公開日 2023年8月8日 最終更新日 2024年2月18日
胸の痛みや違和感にともない心配なのが心疾患です。特に身内に心疾患になった人がいる場合は「まさか自分も?」と不安になっているのではないでしょうか。
本記事は自覚症状を感じている人に向けて、下記を解説します。
- 心臓に関連した8つの症状
- 心臓疾患になりやすい人の特徴
- 心臓に関連した代表的な疾患
この記事を見ながら自分の状況が当てはまっているか確認してみてください。なお、症状や疾患について自己判断は禁物です。違和感があれば必ず専門の医療機関を受診しましょう。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
心臓が悪い人の特徴は?8つの症状を解説
まずは「心臓が悪い人」の特徴をみていきましょう。なお、ここでは「心臓が悪い人=心疾患がある人」として、心疾患によくある症状を解説します。
- 呼吸困難や息切れ
- 胸部の痛みや圧迫感
- 不規則な心拍や頻脈
- 疲労感や倦怠感
- めまいや失神
- 腕や足の浮腫(むくみ)
- 睡眠時の呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)
- チアノーゼ
それぞれ見ていきましょう。
呼吸困難や息切れ
呼吸困難や、息切れは「心不全」の代表的な症状です。
何らかの原因で、血流が滞ることで肺への血流量が低下して「酸素」や「二酸化炭素」などのガス交換がうまくできなくなります。
初期では、坂道を登ったとき、重たいものを持ったときに息切れする程度で、重症化すると安静時にも呼吸困難を自覚します。
胸部の痛みや圧迫感
心臓に関連する胸部の痛みにはいくつかの原因があります。代表的な疾患は「心筋梗塞」や「狭心症」です。
これらは心臓への血流に関連して発症して、締めつけ感や、圧迫感、胸痛などの症状を引き起こします。
「狭心症」は一過性ですが、「心筋梗塞」は血流不足により心筋が壊死している状態であり重篤な障害が残るケースがあります。
不規則な心拍や頻脈
不規則な心拍や頻脈も心臓に関連した代表的な症状です。
これらの不整脈は、運動や過度な興奮などの生理的要因でも起こり、治療が不要なケースもあります。
一方で動悸、胸痛、めまい、失神などの自覚症状や、脳梗塞や塞栓症などの重大な合併症を起こすケースもあるため注意が必要です。
疲労感や倦怠感
心機能が低下するとポンプの役割が果たせず血流が滞ります。全身の筋肉や内臓にも栄養や酸素が送られず、疲労感や倦怠感につながります。
また、前述した心機能低下による「呼吸困難感」や「息切れ」なども疲れを感じる原因となっています。
めまいや失神
心疾患に関連してめまいや失神が起こるケースもあります。原因は脳への血流不足などです。
なお、別の原因としてめまいは「三半規管」などの平衡感覚機能の障害により起こるケースもあります。
心疾患との違いとして、平衡感覚機能の障害によるめまいは、立っているときに「ふわふわとした浮遊感」「まっすぐ歩けない失調感」などを感じます。(※個人差はあります。)
心疾患に関連しためまいや失神は、普段通りに生活している最中に「なんの前触れもなく意識が遠のく感覚」が特徴です。
腕や足の浮腫(むくみ)
むくみも心疾患では代表的な症状です。
心臓が悪くなると、腎臓に血液が運ばれず尿を作る働きが悪くなります。尿が作られないことで体内に水分が貯留してむくみが生じます。
なお、むくみにはいくつかの種類があります。心不全などで見られる圧痕性浮腫では「むくんでいると思われる部分」を指で押すと指の跡が残るといった特徴があります。
睡眠時の呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)
心疾患があり、心臓から送り出される血流量が減少すると、呼吸中枢の調整が不安定になり睡眠時の呼吸が乱れやすくなります。
なお、無呼吸状態になると交感神経の活動が高まり血圧が上がります。心臓への負担は増えて心肥大や、不整脈などにつながる悪循環に陥ります。
チアノーゼ
チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することを指します。
酸素が不足した血液は青みがかっており、これが循環すると皮膚が青っぽくなります。
これも心臓に起因することがあり、酸素を取り込まないまま、血液が循環するとチアノーゼが生じます。
心臓疾患になりやすい人とは?6つの特徴を解説
では、どのような場合に心臓が悪くなりやすいのでしょうか。心臓に負担がかかりやすい状態を5つ紹介します。
- 高血圧の人
- ストレスを溜めている人
- 生活習慣が乱れている人
- 高コレステロール
- 糖尿病の人
- 喫煙者
それぞれ見ていきましょう。
