公開日 2024年5月2日 最終更新日 2024年5月2日
ペースメーカーを入れる必要があるけど、ペースメーカーを入れるか悩む人の中で、以下のような悩みを抱えている人はいませんか?
- ペースメーカーを入れた後の生活ではどんな制約があるの?
- ペースメーカーを入れない場合のリスクはあるの?
- ペースメーカーを入れない場合はどんなことに注意して生活したらいいの?
本記事では、ペースメーカーを入れた場合と入れない場合で、生活へどのような影響があるのか、生活する上での注意点について解説します。
本記事を読むと、ペースメーカーを入れた場合と入れない場合の生活への影響の違いを理解し、ペースメーカーの有無による生活についてイメージしやすくなります。
ぜひ最後まで読んで、ペースメーカーを入れるか入れないか、自分自身または家族が納得した上で適切な選択をし、安心した生活を送るための参考にしてください。
監修:谷 道人
沖縄県那覇市生まれ。先天性心疾患(部分型房室中隔欠損症)をもち、生後7ヶ月で心内修復術を受ける。自身の疾患を契機として循環器内科医を志す。医師となった後も、29歳で2度目の開心術(僧帽弁形成術)、30歳でカテーテルアブレーションを受ける。2018年琉球大学医学部卒業。同年、沖縄県立中部病院で初期臨床研修。2020年琉球大学第三内科(循環器・腎臓・神経内科学)入局。2022年4月より現職の沖縄県立宮古病院循環器内科に勤務。
【目次】
ペースメーカーとは?
ペースメーカーとは、徐脈性不整脈に対する治療法として埋め込み、心臓が規則正しく動くための医療機器です。電気刺激を発することで心筋を収縮させ、必要最低限な心拍数を確保します。
ペースメーカーの適応疾患
「不整脈非薬物治療ガイドライン2018」によると、ペースメーカーの適応疾患は以下のとおりとなっています。
- 房室ブロック
- 2枝および3枝ブロック
- 洞不全症候群
- 徐脈性心房細動(AF)
- 過敏性頸動脈洞症候群・反射性失神
- 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)
なお、上記の疾患と診断されても、症状の程度や重症度によってはペースメーカー植え込みの適応とならず、治療方法が異なる場合があります。
ペースメーカー植え込み術
ペースメーカー植え込み術では、前胸部にペースメーカーを植え込むことが一般的です。
左右どちらかの鎖骨下の皮膚下にペースメーカー本体が入るポケットを作り、リードは鎖骨下の静脈内を通して心臓内に挿入します。
一般的に手術時間は1〜2時間程度で、入院期間は1週間〜10日程度です。
ペースメーカーを入れた後の日常生活での注意点
「ペースメーカ、ICD、CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013年改訂版)」によると、ペースメーカーを入れた後の日常生活では以下の点に注意する必要があります。
- 運動
- 食事
- 入浴
- 電磁干渉
理由としては、ペースメーカーの機能が障害されると、ペースメーカーが正しく作動せず、異常をきたす可能性があるからです。
具体的には、ペースメーカーのデバイスの設定パラメータ動作異常により失神を起こす可能性があります。
ペースメーカーを入れた後の生活では、注意すべき点を理解した上で生活すると、安心した生活に繋がるでしょう。
ペースメーカー植え込み術については、こちらの記事「ペースメーカーを入れた後の日常生活での注意点とは?気をつけるべきことを解説」で詳しく解説しています。
ペースメーカーを入れない選択はできる?
ペースメーカーを入れるかどうか悩む人には以下の疑問があるでしょう。
- ペースメーカーを入れたほうがいい?
- ペースメーカーを入れない選択ができるのはどんなとき?
それぞれ解説します。
ペースメーカーを入れたほうがいい?
医師からペースメーカーを提案された人は、特別な理由がない限りペースメーカーを入れるようにしましょう。
医師がペースメーカーを勧めるときは、診察や検査結果などの情報、医学的知見から症状の程度や患者背景、ガイドラインなど、様々な観点から見たうえでから診断しています。
以上の理由から、医師にペースメーカーを入れることを勧められた場合は、ペースメーカーを入れることを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
ペースメーカーを入れない選択ができるのはどんなとき?
「不整脈非薬物治療ガイドライン2018」によると、ペースメーカーを入れない選択ができるのは、以下のような例があります。
- 自覚症状がない1度房室ブロック
- 自覚症状のない洞性徐脈
- 自覚症状のない徐脈性心房細動
- 薬剤の副作用による一時的な徐脈
- ペースメーカーを入れず、薬物治療で経過観察できる
しかし、ペースメーカーを入れない選択ができた場合でも、自覚症状の出現、違和感を感じる場合があるかもしれません。病状が悪化している可能性があるため、かかりつけ医に早めに相談しましょう。
以上の理由から、症状や病態によってはペースメーカーを入れず、薬物による治療や経過観察になる場合があります。
ペースメーカーを入れない選択をした場合の注意点
ペースメーカーを入れない選択をした場合、生活上での注意点は以下のとおりです。
- 注意すべき症状
- 日常生活
- 運動
それぞれ解説していきます。
注意すべき症状
ペースメーカーを入れない選択をした場合、注意すべき症状は以下の通りになります。
- 労作時の息切れ
- めまい
- 胸部不快感
- 失神
- 心不全など
「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」によると、徐脈性不整脈は心臓突然死全体の10〜20%を占めるとされています。そのため、以上の症状が出現する場合、徐脈性不整脈が悪化している可能性があるかもしれません。
したがって、ペースメーカーを入れていない場合、以上の症状に注意して生活する必要があります。もし症状が悪化した場合にはかかりつけ医を受診し、診察の結果によりペースメーカーを勧められた場合には検討しましょう。
日常生活
就労や運転などのときに、失神やめまいの症状には注意しましょう。
なぜかというと、活動時に失神やめまいの症状が生じ、一瞬でも意識を失ってしまうと、重大な事故につながる可能性があるからです。
具体的には、転倒による頭部外傷や入浴中に溺れてしまったり、交通事故などが起きる可能性があります。
したがって、極力心臓に負担がかからないよう生活し、症状が頻発・悪化していないかを把握して生活する必要があります。もし、生活していて症状が悪化しているときには、早めにかかりつけ医を受診しましょう。
運動
病状によっては、運動時に労作時の息切れが起きる可能性があります。
理由としては、徐脈が長期に渡ることで心機能が徐々に低下し、心不全の状態に徐々になってしまうからです。体を動かしていると、息切れの症状が出る可能性があります。
症状が継続して回復しない状態が続いてしまうと、最悪な場合死亡につながる可能性もあるので注意が必要です。
したがって、運動するときには息切れの症状が継続・悪化していないかを意識し、症状が継続・悪化している場合には、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
もし、ペースメーカーを植え込んだ後の就労に不安がある人は、こちらの記事「ペースメーカーを埋め込むと仕事にどんな制限があるか?注意すべき環境とは」で詳しく解説していますのでご覧ください。
困ったときはまずは主治医に相談しよう
ペースメーカーを入れない選択をした場合は、生活する上での注意点を理解しておくと、対処法や受診する目安が分かり、生活する上での安心につながるでしょう。
生活していく上で症状や病態に変化があり、「ペースメーカーを入れたい」「ペースメーカーを入れようかな」と思ったときは、かかりつけ医へ相談されることをおすすめします。
ペースメーカーを入れるか入れないかの選択は、それぞれの注意点を理解した上で選択し、納得した上で安心した生活へつなげましょう。