公開日 2024年4月10日 最終更新日 2024年4月10日
「心臓ヨガ®」という言葉を聞いたことはありますか?
私が心臓リハビリテーション指導士として働いていた頃、病院以外での運動方法について色々と考えていました。そんな時に、ヨガと心臓病についての学会発表を見つけ「心臓 ヨガ」で検索したところ、この「心臓ヨガ®」と出会いました。
早速、基礎講座、プラクティショナー養成講座に申し込み、受講しました。この2回の講座を通して、心臓病のない私ですがプラクティショナー(実践者)として、日々の生活にどのように活かしているのかお伝えします。
執筆:大前 有香
理学療法士、心臓リハビリテーション指導士。病院、介護施設、在宅と色々な分野で働いてきた。今は2人を子育てしながら家での新しい働き方を模索中。執筆記事一覧
【目次】
心臓ヨガ®とは
心臓ヨガ®は、私と同じ理学療法士で心臓リハビリテーション指導士の秋山綾子さんが考案しました。
心臓を感じることでありのままの自分と向き合い、自分らしく生きていく大切さをヨガを通して伝えています。秋山さんは心臓病でお兄さんを亡くされていることもあり、心臓ヨガ®開発の裏には心臓病予防への強い想いがあります。
詳しく知りたい方はこちらから。
ヨガ=ポーズではない
ヨガと聞くと多くの人が様々なポーズを想像すると思います。しかし、本来のヨガは瞑想や座禅が中心でした。ヨガを体系的に編纂した最古の文献と言われる「ヨガ・スートラ」はパタンジャリという哲学者の手により作られた事からも、ヨガには哲学的要素が含まれていると想像されます。
この著書の冒頭でヨガを「心を静めるもの」と定義しています。そして、ヨガには八支則という教えがあります。これは、自分と向き合い、より調和のとれた良い状態へと導く教えとして書かれています。今回は詳細な説明は割愛しますが、興味のある方は検索してみてください。
現代のヨガは、フィットネスの分野で使われることがありますが、それらは伝統的なヨガとは少し異なります。ヨガの長い歴史の中で少しずつ形を変えてきているのでしょう。
心臓ヨガ®の3つの要素
では、心臓ヨガ®️はどのような形のヨガなのでしょうか。心臓ヨガ®️には大きく3つの要素があります。
それが、「心臓科学」「伝統的ヨガ」「ポジティブヘルス」です。心臓ヨガ®️開発にあたっては、心臓に関する医学的知識だけではなく科学として広い視野で心臓を見ています。伝統的ヨガとして八支則を原点とした哲学的思考を取り入れており、その中にアーサナというポーズや呼吸法があります。そこから更に思考を広げ、ポジティブヘルスというポジティブ思考が健康に与える影響も考えられています。
これらの要素を取り入れた心臓ヨガ®️では、心臓を通して「ありのままの自分」とつながることを大切にしています。
心臓を意識してますか?
日常生活の中で、心臓がどのように動いているか気にしていますか?心臓病を抱えていると、体調が悪いと脈が乱れる、息が上がるなど、他の人よりも意識する場面が多いかもしれません。それでも、調子がよい時には気にしないこともあるのではないでしょうか。
心臓ヨガ®でも、他のヨガ同様にポーズを取ります。しかし、そこではポーズを保つことよりもその時の心臓に意識を向けていくことに焦点が当てられます。
心臓の役割
心臓に意識を向けるためには、まず心臓を知ることが必要です。まず、心臓の位置です。左胸を想像される方が多いと思いますが、実は真ん中にあります。みぞおちの少し上あたりに、握りこぶし大の大きさで存在しています。
そして、私たちの心臓には4つの部屋があります。そこから血液を送り出したり、受け取ったりして循環させています。これらの機能は、母親の胎内でおおよそ妊娠4カ月頃に完成します。もちろん違う形で完成する心臓もありますが、どんな心臓もそこから生涯尽きるまで、休むことなく動き続けていくのです。
心臓は、全身に血液を送るポンプ機能をもつ臓器であり、その機能は生命維持と直結しています。私たちが生きていくために心臓は必要不可欠な存在、いうならば大切なパートナーなのです。パートナーはお互いに支え合って生きていくものです。私たちは心臓に生かされていますが、心臓もまた私たちによって生かされているのです。
心臓と感情
心臓には自動能といって、自身で動く機能がありますが、その動きは自律神経の影響を強く受けます。そして自律神経は、感情の影響を受けます。ストレスにより不快な刺激が入ると、交感神経が活性化し心臓に負担をかけます。逆にリラックスしていると副交感神経が働き心臓をいたわってくれます。
ストレスや不安が続けば負担がかかり続け、心臓は疲れてしまいます。また、感情の起伏が激しくても心臓は疲れてしまいます。しかし、心臓は疲れても文句は言えません。ただひたすら私たちを生かすために動き続けるのです。もちろん心臓には限界はあります。だから、私たちが早く気づいてあげることが必要なのです。
