ICDとペースメーカーって何が違う?それぞれの役割や機能をくわしく解説

公開日 2024年2月13日 最終更新日 2024年2月18日

ICDやペースメーカーはいずれも心臓に挿入するもので、放置すると命の危険につながるような、不整脈のある方に適応される医療機器です。ICDやペースメーカーの適応疾患の特徴として、突然発症することも少なくありません。

日常生活を送るなか、急にICDやペースメーカーなどの治療を受けなくてはならなくなり、戸惑う方もいらっしゃるのではないのでしょうか。

「ICDやペースメーカーの違いはなに?」
「ICDやペースメーカーの取扱いで気をつけなきゃいけないことは?」

とお悩みの方に向けて、ICDとペースメーカーの役割や機能の違いをくわしく解説していきます。ぜひ最後までご覧になり、安心して日常生活を送るための参考にしてください。

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監修:谷 道人

沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。

【目次】

ICDとペースメーカーとは

ICDとペースメーカーはどちらも心臓に挿入し、重大な不整脈に対する治療として使用される医療機器です。しかし、ICDとペースメーカーは、それぞれ適応となる疾患が大きく異なります。

また、ICDとペースメーカーの違いは治療適応となる疾患だけでなく、治療方法や注意点も異なります。一見どれも似ているようでわかりにくいかもしれませんが、それぞれの違いや特性を理解することで、安心して日常生活を送れるようになるでしょう。

それでは、ICDとペースメーカーの適応疾患や機能・役割について解説していきます。

ICDとペースメーカーの適応疾患

ICDとペースメーカーの適応疾患は以下の通りです。

【ICD】

  • 致死性不整脈(心室頻拍、心室細動)

【ペースメーカー】

  • 洞機能不全症候(洞停止、洞徐脈、洞頻脈症候群)
  • 房室ブロック(高度房室ブロック、完全房室ブロック)

ICDやペースメーカーはそれぞれ心臓の働きをサポートするものです。一方で、どのような状態に対して作用するのかは、上記のように異なっています。

機能の違い

ICDとペースメーカーの機能は以下の通りです。

【ICD】
致死性不整脈を感知し、電気ショックを作動

【ペースメーカー】
徐脈となった際に、設定された脈拍を下回らないよう心臓に刺激を与える

ICDは心臓が正常に動いていないとき電気ショックとして作動し、ペースメーカーは心臓の動きが一定のスピードよりも下回らないように調律を保たせるもの、といったイメージを持つと良いでしょう。

それぞれの役割

【ICD】
致死性不整脈が出現した際に、電気ショックを作動させ、心臓の動きを正常に戻す

【ペースメーカー】
徐脈に対する治療

ICDは心臓が致死性不整脈により、生命維持に必要な心臓の働きができなくなる、もしくはできなくなっている状態の際に治療を行います。致死性不整脈により心停止に関わる状態を治療し、心臓が正しい動きができるようにサポートします。

一方で、ペースメーカーは徐脈により心臓の動きが遅くなり、全身に血液が回りにくくなることを防ぐ役割を持ちます。徐脈性不整脈が出現した際に作動し、日常生活動作に必要な酸素を全身に供給できるようにするものです。

いずれも、致死性不整脈や徐脈性不整脈が出現した場合に作動します。あくまでも、それらの状態を根治させる役割ではないということを正しく理解することが大切です。

またICDと近しい働きをするS-ICD(皮下植込み型除細動器)というものもあります。S-ICDについては、こちらの記事「S-ICD(皮下植込み型除細動器)とは?ICDとの違いやメリット・デメリットを解説!」で詳しく解説しています。

【関連コラム】

心臓再同期療法(CRT)の機能・役割

ICDやペースメーカーのほかに、心臓再同期療法(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy以下CRT)というものがあります。

CRTは、ICDやペースメーカーなど不整脈や脈拍に関連する治療法とは異なり、重症の心不全に対して行われる治療法です。

具体的には、左右の心室を同時にペーシングし収縮させることで、心臓のポンプ機能を改善させることを目的としています。

ICD・ペースメーカー植え込み後の日常生活における注意点

それでは、ICD・ペースメーカー植え込み後の日常生活における注意点について解説していきます。また、日常生活に関しては、こちらの記事「ペースメーカーを入れた後の日常生活で気をつけるべきことを解説」で詳しく解説しています。

食事

ICDやペースメーカーを植え込み後、医師より特別な指示がない限り、とくに食事制限は必要ありません。しかし、ICDやペースメーカーを植え込まれた方の中には、心機能低下による何らかの懸念がある可能性があります。

また、心疾患以外に持病をお持ちの方は、制限がつく場合もあるため、担当医師へ相談するようにしましょう。持病の有無にかかわらず、塩分や糖分、またアルコールの過剰な摂取や暴飲暴食は避けることが望ましいでしょう。

心臓病の人の食事に関しては、こちらの記事「心臓病に良い食べ物を摂取して悪化予防!避けるべき心臓に悪い食べ物や食生活もご紹介」で詳しく解説しています。

運動

いずれにおいても、ICDやペースメーカーが植え込まれている側の腕に非常に重い荷物を持ったり、力がかかる動作は避けるようにしましょう。また、運動中に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合は、運動を中止し安静にするようにして下さい。