高血圧の人
血圧とは、「心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す力」です。高血圧があると、心臓は絶えず強い力で血液を送りださなけらればならず、心臓の筋肉は徐々に肥大します。
さらにその状態が続くと心臓は疲労して、ポンプ機能は低下して、心不全につながります。
高血圧には生活習慣などに起因して、原因がはっきりと分からない「本態性高血圧」と、腎臓の障害や、内分泌障害による「二次性高血圧」に分類されます。
高血圧はさまざまな合併症のリスクもあるため、原因が分かっている場合は、早急に改善しましょう。
高血圧については、こちらの記事「高血圧の人には仕事制限がある?注意すべきポイントと利用できる制度を紹介」で詳しく解説しています。
ストレスを溜めている人
ストレスも心臓によくありません。ストレスは交感神経の働きを高めて血圧を上昇させます。血管を収縮させる働きがあり、より心臓に負担がかかりやすくなります。
また、ストレスに関連して飲酒、食生活の乱れ、睡眠不足などの生活習慣の乱れにつながるため慢性的なストレスを抱えている人は注意が必要です。
ストレスと心臓病の関係性については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは?影響を受ける病気や適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。
生活習慣が乱れている人
生活習慣の乱れにも注意が必要です。生活習慣とは「食生活」「睡眠」「運動習慣」などを指します。
食生活に関連して、心臓に関わる要因は「塩分」が上げられるでしょう。塩分の摂りすぎは高血圧の原因となります。日本人は平均して、2g程度(濃口しょう油に換算すると小さじ2杯強に相当)上回っていると言われており注意が必要です。
また、4時間未満の睡眠も交感神経の緊張につながり、高血圧のリスクをあげると言われています。
生活習慣については、こちらの記事「睡眠不足は心臓病につながる?生活習慣を見直して病気のリスクを減らそう」で詳しく解説しています。
高コレステロールの人
「高コレステロール血症」「高脂血症」「脂質異常症」などは、いずれも血液中の脂質成分が異常値になっている状態を指しており、動脈硬化のリスクを高めます。
動脈硬化とは、コレステロールにより血管の内腔が狭くなった状態です。これらは高血圧につながり心臓にも負荷をかける原因となります。また、動脈硬化は脳梗塞や、心筋梗塞、大動脈解離などの重大な合併症を引き起こすため注意が必要です。
高コレステロールは食生活にも関連します。心臓に関連した食事の注意点については、こちらの記事「心臓病に良い食べ物を摂取して悪化予防!避けるべき食べ物や食生活もご紹介」で詳しく解説しています。
糖尿病の人
血糖が高い状態が続くと、血管壁に炎症が起こり、傷つきやすくなります。傷の部分にコレステロールが付着すると内腔が狭くなり、動脈硬化につながります。
前述した通り、動脈硬化は心筋梗塞や、狭心症などの心臓疾患のリスクを高めます。
また、糖尿病自体にも糖尿病神経障害、糖尿病腎症、糖尿病網膜症などの重大な合併症のリスクがあるため要注意です。
喫煙者
タバコにはいくつかの有害物質が含まれており、交感神経の刺激による心拍数の増加や血圧上昇、心筋の収縮および酸素需要の増加を引き起こすと言われています。
また、血管収縮による血流量低下、酸素や栄養の供給低下を招きます。
血栓の形成や、動脈硬化にもつながると言われており、心臓の負荷やそれに関連した心臓疾患のリスクを高めるので注意しましょう。
心臓疾患の種類と特徴的な症状
では、最後に心疾患の種類や、関連して起こる可能性がある症状について見ていきましょう。
- 心不全
- 冠動脈疾患
- 弁膜症
- 心筋症
- 不整脈
- 大動脈疾患
- 末梢血管疾患
- 肺血管疾患
なお、心臓疾患については「心臓病にはどんな種類がある?代表的な疾患と注意すべき症状を解説」もご覧ください。
心不全
心不全とは、心臓の機能的異常により、ポンプ機能が破綻しており、呼吸困難や倦怠感、浮腫などの症状が出現している状態です。
原因は後述する「大動脈疾患」「弁膜症」「心筋梗塞」「心筋症」などがあげられます。
これらの疾患は、高血圧や動脈硬化に起因するケースがあり、予防に運動習慣や食生活などの生活習慣が重要です。すでに症状が出ている場合は、専門の医療機関を受診しましょう。
心不全については、こちらの記事「改めて知りたい!心不全の原因と種類・症状・治療の知識をアップデート」で詳しく解説しています。
冠動脈疾患
「狭心症」や「心筋梗塞」などをまとめて冠動脈疾患と呼びます。冠動脈とは心臓へ血液を送る重要な血管です。
