復職を支援する制度や、生活を支える制度を利用しましょう。

【復職・新規就労を支える機関】

復職・新規就労を支える機関 役割
地域障害者職業センター 障害がある方に対して、カウンセラーを配置して、職業評価、職業指導、職業準備訓練を行う。
ハローワーク 登録した求職者へ職業紹介を行う。障害者窓口もあり、障害者を持つ方の相談も受けている。
障害者就業・生活支援センター 障害者に対して「就労」「生活」を両方から支える制度。全国334箇所にセンターが設置されている。
高次脳機能障害支援拠点機関 登録した求職者へ職業紹介を行う。障害者窓口もあり、障害者を持つ方の相談も受けている。
産業保健総合支援センター 長期間療養中の労働者が就労を継続するために、事業所に対する支援を行う機関。病気になっている求職者からの相談も受けている。
就労移行支援 ​障害を持った人の社会進出をサポートする国の支援制度、障害者総合支援法に定められた「障害福祉サービス」のひとつ。働きたい人へ必要な知識やスキルを習得し、就労に向けたトレーニングを行っている。

「生活面」「金銭面」に関する制度は後述します。

仕事復帰するポイント④復職後は周囲に理解者を作る

復職後、就労を続けるには周囲に理解者を作り、働きやすい環境を整えましょう。

  • 運動・作業制限はどれくらいか
  • 通院のペースにともなう休暇の交渉
  • 緊急時(再発による発作など)の対応方法の周知

心臓に負荷がかかることで再発する可能性があります。上記の情報は、上司や、責任者と共有しておきましょう。

疾患に関する話はナイーブな問題ですが、同僚や、先輩などとも話す機会を設けて、いざという時に頼れるような環境を作っておくことも大切です。

環境作りに失敗した話は「​​面接で絶望して就職後にも障壁…先天性心疾患者が体験した一般企業で働くことの難しさ」をご参照ください。

心不全の人に向いてる仕事

心不全と言っても症状は個人で異なります。活動制限も状態によって変わるので、「必ずこの仕事が向いている」という仕事はありません。

とはいえ、心臓の機能が低下している場合、許容範囲上の負荷がかかる作業には注意が必要です。

また、ペースメーカーや、ICD(植え込み型除細動器)を植え込んでいる場合には、溶接や、高圧電圧線の取り扱いなど、強力な電磁波によってデバイスが誤作動を起こす可能性がある職種も危険です。

ペースメーカーと仕事の関係については、こちらの記事「ペースメーカーを埋め込むと仕事にどんな制限があるか?注意すべき環境とは」で詳しく解説しています。

オフィスワークや在宅勤務が理想的ですが、基本的には主治医の指示に従いながら、仕事を選びましょう。

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仕事復帰した心疾患当事者の体験談

では、実際に心不全から職場へ復帰した方の話も具体的にみていきましょう。

今回は、冠動脈剥離から「心筋梗塞」となり、その後に職場復帰を果たした野村さんにお話をうかがいました。

  • 野村さん
  • 50代 女性
  • 通信販売コールセンター勤務
  • 夫は単身赴任で娘と同居中

心筋梗塞は心不全の原因となる疾患の1つです。

野村さんの診断は心筋梗塞ということでしたが、広義では心不全ともいえる症状が出ていました。

野村さんが心疾患になった経緯

Q.発症直後の様子を教えてください。

野村さん:
2021年、49歳の時のことでした。

8月の暑い日でした。朝起きて食事の準備をしていたら左肩の辺りに「顎の下から首にかけて締め付けられるような気持ち悪さ」や「尋常じゃないダルさ」「命がなくなるんじゃないか」という危機感を覚えました。

すぐに救急車を呼び、病院に運ばれてそのまま入院となりました。救急車内で、隊員の会話から心筋梗塞と分かり「私、終わった。マンションで籠の鳥のように暮らすしかないんだ」と感じていました。

野村さん仕事復帰までの過程

Q.入院から復職までの過程を教えてください。

野村さん:
運ばれた病院は心臓疾患の治療で有名な病院でした。

私の年齢で、心筋梗塞になるのはまれで、リスクになるような飲酒や肥満などはなく、医師たちが私の問診をしながら『なぜ心筋梗塞が起こったのか不思議』と言ってたのを覚えています。

