NPO活動を通して気づいた役割〜あなたの声が必要です〜

私は、理学療法士の仕事以外にフリーランスとして活動しています。この「はとらく」でのライター活動もそのひとつです。

そしてもうひとつ、「NPO法人グリーンリボン推進協会」という団体の広島支部で活動しています。グリーンリボンとは移植医療のシンボルです。

先日、協会メンバーで会議がありました。そこで話に上がったのが、関東支部のメンバーは移植当事者や家族が多いけれど、広島支部は移植当事者は少なく、ボランティアの人が多いという事でした。移植医療という大きなテーマに対して、当事者ではない人が関心を寄せ、普及活動を行うという事はとても有意義だと思います。

しかし、当事者が少ない事で、本当に当事者が伝えたい事を伝えられているのか、伝わっているのか、判断が難しい面もあります。どちらが多い方が良いという事ではなく、当事者だからできる事、ボランティアだからできる事のバランスが大切だと思います。

今回は、普及活動の中での当事者とボランティア、それぞれの役割を考えていきます。

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執筆:大前 有香

理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。執筆記事一覧

【目次】

NPO法人グリーンリボン推進協会とは

『1人でも多くのいのちが救われる未来を目指して』を活動理念に、大阪・神奈川・広島を拠点に移植医療の普及活動を行っています。

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臓器移植を知ろう

「臓器移植」と聞くと、難しい話で、どこか他人事のように感じる方も多いのではないでしょうか。実は、移植当事者や家族もそうでした。ほとんどの人が「まさか自分が」「まさか家族が」移植が必要になるなんて、考えた事もなかったと言います。

臓器移植が必要となる病気は様々ですが、どんな病気もいつ自分事になるかわかりません。その時に、臓器移植について知っていることで、不安の軽減はもちろん、治療の選択や手続きなども迅速に対応することができます。

広島支部では毎年「グリーンリボンフェス」という音楽を通して臓器移植を知ってもらうイベントを開催しています。ステージでの音楽だけでなく、グリーンリボンや臓器移植についてのクイズや展示、ワークショップなど様々なコンテンツがあり好評です。このようなイベントを通して、家族や友達、大切な人と臓器移植について話すきっかけが増えることを願っています。

意思表示から始めよう

臓器移植普及活動のひとつに「意思表示」があります。臓器移植について、「臓器提供をする・しない。臓器提供を受ける・受けない。」など自分の意思を表示することが大切です。意思表示の方法は、意思表示カードだけではなく免許証や保険証の裏など様々です。

そして、意思表示をしたら家族に伝えておくことが大切です。なぜなら、臓器移植における最終決断は、家族に委ねられることが多いからです。

あなたの意思がわからず、すべてを家族が決断するのは精神的負担が大きすぎると思いませんか?家族のためにも、意思表示は必要だと思っています。

普及活動におけるそれぞれの役割

現在、多くの患者会やNPO法人が病気があっても暮らしやすい社会をめざして活動しています。当事者とボランティアが一緒に活動していく上で、それぞれの役割を理解し動くこと、役割分担は必要だと思います。

当事者の役割

当事者の一番の役割は、声をあげることです。病気を抱えて生活していく上で、色々と不便なことや理不尽さを感じることがあると思います。しかしそれは、当事者以外にはわかりにくい部分です。

つまり社会の大多数の人がわからないので、そんな社会を変えたいと思ったら声をあげて気づいてもらう必要があります。社会と言うと大袈裟に聞こえますが、自分がいる環境で考えてもらえればと思います。

ボランティアの役割

当事者でないボランティアの役割も、もちろん声をあげることです。しかし、当事者と違う部分は自分の想いや意見だけではなく、当事者の声を伝えることだと思います。「自分達はこう思っていたけれど、実は当事者はこう思っていた。」というように、感じ方や捉え方のギャップなどを伝えていくと効果的だと思います。

他には、実際に動くことが求められます。当事者は病気を抱えている為、実際に動ける範囲やできることが限られることがあります。そのような場面では、動ける人が代わりに動き補っていく必要があります。社会活動、普及活動は、想像以上に体力が必要なのです。

【関連コラム】

お互いに支え合い、社会を変えていく

病気を抱えながら生活している人は、今ある社会に適応していこうとしているように感じます。でも、それはとても負担だと思います。病気があっても大丈夫と言える社会にしていきたい。そんな想いがあるのではないでしょうか。

実際に、当事者の方々が積極的に社会活動されている団体もあります。患者会もそのひとつです。

しかし、その活動を見ていると病気を抱えている人やその家族が講演会を企画・運営するなど一生懸命に動いていることが多いように思います。病気を抱えて、身体がつらいのに、他にも苦しんでいる人がいるはずだと頑張っているのです。そして、そんな当事者を日頃から支えている家族もまた自分の生活と両立させながら頑張っているのです。

そこに私は、とても違和感を覚えます。

当事者の声を社会に伝えることはとても大切で、その活動の中心に当事者がいるのは当たり前だと思います。当たり前なのですが、全てを当事者が担うのは違うと思っています。講演会やイベントの準備など体力的な部分はボランティアを募り、手伝ってもらう。できない部分は誰かに補ってもらえばいいんです。すべてひとりでやろうとすると、声をあげることが難しく感じてしまいます。

当事者はただ声をあげればいいんです。動くのはその想いに共感した、病気を持たない私達でいいんです。そうやってお互いの役割を果たしながら、社会を変えていくことが大切だと感じています。

知ろうとすることが第一歩

前回のピアサポートに続き、当事者だからできることを考えてきました。

私は当事者ではありませんが、心臓病があっても大丈夫と言える社会を望んでいます。しかし、その社会がどんな社会なのかは当事者にしかわかりません。グリーンリボン推進協会に入って初めて知ったことがたくさんあります。

移植までの待機期間の長さ、VADを装着して生活すること、移植後も服薬や定期検診は続き移植したら終わりではないこと。これらは、知ろうとしなければ知らないままでした。

だから、多くの人に知って欲しい。どんなことが大変で、どんなことが必要なのか。当事者同士で話し合うことも大切ですが、声を届けるべきは外の社会です。私もみなさんの声を届けられるよう日々精進していきます!

※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。

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理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。