冠動脈の内壁にコレステロールが沈着して血流障害が起こると、胸痛や胸部の圧迫感を引き起こします。
また、血流が完全に途絶えて心筋が壊死した状態を心筋梗塞といい、この場合も締め付けられるような胸部の強い痛みや圧迫感が起こります。
心筋梗塞については、こちらの記事「心筋梗塞になっても仕事は続けられる?後遺症の有無や無理なく働ける方法を解説」で詳しく解説しています。
弁膜症
弁膜症とは、心臓内の「弁」に関連する疾患です。
心臓には「大動脈弁」「僧帽弁」「肺動脈弁」「三尖弁」と呼ばれる4つの弁があり、心臓内を4つの部屋に区分けしています。
4つの弁は心臓内で血液が逆流しないようにする役割を持っています。
この弁が狭くなり血流が滞ったり、正常に閉じずに血液が逆流する状態を「弁膜症」と言います。原因は感染症や動脈硬化、加齢に伴う変性、先天的な要因などです。
症状は障害が起こっている弁によっても異なりますが、息切れ、胸の圧迫感、疲労感、ふらつき、めまい、失神および運動困難などが上げられます。弁膜症については、こちらの記事「心臓弁膜症により仕事・生活上の制限はあるのか?使える制度と相談機関を解説」で詳しく解説しています。
心筋症
心筋症とは「心筋の異常により、心臓の機能異常をきたす病気」です。
代表的な症状は、動悸、労作時の息切れ、呼吸困難、体のむくみ、体重増加などです。原因ははっきりとは分かっておらず、ウイルス感染や、自己免疫疾患の可能性が注目されています。
不整脈
不整脈とは、「脈がゆっくり打つ」「速く打つ」または「不規則に打つ」状態です。1分間に100回以上脈がある状態を「頻脈」、1分間に50回以下の状態を「徐脈」と呼びます。
不整脈は運動、精神的興奮、発熱や、加齢などの生理的な要因で起こるケースもあり、全てが治療の対象となるわけではありません。一方で、心臓の器質的な原因で起こり、重大な合併症や症状を引き起こすものもあります。症状はさまざまですが、動悸やめまい、失神、息切れなどが上げられます。
不整脈については、こちらの記事「不整脈で仕事を休むときの注意点 無理して働き続けることのリスクとは?」で詳しく解説しています。
大動脈疾患
大動脈とは、心臓につながる血管で肺以外の全身へ血流を送る血管です。大動脈疾患は文字通り、大動脈に関連する疾患で「大動脈解離」「大動脈瘤」などがあげられます。
これらは重症化すると命に関わる可能性がある疾患です。高血圧、動脈硬化、糖尿病、遺伝などさまざまな要因が関連すると言われています。
大動脈瘤は症状が出ないことが大半ですが、腫瘤が大きくなると、声帯の動きに関連する神経を圧迫して、声がしわがれる「嗄声」が出る場合があります。
大動脈解離では胸部の違和感や、胸部痛、背部痛などです。どちらも血管壁が破裂すると大量出血につながり命に関わります。
大動脈解離については、こちらの記事「大動脈解離の予後と仕事復帰の可能性を解説!就労に役立つ制度も紹介」で詳しく解説しています。
末梢血管疾患
末梢血管疾患とは、手足の血管の動脈硬化により血管内が狭くなり、血行障害が起こる疾患です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などが関連しています。
症状としては手足のしびれや、一定の距離を歩いたときのふくらはぎの痛みなどが現れます。階段や坂道を昇ると症状が出やすく、病気が進むと歩ける距離も短くなっていきます。
心疾患の検査と治療方法
心疾患の検査にはさまざまな種類があります。下記などです。
- 心電図検査
- 血液検査
- ホルター心電図
- イベント型心電計
- 運動負荷心電図
- 超音波(エコー)検査
- CT検査
- MRI検査
- シンチグラフィー
- 心臓カテーテル検査
治療は、薬物療法や外科的治療、閉塞した血管を広げるためのカテーテル治療などがあります。また、不整脈に対しては「ペースメーカー」や「ICD」の植え込みを行うケースもあります。
ペースメーカーとICDについては、こちらの記事「ペースメーカーを埋め込むと仕事にどんな制限があるか?注意すべき環境とは」「ICDとは?機能や植え込みにかかる費用を解説!生活や仕事に与える影響とは」でそれぞれ詳しく解説しています。
心臓に違和感があるならすぐに病院受診を
本日は下記を解説しました。
- 心臓に関連した8つの症状
- 心臓疾患になりやすい人の特徴
- 心臓に関連した代表的な疾患
本記事は、「心臓が悪い人」を「心疾患がある人」として、さまざま症状や疾患を解説しました。
心疾患は命に関わる可能性もあります。本記事で当てはまる症状がある場合や、違和感がある場合は、自分で判断せず専門の医療機関を受診しましょう。
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