心臓ヨガ®を体験
ここからは、実際私が体験した心臓ヨガ®講座の話をしていきます。当時の名称、内容ですので現在の講座内容等はホームページでご確認ください。
基礎講座
心臓ヨガ®️の基礎について学ぶ講座です。心臓の生理学的な知識も学べるので、医療従事者でなくても問題ありません。そのほかにも、心臓の不思議や心臓に関する研究など様々な心臓に関するトピックスがあり、心臓への興味が更に深まりました。そして私は、ここで初めて伝統的ヨガが哲学であると知りました。そして、ヨガ哲学の基本である八支則を学び、日常生活でどのように活かしていけるか考えました。
私の一番の学びとなったのは、心臓に感謝することで波動を高めるハート磨き®️の実践でした。「歯磨きのようにハート磨きを生活の中に取り入れて欲しい」という秋山さんの想いが伝わりました。ハート磨き®️については、また別の機会にお話できたらと思います。
プラクティショナー養成講座
基礎講座を終えて、もっと心臓ヨガ®️を実践的に学びたい!と思い、プラクティショナー養成講座を受講しました。プラクティショナーとは実践者という意味で、日常生活の中で自分が実践していくための講座です。そのため、基礎講座ではあまりなかったポーズの実践が多くありました。自慢ではありませんが、身体がめちゃくちゃ硬い私なので「身体が硬くても大丈夫です」という言葉は信じていませんでした。
実際は、難しいポーズもそれほどなく自分のできる範囲でやれました。ここで大切にされているのは、ポーズをとることに集中せず、そのときの心臓に意識を向けることでした。頭では理解していてもやはり『足がプルプルしてきたー』など、他の部位に意識が向きます。しかし、繰り返すうちに心臓の存在を感じられるようになりました。ポーズに慣れていくことで、自分の心に余裕ができたのでしょう。おもしろいことに、心に余裕がないと心=心臓を感じることができないようです。ポーズの前後では、感情の変化をアウトプットしていきます。大きな変化はありませんが、その都度自分の感情と向き合うことが大切なのだと感じました。
私は心臓リハビリを提供する中で、数値や臨床症状から心臓の動きをイメージしてきました。ですが、今回は拍動や呼吸、自分の感情を通して自分の心臓をリアルにイメージするという初めての体験でした。人生で初めて自分の心臓を愛おしく思えた時間でした。
体験後の実践
プラクティショナー養成講座の目的は、プラクティショナー(実践者)を養成することです。しかし、正直なところポーズの実践は難しいと感じています。時間に追われる日々の中、ヨガのポーズをとる時間は私の中で優先順位として低いのです。
そんな私がひとつだけ実践できているのが、基礎講座で学んだ「ハート磨き®」です。いつでもどこでもできるので、ふとした瞬間に実践したり、眠る前には毎日実践しています。イライラしたりモヤモヤしたりしていても、一呼吸おいて心臓に感謝することで感情の整理ができます。ストレスは心臓に悪いとわかっていても、生きていくうえでストレスは避けられないものです。様々なストレスに対し、一緒に頑張った心臓と自分をいたわる時間を眠る前に作っている感覚です。
ストレスに与える影響については、こちらの記事「心臓病とストレスの意外な関係とは?影響を受ける病気や適切な対処法も解説!」で詳しく解説しています。
心臓についてより深く考えるきっかけになった
ヨガは、以前より心臓リハビリテーションの運動療法としてアメリカで取り入れられてきました。日本でも近年、その効果に注目し取り入れている病院が増えてきています。私も運動療法として提供することを目的として、ヨガを勉強しようと思いました。しかし、心臓ヨガ®と出会い、講座を受けたことで「ヨガ=運動」という概念が変わりました。そして、心臓リハビリは運動だけではないという私の理念とも繋がりました。
生まれる前から私と共にあり、生涯私のためだけに動いてくれる心臓。心臓がおおよそ1分間に70回拍動するとして、1日で10万800回、1年で3679万2,000回。自分が生まれてから今までどのくらい動いてくれているのか、是非調べてみてください。そんな心臓に意識を向け、日々感謝する。この感謝の気持ちが心臓にとってよい影響を与えるとも言われています。心臓病の影響で運動が制限されていたり、ヨガのポーズを保つ自信がなかったりする人は、ハート磨きから試してみてもよいかもしれません。もちろん心臓病がなくても、ありのままの自分と向き合うことは大切なことだと感じています。
「ハート磨きを歯磨きのように」私も実践していこうと思います!