あとで知ったのですが、原因は「冠動脈剥離」によるもので、つまり心臓に血液を送る冠動脈の血管の壁がはがれて血流を滞らせたことでした。

めずらしい症例だったようですが、医師たちの中から「僕この症例知ってる。若い女性が稀になる心筋梗塞だよ。」と声をあげた人がいました。結局その先生が主治医になってくれました。

その後は、2回のカテーテル治療、点滴治療、内服治療を行いました。

発症から搬送されるまでの時間が早かったためか、入院期間は2週間ほど、退院後は1ヶ月ほど自宅で療養期間をもらってから復職できました。

復帰後の仕事の変化

Q.復帰後は仕事上で何か変化はありましたか。

野村さん:
通信販売のコールセンターで働いていたのですが、オフィスワークだったこともあり業務上で大きな変化はありませんでした。元々の職種が良かったんだと思います。

また、100人前後の従業員がいて、過度な干渉が無い職場だったので「病気になった」とか、そこまで噂になることもありませんでした。逆にそこが良かったのかもしれません。気楽でした。

変化を挙げるとしたら、発作が起きた時の対応や、スプレー(心筋梗塞時に使用する薬剤)の場所を上司に話しておきました。使い方の用紙もあり、どうやって使うかも説明もしましたね。

仕事復帰してからの生活の変化

Q.退院後の生活の変化は何かありましたか。

野村さん:
夜ふかしをしないように、塩分を摂りすぎないように注意するようになりました。

コレステロールの薬や、心臓の負担を軽減する口する薬を飲んでいるので、そこは心がけています。

あとは、入院が続いて筋力が落ちていたので、軽く運動をするようになりましたね。

Q.生活面で大きな制限はなかったということでしょうか。

野村さん:
発症当時は「終わった」と思ったのですが、制限はありませんでしたね。

医師からは、「3割くらいの心筋がダメにはなっているけど、他がカバーしているから能力は普通の人と変わらない」と言われました。

強いていうなら「ストレスには気をつけて」と言われました。

確かにコールセンターの仕事でクレーム対応をしていて、発症当日にも少しめんどくさいお客さんに電話しなければならなくて、当日の朝もそのことを考えていました。

心不全をはじめとした疾患がある人や、その家族へアドバイス

Q.心筋梗塞や、心不全を発症した人の家族へのアドバイスはありますか。

野村さん:
あまり心配しないでこれからどうするかを考えてくれたら本人からすると心強いかなと思います。

私の場合は、娘が病院へ着いてきてくれたのですが、先生からの説明で泣いていて…

本人以上にパニックになると思いますが、とにかく落ち着いて、今の医療を信じれば大丈夫ということは伝えたいですかね。

心疾患になっても必ず「ダメ」になるわけではない

心筋梗塞や、それに伴う心不全になり、まず考えるのは「死」や「これまでの生活がなくなるのでは無いか?」という不安でしょう。

野村さんも同じような不安を抱えていましたが、現在は職場復職を果たしています。前述したように、心不全患者の81.1%が仕事復帰しているというデータもあります。

「心疾患」と聞くと不安になるかもしれませんが、野村さんのケースからも前向きに治療に取り組むことが大切だということが分かりました。

心不全から退院後の注意点は?

では、ここからは退院後の生活について解説していきたいと思います。

前提として、原因となる疾患や病状で運動の制限や、食事の制限は異なります。生活時の注意点は必ず主治医に確認して従いましょう。

運動制限はあるのか?

運動制限は病状によって医師からの指示がありますので、入院中にしっかり確認しておきましょう。

むしろ注意したいのが「過剰な運動制限」です。

心臓と筋肉は密接に関係しており、心臓の病気に対して適切な運動を行うことで、心臓の機能が落ちた際に筋肉の機能を維持、向上することで症状を改善させることができます。

そのため、心臓の機能低下→息切れ→過剰な安静→筋力低下→息切れが悪化と悪循環に陥ることがあります。

運動は「制限する」より、医師の指示に従いながら、適切な運動を行うことが重要です。

正しい運動については多くの病院で「心臓リハビリテーション」が実施されています。

【心臓リハビリテーションとは】

心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのことです。

出典:日本心臓リハビリテーション学会

外来でも行っているのでこうしたリハビリを利用しながら心臓機能の維持、向上を目指しましょう。

食事制限はあるのか?

