自分の病気を正しく自己開示することの大切さ

公開日 2024年5月6日 最終更新日 2024年5月6日

心臓病を持っていると、様々な制限があったり、健常者よりも疲れやすいなどの特徴があります。

心臓病当事者はそれらを抱えながら仕事をしなければいけませんが、内部障害である心臓病は外見からは判断することが難しいため、一見すると健康に見えてしまい、本人からの申告がなければ、見た目から現在どういう状況なのか他人が察知することは難しいです。

私も当初は自分の病気を他者に伝えることに戸惑いを感じていましたが、様々な経験や周囲からの助言を経て、相手に自分の情報を開示することの重要性を知っていきました。開示することで、自分や周囲が少しでも心地よく毎日を過ごすことができるようになるのだと気が付きました。

本記事では、私が自己開示は大切だと思ったきっかけや、どのように開示したのか、開示後の変化、更には開示しないデメリットなどもお伝えしたいと思います。

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執筆:aoi

単心室などの先天性心疾患を持ち。環境の変化や年齢を重ねていく中でも、病とうまく付き合いながら生活することを心がけています。好きなものは和食、音楽、読書。執筆記事一覧

【目次】

自己開示の大切さを理解した経緯・きっかけ

私が自己開示の大切さを知ったきっかけを紹介します。

就職活動などで身内・友人以外に病気を伝えなければならなくなった

まず始めに自己開示の重要性を知ったきっかけは就職活動です。この時は「自己開示の重要性を知った」というよりも、「自己開示しなければならなくなった」というのが正直なところです。

就職活動では初めて家族、友達以外の他人に一から病気を伝えなくてはいけません。今までは親が話してくれていたり、気心が知れた仲間内で生活していましたが、自分で病気をわかりやすく、具体的に他者に説明する場面に直面しました。

その場面を通して私は一般的に「心臓病」という言葉を聞いて人が抱くイメージはそれぞれで、自分の想像以上に細かく説明することが求められるのだと学びました。私の場合、階段を上ることができないと話した時、何階までなら上がれるのか、下りも難しいのか、ゆっくりなら上がれるのか、といったことを聞かれました。

そして具体的な例や症状も説明します。例えば、走ったり、運動するとすぐに息切れがして、動けなくなってしまうが、息が整うまで安静にしていれば治まるということや、重いものは持てないが○○kgまでなら持てるというように、できることやできないことははっきりと伝えます。

こうすることで、見た目ではわかりにくい病気の中身について具体的なイメージを相手に持ってもらいます。

就職後の体調不良

2つ目は就職後の体調不良です。

社会人になると学生時代とは違い、マイペースに活動することが難しくなりました。異なる生活サイクルに身を置くようになると、自分でも知らなかった症状に直面するようになりました。今までは出来ていた疲れたら休むというマイペースな生活が難しくなり、私は初めて大きく体調を崩しました。

しかし物心ついてからは特に大きな体調不良を経験したことがなかった私は、周囲に言うと迷惑になると感じて我慢をしてしまい、結果的に体調を悪化させてしまいました。

できると思っていたことができず、そして結果的に周囲に迷惑をかけてしまったことはショックでしたが、この経験を通じ「今までは大丈夫だった」といった過去の経験を過信せず、自分が今どういう体調なのかを素直に受けとめ、自分の体調判断の軸を作って無理をせず、体調の変化を感じた時は随時上司や周囲に伝えるようにしました。

上司、同僚からの言葉

3つ目は、上司や同僚からの言葉です。

病気の当事者としては、病気について聞いてもらっても大丈夫という心構えでいたのですが、自分の想いとは裏腹に相手は「聞いちゃ悪いかな」「傷つけてしまうのでは」と遠慮してしまうことがあると上司や同僚から聞きました。