ICDの場合、患者さんによっては作動によるショックを大きく感じ、失神を起こす場合があるといわれています。

運動中や外出先で作動した場合、転倒による事故など二次的被害に遭わないよう注意する必要があります。体調に異常を感じた際は、すぐに安全な場所で安静にすることを心がけましょう。

仕事

ICDやペースメーカーを植え込むと、身体障害者1級・3級・4級のいずれかの認定となります。植え込むことにより、生活上いくつかの制限はありますが、以前と大きく変わらない生活を送ることが可能です。

しかし、ICDやペースメーカーは機器の特性上電磁波の影響を受けるため、就労内容によっては制限がかかる場合があります。

たとえば、重労働やスポーツにかかわる仕事は、体動によりペースメーカー本体やリードへ影響する可能性があります。また、電力や機械類に関わる仕事は、電磁波干渉によりICD・ペースメーカーの動作異常に影響する可能性があります。

このように、術前の仕事がペースメーカーやICDの動作に影響がないか、職場や担当医師と相談し確認しておくことが大切です。また、どうしても調整が困難な場合、場合によっては転職を考慮することも必要となるでしょう。

その場合は、心疾患などの病気の特性を理解した転職の窓口に相談することがおすすめです。

仕事に関しては、こちらの記事「ペースメーカーを埋め込むと仕事にどんな制限があるか?注意すべき環境とは」で詳しく解説しています。

してはいけないこと

ICDやペースメーカー植え込み後は、動作に影響を与えるような場所や物に近づかないよう注意する必要があります。以下に、動作に影響を与える可能性があるものをまとめました。

【影響を受けない】

  • Wi-Fi
  • 電子レンジ
  • サウナ、岩盤浴
  • 洗濯機
  • 冷蔵庫
  • 掃除機
  • 電気カミソリ
  • ヘアドライヤー
  • テレビ、ラジオ

【影響を受ける可能性があるもの】

  • 電磁調理器
  • IH機器
  • トランシーバー
  • 携帯電話
  • 体脂肪計
  • 金属探知機
  • スマートキーシステム搭載車
  • ICカード読み取り機
  • 盗難防止ゲート

【影響を受けるもの】

  • MRI(非対応ペースメーカーのみ)
  • レーダーアンテナ、中継基地、放送所アンテナ
  • 不良電気器具
  • 発電設備
  • 大型モーター
  • 高電圧設備
  • 強力な磁場が発生する場所
  • 電気風呂、磁気マット

日常生活や仕事で身近なものがないか、上記の表をぜひ参考にしてみてください。

ICDやペースメーカーを植え込むことで受けられる制度

ICDやペースメーカーを植え込むと、身体障害者手帳1・3・4級のいずれかに該当します。お住まいの自治体や所得状況により、受けられる支援はさまざまですが、以下のような支援を受けられるようになります。

  • 障害者雇用枠への応募
  • 医療費の助成
  • 一部税金の免除・減税
  • 交通機関・インフラの割引
  • 民間企業による割引

上記のほか、障害者雇用枠で就労すると、業務内容の変更や時短・時差出勤の許可、通院休暇の取得などの支援を受けながら就労することも可能となります。

障害者手帳の交付については、こちらの記事「心臓疾患の人は障害者手帳を持つべき?メリットや申請方法について解説」で詳しく解説しています。

治療への心構え

ペースメーカーは心臓の調律を保ち徐脈を防ぐための治療です。一般的に、ペースメーカー作動での刺激による痛みはさほど大きくなく、違和感を覚える程度といわれています。

一方で、ICD(植え込み型除細動器)は致死性不整脈が出現したときに電気ショック治療が行われるものです。電気ショック治療が行われた際の体感は、人によってさまざまですが、衝撃を受けるような感覚に驚かれる方もいるかもしれません。

ICDによる電気ショック治療が作動した場合、一度のみの作動であれば翌日以降の外来へ受診。電気ショック治療が複数回作動している場合は、重篤な不整脈が持続している可能性があるため、すぐに救急要請し受診するようにしましょう。

ICDによる電気ショック治療の有無にかかわらず、状態の変化は外出時に起こる可能性もあります。万が一の事態に備え、病院名/担当医師名/植え込み医師名/お薬手帳などの情報が記載された、ペースメーカー・ICD手帳を持参するようにしましょう。

困ったことがあれば主治医に相談を

今回は、ICDとペースメーカーの機能や役割、日常生活上で気を付けるべきポイントについて解説してきました。

治療に関することや日常生活に関することなど、何か気になることがあったら担当医師へ相談するようにしましょう。

また、ICDやペースメーカー植え込み後の生活を送る仲間と出会えるコミュニティもあります。仲間同士だからこそできる情報交換や悩みごとの相談などをしてみるのも、安心して日常生活を送るためにおすすめな方法です。

ICDとペースメーカーは、心臓が正しく調律を保ち、すこやかな毎日を送るうえで非常に大切な治療です。ぜひ、治療に関する正しい知識を付け、安心してお付き合いしていきましょう。

※はとらくでは、完全無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご相談ください。

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看護師兼複業ライター。救命救急センター、集中治療室、心臓血管外科・循環器内科、訪問看護の経験をもとに、「医療を身近に感じる」記事を執筆しています。2歳男児の育児に奮闘中!