食事について注意したいのは「塩分」です。

塩分はナトリウムを多く含んでいます。ナトリウムは水分調整に関わる成分で、摂りすぎることで水を体にためる性質があります。結果として血液循環量が増加して、心臓の負担が増します。

塩分の摂取量の目安

日本心不全学会では、心不全患者が目標とする塩分摂取量を「1日6g未満」としています。

一般的な日本人は平均で塩分を「男性10.1g」「女性9.3g」摂取しており、大幅にオーバーしています。

出典:​​日本生活習慣予防協会

【塩分摂取量について】

心不全患者の目安 健康な日本人の目安 実際の平均摂取量
 男性 6g 7.5g 10.1g
女性 6g 6.5g 9.3g

加工食品や、一部の調味料には塩分が多く使われており使用には注意が必要です。

食品ごとの塩分量

あくまでも一部ですが、加工食品や、調味料の塩分量を見てみましょう。

以下の通りです。

【調味料の塩分量】

食品 塩分1g相当する量 目安 食品 塩分1g相当する量 目安
食塩 1g ​小さじ1/5 味の素 4.5g 小さじ1杯
薄口醤油 6g 小さじ1杯 味ぽん 10g 小さじ2杯
減塩醤油 13g 小さじ2杯 めんつゆ 15g 大さじ1杯
信州みそ 8g 小さじ1.3杯 ごましゃぶ 18g 大さじ1杯強
​​減塩みそ 20g 大さじ1杯強 焼肉のタレ(甘口) 15g 大さじ1杯
ウスターソース 12g 小さじ2杯 カレールー 10g 一人分約20g

【加工食品の塩分量】

食品 食塩 重さ 目安
食パン 0.5g 40g 8枚切り1枚
うどん 0.3g 250g 1玉
そうめん 0.2g 100g 1玉
バター 0.2g 10g 大さじ1杯弱
塩しゃけ 0.9g 50g 1切れ
たらこ 2.8g 60g 1腹
ウインナー 0.3g 15g 1本
梅干し 1.8g 正味8g 1個

出典:京都市立病院

福島県では下記のようなキャッチコピーで塩分の摂り過ぎに注意換気を促しています。

以下をご参照ください。

  • 薄味になれる
  • 漬物、汁物に気をつける
  • 効果的に塩味を使う
  • かけて食べずに、つけて食べる
  • 酸味、香辛料、香り、香ばしさ、油を使う
  • 酒のつまみに注意する
  • 練り製品、加工食品に気をつける
  • 食べすぎないように注意する

薄味も、毎日繰り返すことで慣れてきます。最初はつらいかもしれませんが心不全の再発防止のためには生活習慣を見直す必要があります。

重度の心不全で使える社会制度

重度の心不全の場合は、症状が重く退院後も、仕事面や生活面で大きなハンディキャップを背負うことになります。

そこで今回はぜひ利用して欲しい社会制度を紹介します。

身体障害者手帳

日常生活を送る上で利用したいのが「身体障害者手帳」です。

心臓機能の機能障害があり、日常生活や社会生活に制限がある場合は「内部障害」として身体障害者手帳の交付を受けられます。

身体障害者手帳のメリットは以下の通りです。

  • 医療費の助成
  • 国税や地方税の控除
  • 公共交通機関などの割引
  • 公共施設の割引
  • 車椅子や補聴器など補装具の費用や、住宅リフォーム費用の助成