私は「自分から病気のことを話し過ぎるとアピールしているみたいでよくないのでは」と思っていたので、聞かれない限り病気のことを話すことはしてきませんでした。

しかし「見た目で病気の具合がわからないから、辛い時などははっきりと教えてほしい」と言われたことをきっかけに、見た目で病気の度合いや詳細がわからないからこそ、自分が思っている以上に言葉で相手に伝えることが必要であり、それは自分だけでなく、相手のためにもなるのだと知りました。

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どのように周囲に伝えたか

開示すると言ってもどのようにすればいいのか、ということに迷うこともあると思います。続いては私がどのように周囲に伝えているのかを紹介します。

定期的な上司との面談で現在の体調を伝える

上司と定期的な面談を行い、現在の体調を伝えるようにしています。一般的な体調の話だけではなく、仕事量に伴う身体的、精神的負担などを伝えます。

仕事量が多くなり、残業が増えている時などは、どのようにスケジュールを組めばいいか、どう対応するかを話し合うことで、無理をして体調を崩すことを防ぐようにしています。また、定期通院後に主治医から働き方や体の状況について、職場に伝えておくべきことがあった場合も上司に伝えるようにしています。早め早めの意思疎通や報告が自分や周囲のためになると感じています。

また、体調があまり優れない時は無理をせずに休暇を取ったり、在宅勤務をする、早めに帰るなどの対応をすることで、体調不良が長期化することをなるべく避けるようにします。もちろん、症状や病気の度合い、個人差によって避けられないことはありますが、早めの休息などでなるべく良い状態が続くように心がけます。

開示したことでの変化

自己開示は私と周囲のどちらに対しても変化をもたらしてくれました。

私は冬に体調を崩しやすくなるため、その季節は在宅勤務などを多めにしたりすることを理解してもらったりしています。また、冬は体調を崩しやすいという体調のサイクルを周囲も把握してくれるようになったことで、精神的にも楽になれました。

また自分自身の変化として、周囲に開示して知ってもらうことで、自分を偽ることなく、自分の体調に正直になりやすくなりました。以前は体調が少し優れなくても、周りに迷惑をかけないようにと、無理をしたり、平気なふりをしていましたが、今は疲れがたまっているなと思った時は、仕事量の調節、在宅勤務にする、早めに帰宅するなど、無理をしない範囲で仕事をすることができるようになりました。

開示しないことの危険性

様々な経験を通して自己開示の大切さを実感した私ですが、自己開示しない場合のデメリットを考えてみました。

まずは、体調を無視して周囲にあわせなければいけなくなるということが挙げられます。冒頭に述べたように、本人が体力的に大変だと思っていても、外見から判断することが難しい内部障害は、本人が声を上げない限り周囲からは「大丈夫なんだな」と思われてしまうことがあります。

そのまま無理をしたり、我慢をしながら過ごしていると、周囲はできないこともできるんだと思ってしまいます。これは長期的に考えると、障害者自身に負担になることはもちろん、周囲とのコミュニケーション不足になってしまいます。

また、そういった無理を続けると結果的に急に体調を崩したり、働くことが困難になってしまう可能性も招いてしまいかねません。そういった結果になると、周囲の理解を得られなかったり、仕事に支障をきたしてしまう可能性があります。

自己開示することの価値

本稿では自己開示の大切さについて、筆者の経験も交えながら、その重要性を述べていきました。

社会人になると自分だけのペースで生活することは難しく、仕事や周囲の調整や理解が必要であり、そのためには自分の病状を隠すのではなく、開示することが内部障害者には求められるのだと学びました。話すことで周囲との相互理解が深まり、自分自身にとっても働きやすい環境になっていきます。

とはいえ、病気の程度や仕事環境は千差万別ですので、開示しなければと思いつめず、精神的に負担のない程度で徐々に自分のことを知ってもらうようになればと思います。

単心室などの先天性心疾患を持ち。環境の変化や年齢を重ねていく中でも、病とうまく付き合いながら生活することを心がけています。好きなものは和食、音楽、読書。