出典:「身体障害者手帳」厚生労働省

市町村窓口へ、必要書類を提出して審査→受理されることで制度を利用することができます。審査にはおよそ1ヶ月ほどかかるでしょう。

【必要書類】

  • 診断書
  • 申請書
  • 本人の写真
  • マイナンバーがわかる書類

障害者手帳については、こちらの記事「障害者手帳の種類や等級ごとの違いを現役看護師が解説!」で詳しく解説しています。

高額医療制度

治療を受けるにあたって利用したのが「高額医療制度」です。

高額医療制度は、心不全に限らず医療費の負担を小さくしてくれる制度です。

支払った医療費の一部給付を受けることができます。金額は所得や年齢などにより異なります。

【69歳以下の場合】

適用区 自己負担限度額
住民税非課税者 35,400円
~年収約370万円
健保:標準報酬月額26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
年収約370~約770万円
健保:標準報酬月額28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
年収約770~約1,160万円
健保:標準報酬月額53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収約1,160万円~
健保:標準報酬月額83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000円)×1%

出典:厚生労働省公式サイト

たとえば、

  • 70歳未満
  • 医療費3割負担
  • 窓口での支払額30万円
  • 月収28万円〜50万円(年収370万円〜770万円)

上記の条件で計算すると、給付金額は212,570円となります。

利用には、自身が加入している医療保険へ、支給申請書を提出、郵送することであとから支給を受けることができます。

医療費の負担が大きい場合は「高額医療費制度」を利用しましょう。

難病医療費助成制度

一部の難病が原因で心不全となった場合は医療費の助成を受けることができます。

2022年8月時点で、循環系疾患で対象となっているのは下記の21種類となります。

特発性拡張型心筋症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 肥大型心筋症
ファロー四徴症 拘束型心筋症 両大血管右室起始症
総動脈幹遺残症 エプスタイン病 修正大血管転位症
巨大静脈奇形 完全大血管転位症 巨大動脈奇形
単心室症 クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群 左心低形成症候群
先天性三尖弁狭窄症 三尖弁閉鎖症 先天性僧帽弁狭窄症
心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症 先天性肺静脈狭窄症 左肺動脈右肺動脈起始症

上記の疾患の場合、必要な書類を都道府県・指定都市へ申請することで、審査が行われます。

【必要書類】

  • 特定医療費の支給認定申請書
  • 診断書
  • 住民票
  • 課税状況を確認できる書類
  • 保険証の写し

申請が受理されれば、「医療受給者証」が交付されます。

指定医療機関へ提示することで、医療費の支給が受けられます。

障害者年金

障害者年金とは、疾患によって、仕事や生活が制限された患者を支えるための制度です。

国民年金、厚生年金、共済年金の加入者が対象になっており、障害が認められた場合に申請することができます。

等級は障害の状態に応じて決められますが、一部の疾患や状態に応じて原則的に等級が決められていることもあります。

障害等級 具体的な内容 原則的に決まっている状態(心臓関連)
1級 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身の回りのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。
  • 心臓移植をした
  • 人工心臓を置換した
2級 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできてもそれ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
  • CRT(心臓再同期医療機器)を装着した
  • CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した
3級 労働が著しい制限を受ける、または、労働に制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活には、ほとんど支障はないが労働については制限がある方が3級に相当します。
  • 人工弁を置換したもの
  • 心臓ペースメーカーを装着した
  • ICDを装着した
  • 胸部大動脈解離や、胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入した
障害手当金※障害等級3級よりも軽い症状の障害の場合 傷病が治ったもので、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

出典:障害年金が支給される「障害の状態」とは|政府広報オンライン

上記以外の場合でも、

  • 弁疾患
  • 心筋疾患
  • 虚血性心疾患
  • 難治性不整脈
  • 大動脈疾患

などは、検査による数値によって該当する場合があります。

支給される金額は、等級や、加入している年金によって異なります。

障害年金については、こちらの記事「​​心臓疾患で障害年金はもらえるの?障害年金の仕組みと認定基準を徹底解説」で詳しく解説しています。

まとめ

今回は、心不全について解説しました。心不全は生活面、仕事面で制限を守れば社会復帰も可能です。

先行き不安だと思いますが、あなたはひとりではありません。病気と前向きに付き合いながら社会復帰を目指しましょう。

看護師&WEBライター。介護士歴7年、資格取得後に看護師へ転職。国立病院の循環器科を経験。現在は地域医療を学ぶために田舎の救急病院に勤務。検査、救急対応、外来対応、病棟看護なんでもやってます。(Twitter:@ns_shokpan)